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ミステリ感想-『全員犯人、だけど被害者、しかも探偵』下村敦史

2024年09月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
不祥事により糾弾される中、社長室で死体で発見された男。
山奥の地下室に集められた妻や社員や記者ら7人に何者かが告げる。
「48時間後、犯人以外を毒ガスで殺す」
かくして全員が犯人・被害者・探偵となるデスゲームが始まった。


~感想~
良く出来ているし決してつまらなかったわけではないが、この設定とあらすじから期待する物とは全く別の何かが提供されてしまった。
作者の実力ならば期待する通りの物を出すことも余裕でできたはずだが、そこからだいぶ脱線した、しかも(個人的には)期待しない方向に逸れてしまったのが残念。
かなり前半から「そうだったらちょっと期待とは違うな」と不安にさせる要素を小出しにして行くので、早いうちに真相の一端にたどり着いてしまう読者もいるだろう。並外れた実力のある作者なので計算ずくだろうが、個人的にはそれは終盤まで隠しておいても良かったのではと思うが、まあ好みの問題である。
繰り返すが話自体は大変良く出来ているし、各人の主張する犯行や推理もそれぞれの立場に応じたもっともなもので、デスゲームを生き残るための戦術も楽しめる。
この設定に期待する要素には応えたうえで路線から逸脱するため、一定の満足は得られる。そこから先は個人の嗜好であり、この展開のほうが好きだとハマる読者も少なくないだろうが、でもこうした変化球ではなく真正面からのぶつかり合いが見たかったなあと思わずにはいられなかった。


24.9.8
評価:★★☆ 5
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