小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『死体を買う男』歌野晶午

1999年07月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
『白骨鬼』と題する江戸川乱歩の未発表小説が発見された。
奇行を重ねていた学生が異様な首吊り自殺を遂げる。だが、本当に自殺なのか。
真相を追い、乱歩と詩人・萩原朔太郎が捜査に乗り出す。
雑誌に連載され、好評を博す『白骨鬼』。しかし、そこには驚くべきからくりが……。


~感想~
断筆覚悟で臨んだという決死の作品。
氏の実力が過不足なく発揮され、日本ミステリは稀な才能を失うことを逃れた。
どんでん返しを連発し、王道を往くと見せて裏道をつく。
乱歩へのオマージュ、本格魂と、この一作をもって氏の才能は開花した。


99.7.27
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『百鬼夜行-陰』京極夏彦

1999年07月24日 | ミステリ感想
~収録作品~
小袖の手
文車妖妃
目目連
鬼一口
煙々羅
倩兮女
火間虫入道
襟立衣
毛倡妓
川赤子

吉川英治文学新人賞 候補


~感想~
非ミステリの妖怪小説。
各長編の裏に隠された、秘められたエピソードがずらり。
『小袖の手』と『目目連』が『絡新婦の理』より先に発表されていたとは驚き。


99.7.24
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『妖霧の舌』竹本健治

1999年07月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
連日の異常気象、多発する少女誘拐未遂事件…と、不穏な空気が漂う東京都世田谷区。
ある日、パソコン売場のモニターに「悪魔の警告」から始まる予告文めいた怪文書が現われた。
翌日、若き天才囲碁棋士・牧場智久の対局相手・桃井四段が失踪。さらに、十二歳の少女たちが次々と殺されていく。


~感想~
……なんだろうこれは。
白けるほど淡々とした展開。発想もひねりも不十分。論理性もさっぱり感じさせない手すさびのような出来。
実は古本屋で百円で買ったのだが、百円をここまでもったいないと思ったのは初めてである。


99.7.19
評価:問題外
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ミステリ感想-『地底獣国の殺人』芦辺拓

1999年07月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
1930年代。
創世記の伝説を探るためアララト山を目指した〈ノアの方舟探検隊〉の飛行船。
奇人学者に美人秘書、新聞記者ら一行を待ち受けていたのは、絶滅したはずの恐竜と謎の部族、そしてスパイに連続殺人だった。冒険の果てに彼らが見たものとは?


~感想~
突飛な設定をうまくミステリと絡めて見せた快作、いや怪作。
叙述の罠、裏をつく展開、楽しく軽妙な比喩も冴える逸品。


99.7.19
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『そして二人だけになった』森博嗣

1999年07月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
全長4000メートルの海峡大橋を支えるコンクリートの巨大な塊『アンカレイジ』。
内部に造られた窓ひとつない空間に集まった科学者・建築家・医師の6名。
プログラムの異常により完全な密室となったこの建物の中で、次々と起こる殺人。
最後に残ったのは、盲目の若き天才科学者とアシスタントの二人だった。
犯人は、私? 僕? それとも……?

本ミス10位


~感想~
シリーズを離れても一流のミステリ書きであることを証明した傑作。
全編に張りめぐらされた伏線。現実と幻想の融合。現・幻2つの解決。お見事!


99.7.13
評価:★★★★☆ 9
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ミステリ感想-『キッド・ピストルズの冒瀆』山口雅也

1999年07月12日 | ミステリ感想
~収録作品~
「むしゃむしゃ、ごくごく」殺人事件
カバは忘れない
曲がった犯罪
パンキー・レゲエ殺人
なぜ駒鳥を殺したのか?

本格ミステリ・ベスト100 24位、このミス8位


~感想~
『「むしゃむしゃ、ごくごく」殺人事件』
周到な伏線、軽妙な展開。正統派の快作。

『カバは忘れない』
倒錯したダイイングメッセージに拍手。

『曲がった犯罪』
巧緻にして精緻。張りめぐらされた伏線が、軽快なスラップスティックに乗せられ踊る。

『パンキー・レゲエ殺人(マーダー)』
トリックはちょっとベタぎみも、軽妙な語り口とあふれる奇想で読ませる。

『なぜ駒鳥を殺したのか?』
ミステリへの愛情がにじみ出る好エッセイ。


~総括~
序文まで改訂するプロ意識、というかサービス精神がさすが。
世界初のマザー・グースミステリは絶好のスタートを切った。


99.7.12
評価:★★★☆ 7
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