~あらすじ~
かつて神戸で女子中学生3人を立て続けに殺害し、うち1人の首を切断するという凄惨な少年犯罪があった。
振子占い師の雪御所圭子は、兄によるこの犯行への思いを胸に秘めて生きていた。
年を経て、神戸市須磨区で、あの児童連続殺傷事件が。
そして、またも須磨区で連続猟奇殺人が起きる……。
~感想~
最悪の結末しか待ち構えていないと肌で感じるような、張りつめた空気が全編に漂う。ゆえに読み進めるのはある意味苦痛ですらある。言いかえれば苦痛に感じられるほど、感情移入させるその手腕は実に見事。
細工としてはどれもこれも小粒なトリックで、これだけの大長編を支えるにはあまりにも脆弱。だがそれらすべてが寄り集まって作り上げた世界は、実に異様でいながら実にリアル。いままで読んだ本のなかでも最高峰の狂気を感じさせる作中作や、架空が現実を侵していく展開は、苦痛を乗り越えて読者を引きつける。
いまさらながら気づかされたのは、これまでは震災を、本作では少年Aの事件を主題にしたが、作者がそれらを通して描くのは、雪御所圭子という人物の一代記であるということ。この一作を単体で読むよりも(こんな大長編にしょっぱなに取りかかる人はまずいないだろうが)ぜひシリーズを通して順番に読んでほしい。
08.2.25
評価:★★★ 6
かつて神戸で女子中学生3人を立て続けに殺害し、うち1人の首を切断するという凄惨な少年犯罪があった。
振子占い師の雪御所圭子は、兄によるこの犯行への思いを胸に秘めて生きていた。
年を経て、神戸市須磨区で、あの児童連続殺傷事件が。
そして、またも須磨区で連続猟奇殺人が起きる……。
~感想~
最悪の結末しか待ち構えていないと肌で感じるような、張りつめた空気が全編に漂う。ゆえに読み進めるのはある意味苦痛ですらある。言いかえれば苦痛に感じられるほど、感情移入させるその手腕は実に見事。
細工としてはどれもこれも小粒なトリックで、これだけの大長編を支えるにはあまりにも脆弱。だがそれらすべてが寄り集まって作り上げた世界は、実に異様でいながら実にリアル。いままで読んだ本のなかでも最高峰の狂気を感じさせる作中作や、架空が現実を侵していく展開は、苦痛を乗り越えて読者を引きつける。
いまさらながら気づかされたのは、これまでは震災を、本作では少年Aの事件を主題にしたが、作者がそれらを通して描くのは、雪御所圭子という人物の一代記であるということ。この一作を単体で読むよりも(こんな大長編にしょっぱなに取りかかる人はまずいないだろうが)ぜひシリーズを通して順番に読んでほしい。
08.2.25
評価:★★★ 6