小金沢ライブラリー

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DVD感想―『ミッション・インポッシブル』

2009年04月27日 | 映画感想

~あらすじ~
スパイ組織IMFのイーサンは、仲間とともに東欧で作戦に当たるが……。


~感想~
ごめん、ちょっとなめてた。
トム・クルーズが嫌われてるのか、映画マニア(笑)がコケにしているのか、あまり評判のかんばしくないシリーズで敬遠していたのだが、これはスパイ映画の大傑作ではないだろうか。
いまさらこの映画を紹介するのもアレなのだが、冒頭の意外な展開には驚いたし、中盤の潜入作戦はうまいし、どんでん返しも決まり、ラストの大立ち回りも熱く、非の打ち所がない。
まさにスパイ映画のお手本といった感じで、万人が楽しめる傑作である。


評価:★★★★☆ 9
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映画(DVD)感想―『ワン・ミス・コール』

2009年04月23日 | 映画感想

~あらすじ~
日本の「着信アリ」をハリウッドでリメイク。
女子大生のベスは、友人の不可解な突然死を悲しんでいた。そんななか、別の友人の携帯電話にいつもと違う着信音が鳴る。そこには3日後の着信が記録され、彼女自身の悲鳴のような声が録音されていた。
そして3日後、彼女は列車に轢かれ……。


~感想~
「リング」「呪怨」と一定の成功を収めてきた和製ホラーリメイクの完全な失敗作。
なにがダメかというと「一切怖くない」のが致命的。基本的に原作に忠実なリメイクなのだが、アレンジ(?)として用いた、呪われた人間の周りに奇妙な人間が現れるという趣向が大失敗。
見えそで見えない、ふとしたはずみに見え隠れする怪異が和製ホラーの真骨頂だが、欧米でははっきりと見せるのが普通なのだろう。ただグロいだけの化け物にうろつかれても、ちっとも怖くはない。
駄作だ駄作だと思っていた原作「着信アリ」がある程度は面白かったと思えてしまうほどの出来である。
つーか観ていて心拍数が1つも上がらないホラーってある意味すごいよな。


評価:なし 0
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映画(DVD)感想―『28日後…』

2009年04月21日 | 映画感想

~あらすじ~
ある夜、即効性の怒りを発するウィルスに感染している実験用チンパンジーが、研究所に侵入した動物愛護活動家たちによって解放されてしまう。
その直後、活動家の一人がチンパンジーに噛まれて豹変、仲間に襲いかかり……。
28日後。
交通事故で昏睡状態に陥っていたジムは、ロンドン市内の病院で意識を取り戻す。ベッドから起き廊下をさまようジムだったが、院内にはまったく人の気配がなかった。人の影を求めて街へ飛び出したジムは、そこで驚くべき光景を目にする。


~感想~
こんなに酷い映画は久々に観た。
ゾンビ映画だが登場人物がのきなみゾンビよりバカなのだから始末が悪い。
移動中、多くの壊れた車が立ち往生しているトンネルに差しかかると、止められるのも聞かずに意気揚々と乗り込み、車の残骸を「イーヤッハー!」ノリノリで乗り越えた矢先、パンクしてしまいゾンビに殺到されるバカ親父を皮切りに、バカに次ぐバカが目白押し。
クソ映画なので遠慮なくネタバレすると、特に軍人が最強にバカである。
保護した女性2人に「我々には未来がない。だからヤラせろ」と飛躍した論理で迫り、抵抗した男を抹殺しようとするのは、まだ人間の醜い本性を描いていると言い訳ができるが、その女の片方が中学にも入ってない子供だったり、「このドレスで着飾れ」と要求するのはバカとしか言いようがない。
シチュエーションにこだわってんじゃねえよ。
対する女も負けてなくて、「なにも感じないようにしてあげる」と少女に飲ませた薬が明らかに麻薬系で、ラリッた少女は暴走するわ、軍人サイドも抹殺しようとした男に逃げられる無能ぶりだわ、逃げた一般人の男はいきなり軍人顔負けの戦闘技術に目覚めて大暴れするわの有様。
なんだこれ。


評価:☆ 1
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ミステリ感想-『OUT』桐野夏生

2009年04月15日 | ミステリ感想
~あらすじ~
深夜の弁当工場で働く主婦たちは、なぜパート仲間が殺した夫の死体をバラバラにして捨てたのか?


