小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『飛鳥のガラスの靴』島田荘司

2003年04月29日 | ミステリ感想
~あらすじ~
映画俳優の自宅に、差出人不明の郵便小包が配達された。
その中には塩漬けにされた彼の手首が。
十ヶ月経っても行方不明のまま、事件は迷宮入りの様相を呈した。
吉敷は、この管轄違いの事件に興味を持ち、
反目する主任に「一週間で解決できないなら辞表を書け」と迫られながら、謎を追う。


~感想~
長さに見合った重厚な内容。序盤の魅力的な謎の提示、吉敷の苦心行、展開のうまさがとにかく光る。
これぞ島田文学・吉敷物。満腹。


03.4.29
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『殺人ダイヤルを捜せ』島田荘司

2003年04月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
商社に勤める綾子には秘密の趣味がある。
今夜も期待に震えてダイヤルを回した彼女の鼓膜に響く悲痛な叫び。
張りめぐらされた意外な罠とは?


~感想~
長編の分、切れ味を欠いた都市ミステリといったところ。トリックは解ってみれば「な~んだ」という仕掛け。
そつなくまとまっているし、これ以上縮められはしないのだろうが……。ううむ。


03.4.27
評価:★★ 4
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ミステリ感想-『R.P.G』宮部みゆき

2003年04月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
殺された男は、現実の世界とは別に、インターネット上にも家族を持っていた。
そこでの彼の役割は、娘に理解を示す優しい父親だった。
取り調べ室に呼ばれたのは擬似家族の母と息子・娘の3名。
「優しいお父さん」を殺したのは誰なのか?

このミス19位、文春8位


~感想~
(ネタバレ→)解決していない。あやふやな決着に納得いかず。無駄のない構成だけに、末尾の詩情がとってつけたみたく、浮いたような。なぜアンフェアにしたのかも解らない。フェアにするのはおそらく簡単なのに、どうしてわざわざ……。書き下ろし小説によくある、全体として練り込み不足。


03.4.26
評価:★★ 4
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ミステリ感想-『それでも君が』高里椎奈

2003年04月22日 | ミステリ感想
~あらすじ~
生まれ落ちたばかりのキンカンと、彼を見つけた少女リラ。
料理の上手なヴィオラと、人懐なつこいピアニカに、双子の兄弟シンとバル。
家(ホーム)に住む6人を含めても、世界中で31人の“小さくて大きな密室”。
1つの悲劇が、このドルチェ・ヴィスタ(甘い景色)に潜む真実を暴き、世界の輪郭を変える。


~感想~
なんじゃこりゃあ。
僕の力不足だろうが理解不能のトリック(ネタバレ→)ようするに質量保存の法則?
に呆然とするなか訪れる、まったく予想だにしない結末。驚きはするが納得はできない。
あとキンカンはないな。


03.4.22
評価:☆ 1
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ミステリ感想-『ファンタズム』西澤保彦

2003年04月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
連続女性殺人事件。遺体の口には必ずある紙片が、現場には犯人の指紋がべったりと遺される。
殺したのは「ファントム」。まるで実体のない幻のような犯人の正体とは?


~感想~
一読して――噂どおりだ。
読み返して――意外とミステリだ。
謎が謎を呼ぶ謎だらけというか、解決を放棄しただけの手抜き。
ホラーとは明瞭な解決を拒むものだと誰が決めた。とにかく不服。
読むか読むまいか迷い、いろいろと調べた方。たぶん、あなたの予想どおりです。


03.4.19
評価:問題外
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ミステリ感想-『眠りの牢獄』浦賀和宏

2003年04月18日 | ミステリ感想
~あらすじ~
階段から落ちて昏睡状態になってしまった女性。
彼女に関わり深い三人が核シェルターに閉じ込められた。
脱出する条件は彼女を突き落としたのは誰なのか告白することだった。
そのころ外界では完全犯罪の計画がメール交換で進行していて……。


~感想~
初めてシリーズを離れてものされたのは……ミステリらしいミステリ、小説らしい小説。そんな印象。
手際の良さは認めるが、物足りないと思うのは贅沢か。トリックがすぐに解ってしまったのがネック。



03.4.18
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『学園祭の悪魔』浦賀和宏

2003年04月18日 | ミステリ感想
~あらすじ~
あの日から、世界は壊れ始めていたのかもしれない。
首なし死体、連続猟奇殺犬事件。私の周りに「死」が堆積していく。
学園祭で出会った『笑わない男』はすべてを解決してくれるのだろうか?
日常の意味が消失していく……。


~感想~
八割ほど読んでもまだなにも起きない。残り30分でなにが起きたかと言えば……。
たしかに(ネタバレ→)『アンブレイカブル』だこりゃw ぜんぜん違う話&細工だけど、読了後の印象はまさしく『アンブレイカブル』。
安直シリーズ(勝手に命名)だし、それなりに楽しめた。しっかし筆力ついたなあ……。


03.4.18
評価:★★ 4
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ミステリ感想-『記号を喰う魔女』浦賀和宏

2003年04月17日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「僕が死んだ時、いあわせた人間たちを僕が生まれたあの島に向かわせてください」
そう遺言し自殺した中学生。孤島を訪れた5人の同級生を襲う殺戮劇。
死体には、全て「逆さV」の記号が遺されていた。犯人は、そして生き残るのは誰?


~感想~
ミステリと言うよりも浦賀的(いちおう伏せ字→)カニバリズム考論。
仕掛けらしい仕掛けもなく、物足りない。シリーズ外伝、序章として見るべきか。


03.4.17
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『首断ち六地蔵』霞流一

2003年04月15日 | ミステリ感想
~あらすじ~
悪質なカルト集団を取り締まる特殊法人・寺社捜査局に勤める魚間岳士は、
六地蔵の首が持ち去られた事件を追っていた。
ところが、首が発見されるたび、そこには奇怪な殺人事件がついてきて……。


~感想~
連作短編集。
バカだ。とにかくバカだ。
表紙に書かれた「ど本格」という言葉に騙されてはいけない。
これは“バカミスの大家”として名高い氏の面目躍如。
次々と起こるバカな事件がバカな解決を迎え、最後には「これぞ連作」というべきどんでん返しが起こってくれる。
造りは粗いが勢いのある、無駄にありすぎるケッサク(非・傑作)短編集。


03.4.15
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『時鐘館の殺人』今邑彩

2003年04月12日 | ミステリ感想
~収録作品~
生ける屍の殺人
黒白の反転
隣の殺人
あの子はだあれ
恋人よ
時鐘館の殺人


~感想~
『生ける屍の殺人』
すばらしく魅力的な謎をそつなく、しかし小さくまとめたなぁと思った瞬間に足払い。
あれよあれよという間に手玉に取られ、二転三転して予想だにしない着地。これは傑作。

『黒白の反転』
題名そのままに反転する真相→決着→真相→決着。
黒と白の鮮やかな逆転。裏に秘められた思惑。これまた傑作

『隣の殺人』
鮮やか、とまではいかないが印象深い逆転。あとすこし煮詰められていれば化けただろうに。

『あの子はだあれ』
これもいい。特異な論理から導かれるあまりに皮肉な結末。

『恋人よ』
結末が予想の範疇を超えなかった。もっと極彩色のどぎつい真相を期待してしまったが。

『時鐘館の殺人』
なるほどなるほど。仕掛けそのものは些細だが、見せ方がとにかく巧み。


~総括~
長編では釈然としないキレの悪さを見せる氏が、短編となると実に切れる切れる。
氏の代表作というだけではなく、ミステリ史に輝く傑作ぞろい。


03.4.12
評価:★★★★ 8
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