小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『エンド・クレジット』奥田哲也

1999年03月30日 | ミステリ感想
~あらすじ~
関係者が次々と事故死した呪われたホラー映画。
脚本家は呪いの存在を否定するため、ドキュメンタリーの後日談を企画、女探偵・南丈美鳩にかつてのスタッフ捜しを依頼するが、呪いが再び発動したかのように、次々と関係者が殺されていく。
しかも、死体には映画に登場するモンスターに見立てた細工が施され……。


~感想~
ハードボイルドというよりは軽妙なタッチの本格ミステリ。
氏特有のテンポの良さ、練り込まれた比喩はさすが。会話も楽しくミステリ以外の要素も読者を引きつける。
シリーズ化して欲しかったけどなあ。


99.3.30
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『五つの時計』鮎川哲也

1999年03月27日 | ミステリ感想
~収録作品~
鮎川哲也傑作選-1。
旧「宝石」誌掲載時に江戸川乱歩が筆を執ったルーブリック(作品紹介)、「薔薇荘殺人事件」問題篇に寄せられた花森安治の解答を附す。
解説・北村薫 有栖川有栖、北村薫、山口雅也による鼎談も収録。

五つの時計
白い密室
早春に死す
愛に朽ちなん
道化師の檻
薔薇荘殺人事件
二宮心中
悪魔はここに
不完全犯罪
急行出雲

日本推理作家協会賞 候補 ――五つの時計、白い密室


~感想~
『五つの時計』
有栖川有栖『三つの日付』があまりに稚拙に見える、元祖の威力。

『白い密室』
本格の王道を行くプロット。不可能状況を構築する恐ろしく単純なトリック。ミステリ史上最高峰の短編。

『早春に死す』
個人的に苦手な時刻表ものだが、逆転が秀逸。

『愛に朽ちなん』
うん、曲尺がわからん。

『道化師の檻』
『白い密室』に匹敵する最強短編ミステリ。

『薔薇荘殺人事件』
回答者が実に鼻持ちならないが、これまた傑作。パズラーとしての頂点。

『二宮心中』
時刻表や地形図なしで理解できるのだろうか。

『悪魔はここに』
あいも変わらずこの少ない分量に詰め込まれたアイデアの山。

『不完全犯罪』
なんでもトリックにしてみせる豪腕。

『急行出雲』
これも豪腕。“アリバイ探し”という趣向も面白い。

~総括~
日本ミステリ史上最高短編集。
ある程度ミステリを読み、ちょっと飽きを感じたらこれを読むべし。
ミステリの面白さ・すごさを再認識できます。黙って買え!


99.3.27
評価:★★★★★ 10
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ミステリ感想-『黄泉津比良坂、暗夜行路』藤木稟

1999年03月24日 | ミステリ感想
~あらすじ~
鳴ったらこの世の終わりと伝えられる「不鳴鐘」が、寂寥たる闇を震わせ、大音声で鳴り響く。
天主家に、十四年前の悪夢が甦る…。
『黄泉津比良坂、血祭りの館』続篇。


~感想~
で、後編。
二階堂の『人狼城の恐怖』と比較すると、後編・謎解きの段に及んでもまだ事件が起こりつづけ、煩雑な印象を受ける。展開するストーリーに追われて、謎解きが片手間に終わってしまうのも不満。
また、トリックが小粒に過ぎ、これだけの長大さを支えられるものではなかった。
ケレン味の濃い物語は好みなのだが、ミステリとしては……。


99.3.24
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『軽井沢マジック』二階堂黎人

1999年03月11日 | ミステリ感想
~あらすじ~
颯爽と(?)現れた貴公子(?)の名は水乃紗杜留。
常識人のあいだでは、奇人・変人扱いされる二十八歳、独身の美男子である。
旅行代理店課長代理として、軽井沢まで来た向かう途上、事故で列車が遅延。
友人夫婦が経営するペンションに泊ることに。
翌朝、軽井沢在住の小説家変死事件に巻き込まれ、サトルの出番となるが……。


~感想~
フェアで巧妙な伏線は、シリーズが変わっても健在。(あの犯人はちょっと……だが)
しかし肝心の(?)ユーモア味にそこはかとなくただよう「無理してる感」。
そこにさえ目をつぶり、トリックだけ見るなら間違いなく良作だが。


99.3.11
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『正月十一日、鏡殺し』歌野晶午

1999年03月11日 | ミステリ感想
~収録作品~
盗聴
逃亡者 大河内清秀
猫部屋の亡者
記憶の囚人
美神崩壊
プラットホームのカオス
正月十一日、鏡殺し


~感想~
普通の短編ではないクセモノぞろい。幻想・怪奇味を帯びつつも、本格臭のただよう良作ばかり。
虚実入りまじった幻想的本格『逃亡者』。前代未聞(?)のミステリ『記憶の囚人』。
まさにカオスまさに傑作『プラットホーム』。はんぱなホラーの100倍怖い『鏡殺し』。
珠玉の短編集。


99.3.11
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『死者は黄泉が得る』西澤保彦

1999年03月03日 | ミステリ感想
~あらすじ~
周囲から隔絶された、死人が甦る館に住む異形の女性たち。
その隣り街で起きる連続殺人事件。
殺人犯は生者か、それとも死者か?


~感想~
「生ける屍の死」に対するオマージュ――にはとても思えない、奇妙な作品。
ラストが綺麗で(私見)どうもこのラストのためだけに作られた設定な気さえしてくる。
ダブルミーニングが巧みだが、やや展開が読めるところも。


99.3.3
評価:★★★ 6
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