~感想~
簡単に言うと
↓超ネタバレ↓
動機のないままバラバラ殺人に加担した主婦が、動機のない殺人鬼に動機もなく調教され、動機のないまま自分探しの旅に出る。
という「……だから?」としか感想を言えない物語なのだが、主題となっているはずのそれを除いた部分は、一級の読み物になっているという不思議な小説である。
そういえば事件に関わるありとあらゆることが一つも決着しておらず、投げっぱなしもいいところなのだが、物語としてはきちんと「OUT」というタイトルに収斂して結末を迎えるので、納得がいってしまうのだ。
この雰囲気だけでゴリ押しして、雰囲気だけで腑に落ちさせる手腕はただごとではない。このミス1位・文春2位を獲得したのはなにかの間違いであろう、すこしもミステリじゃない純文学だが、普通に面白い小説である。


上巻 09.3.27
下巻 09.4.2
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『蒲生邸事件』宮部みゆき

2009年04月14日 | ミステリ感想
~あらすじ~
予備校受験のために上京した孝史は、二月二十六日未明、ホテル火災に巻き込まれた。
間一髪で、時間旅行の能力を持つ男に救助されたが、そこはなんと昭和十一年。雪降りしきる帝都・東京では、いままさに二二六事件が起きようとしていた……。

~感想~
SF要素を巧みに用いたトリッキーなミステリ……などでは断じてなく、二二六事件を背景に、タイムスリップというスパイスを利かせ、一人の青年の成長と、日本という国の時代の流れを描いた秀作である。
したがって事件自体に意外性や謎、トリックや伏線などはほとんどなく、見るべきはタイムスリップという要素をうまく活かした、未来からの来訪者の介入による歴史の変化と、その後日談にある。
むしろここだけが見所と言っても過言ではなく、SFと二二六事件を絡めたわりにいたって地味な、盛り上がりに欠ける物語を、一気に良作にまで持っていく力がある。
あまり数は読んでいないが、個人的にはタイムスリップを絡めたミステリとしては、乾くるみ「リピート」や浦賀和宏のアレ(タイムスリップが題材だと明かすとネタバレするので伏せる)にも肩を並べる傑作だろう。
昭和史好きよりも、SF好きにはぜひおすすめしたい。うちの親父も太鼓判を押してます。


09.3.29
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『秋期限定栗きんとん事件』米澤穂信

2009年04月11日 | ミステリ感想
~あらすじ~
あの日の放課後、手紙で呼び出されて以降、ぼくの幸せな高校生活は始まった。
学校中を二人でめぐった文化祭。夜風が寒かったクリスマス。お正月にはそろって初詣。ぼくに「小さな誤解でやきもち焼いて口げんか」みたいな日が来るなんて。
それなのに、小鳩君は機会があれば彼女そっちのけで謎解きを始めてしまい……。


~感想~
こ れ は 酷 い。
と言っても作品として酷いのではなく、シリーズキャラを押しのけ、新主人公のように上巻からメインを張るキャラへの扱いが、マジ容赦ねえ。
上巻では小山内さんも小鳩くんも後方に下がり、事態を見守っているのだが、下巻にいたって一変。超上から目線で新主人公(?)をこき下ろし、終章にいたっては完全シカトで影すら現させず、エンドクレジットが流れるあたりでは単なる脇役に追いやる始末。
そういえばあらすじも新主人公(?)は超スルーだし。
あれ、この流れはどこかで見覚えが……と思ったら「ガンダムSEED DESTINY」だこれ。
分量のわりにトリックも事件も小粒で、すこし冗長なきらいはあるが、小市民シリーズによる種死展開だけでも一読の価値はアリ。


上巻09.3.18
下巻09.3.20
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『三月は深き紅の淵を』恩田陸

2009年04月07日 | ミステリ感想
~あらすじ~
鮫島巧一は趣味が読書という理由で、社の会長の別宅に招待を受けた。彼を待ち受けていた好事家たちから聞かされたのは、その屋敷内にあるはずだが、十年以上探しても見つからない稀覯本『三月は深き紅の淵を』の話。
たった一人にたった一晩だけ貸すことが許された本をめぐる連作短編集。


~感想~
三章までは間違いなく傑作だったのが、終章で一気にひとりよがりな駄作に落下。
張った伏線を回収する気も、広げた風呂敷をたたむつもりもないのはもちろんのこと、冒頭をひたすら推敲するだけの、なんの意味があるのかわからないエッセイ(?)に、他の著作の体験版を収録という気ままさ。
雰囲気だけで引っ張る作家なのは承知しているが、ここまでフリーダムに振舞われるとドン引きである。

それにしてもこれがこのミス9位なのはいいとして、本ミス8位とはなにを血迷ったのだろうか。


09.3.13
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『症例A』多島斗志之

2009年04月04日 | ミステリ感想
~あらすじ~
精神科医の榊は17歳の少女・亜左美を患者として受け持つことになった。
亜左美は敏感に周囲の人間関係を読み取り、治療スタッフを振りまわす。榊は「境界例」との疑いを強め、厳しい姿勢で対処しようと決めた。
しかし、臨床心理士である広瀬は「解離性同一性障害(DID)」の可能性を指摘し、榊と対立する。


~感想~
はっきり言って大きな事件も謎もトリックもなく、精神病院と博物館の日常を描いているだけなのだが、それを熟練の筆さばきと抜群のストーリーテリングで一級の読み物に仕立て上げた傑作である。
物語中盤、ただ精神病の事例を淡々と述べているだけの場面がまったく退屈ではなく、むしろ引き込まれてしまうその手腕。一見なんのつながりもない二つの展開がつながったとき、特段意外性も驚くこともないが、物語に一本の芯を貫き、全体を引き締めてしまうのだからすごい。
サプライズもトリックもロジックもなしに、語りの上手さだけで傑作ミステリはものせるのだなあ。


09.3.10
評価:★★★★ 8
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映画(DVD)感想―『レッド・クリフ partⅠ』

2009年04月01日 | 映画感想

~あらすじ~
ジョン・ウー監督が、三国志の"赤壁の戦い"を全2部作で描く。
西暦208年。帝国を支配する曹操は、80万の大軍で劉備、孫権の征討に動く。劉備は撤退が遅れ、曹操軍に追いつかれてしまい全滅の危機に。
軍師の孔明は、劉備に孫権との同盟を進言、自ら孫権のもとへと向かう。しかし、孫権軍では降伏論が大勢を占めており、孔明は若き皇帝孫権の説得に苦心する。
孫権が兄と慕う司令官・周瑜と面会する孔明だったが…。


~感想~
三国志ファンから見れば、雰囲気たっぷりの関羽・張飛・趙雲が真・三国無双な暴れっぷりを見せてくれるだけで満足なのだが、三国志を知らない人が見て楽しめるのかどうか。
「チーム・バチスタの栄光」でも思ったが(日本の医療エンタメ映画を引き合いに出すのもどうかと思うが)どうして原作にないシーンに尺を割いてしまうのかわからない。独自の展開を入れるのは当然だが、それが冗長なものばかりで、明らかにテンポを落としているのだ。
また、業績が史実とかけ離れているからと言って甘寧を甘興というオリジナル武将にしたが、せっかく別人にしたわりに水賊上がりの豪傑という甘寧とまるっきり同じ設定で、オリジナル要素が皆無(しかも甘寧の字は興覇だ)なのもいただけない。
たぶん史実と異なり戦死するから名前を変えたのだろうが、創作なのだから別に赤壁で甘寧が死のうがかまわないと思うのだが。吉川栄治なんか張郃ほどの大物を間違って3回も殺してるんだし。
タイトルは大嘘で赤壁の戦い前に物語は終わるが、配役でもめたわりにハマリ役の金城孔明(白いハトにエサをやり、濡れたハトを白羽扇で乾かす!)や、壮大なスケールの映像など内容よりも雰囲気を楽しめばいいのではなかろうか。


評価:★★☆ 5
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