~収録作品とあらすじ~
倉持和哉の二つのアリバイ
洋食屋を営む倉持はガールズバーへの業務転換を目論み、叔父でオーナーの安西の殺害を計画。
アリバイ工作のため探偵の鵜飼杜夫を呼び寄せるが、酒にだらしない鵜飼は泥酔してしまう。
ゆるキャラはなぜ殺される
烏賊川市で行われたゆるキャラグランプリ。
鵜飼と事務所オーナーの二宮朱美は旧知のゆるキャラの応援にかこつけ舞台裏を見学するが、そこで着ぐるみという密室に阻まれた殺人事件が発生する。
博士とロボットの不在証明
今さら二足歩行ロボットを完成させた秋葉原博士は、多額の借金を帳消しにするため、ロボットにそそのかされ貸主の殺害を画策。
ロボットを貸主に変装させアリバイ工作を試みるが……。
とある密室の始まりと終わり
老婦人に依頼され嫁の浮気調査をした鵜飼と戸村流平は、息子に多額の保険金が掛けられていることをつかむ。
急ぎ息子宅に向かうが時すでに遅く事件は起こり、しかも現場は密室だった。
被害者とよく似た男
北山雅人は腹違いの兄の殺害計画への共犯を、兄を恨む田代直美に持ちかけられる。
瓜二つの兄に変装し直美のアリバイを作るが、砂川警部らはすぐにそれを看破。しかし直美には秘策があった。
2015年日本推理作家協会賞・短編候補(ゆるキャラはなぜ殺される)
~感想~
長編ではユーモアミステリの皮をかぶった王道本格ミステリを放ってきた作者だが、短編ではユーモア要素を前面に押し出し、この形式でしかなしえないトリックやプロットを考案してきた。
冒頭の「倉持和哉の二つのアリバイ」は、トリックと呼ぶのもおこがましいゆるすぎるトリックが仕掛けられるが、それを倒叙形式で描き、プロットとトリックの双方に張られたユーモアミステリならではの伏線を回収することによって、奇抜なアイデアに昇華させることに成功。
続く日本推理作家協会賞の候補に挙げられた「ゆるキャラはなぜ殺される」はミステリ史上屈指かも知れない鮮やか過ぎる犯人退場が笑いを誘う。
「博士とロボットの不在証明」も倒叙形式でやはりごく単純なトリックながらその露見する顛末が面白い。あとお好み焼きは笑った。
「とある密室の始まりと終わり」と「被害者とよく似た男」はトリックが伏せられているもののやはり非常にわかりやすいが、それぞれどこかに工夫が凝らされている。
いずれも超初歩的なトリックやプロットを、見せ方一つ変えることでナシからアリに変換することに成功しており、大袈裟な言い方をすればミステリ創作にあたっての手法や、ミステリの裾野そのものを広げた作品集と言えるかもしれない。
「謎解きはディナーのあとで」のヒット以来、ひねくれ者としては距離を置いてきたが、こんな愉快な短編を書いてきてくれているのなら、見逃してきた他の烏賊川市シリーズの短編集も読まなくてはなるまい。
17.11.26
評価:★★★ 6
倉持和哉の二つのアリバイ
洋食屋を営む倉持はガールズバーへの業務転換を目論み、叔父でオーナーの安西の殺害を計画。
アリバイ工作のため探偵の鵜飼杜夫を呼び寄せるが、酒にだらしない鵜飼は泥酔してしまう。
ゆるキャラはなぜ殺される
烏賊川市で行われたゆるキャラグランプリ。
鵜飼と事務所オーナーの二宮朱美は旧知のゆるキャラの応援にかこつけ舞台裏を見学するが、そこで着ぐるみという密室に阻まれた殺人事件が発生する。
博士とロボットの不在証明
今さら二足歩行ロボットを完成させた秋葉原博士は、多額の借金を帳消しにするため、ロボットにそそのかされ貸主の殺害を画策。
ロボットを貸主に変装させアリバイ工作を試みるが……。
とある密室の始まりと終わり
老婦人に依頼され嫁の浮気調査をした鵜飼と戸村流平は、息子に多額の保険金が掛けられていることをつかむ。
急ぎ息子宅に向かうが時すでに遅く事件は起こり、しかも現場は密室だった。
被害者とよく似た男
北山雅人は腹違いの兄の殺害計画への共犯を、兄を恨む田代直美に持ちかけられる。
瓜二つの兄に変装し直美のアリバイを作るが、砂川警部らはすぐにそれを看破。しかし直美には秘策があった。
2015年日本推理作家協会賞・短編候補(ゆるキャラはなぜ殺される)
~感想~
長編ではユーモアミステリの皮をかぶった王道本格ミステリを放ってきた作者だが、短編ではユーモア要素を前面に押し出し、この形式でしかなしえないトリックやプロットを考案してきた。
冒頭の「倉持和哉の二つのアリバイ」は、トリックと呼ぶのもおこがましいゆるすぎるトリックが仕掛けられるが、それを倒叙形式で描き、プロットとトリックの双方に張られたユーモアミステリならではの伏線を回収することによって、奇抜なアイデアに昇華させることに成功。
続く日本推理作家協会賞の候補に挙げられた「ゆるキャラはなぜ殺される」はミステリ史上屈指かも知れない鮮やか過ぎる犯人退場が笑いを誘う。
「博士とロボットの不在証明」も倒叙形式でやはりごく単純なトリックながらその露見する顛末が面白い。あとお好み焼きは笑った。
「とある密室の始まりと終わり」と「被害者とよく似た男」はトリックが伏せられているもののやはり非常にわかりやすいが、それぞれどこかに工夫が凝らされている。
いずれも超初歩的なトリックやプロットを、見せ方一つ変えることでナシからアリに変換することに成功しており、大袈裟な言い方をすればミステリ創作にあたっての手法や、ミステリの裾野そのものを広げた作品集と言えるかもしれない。
「謎解きはディナーのあとで」のヒット以来、ひねくれ者としては距離を置いてきたが、こんな愉快な短編を書いてきてくれているのなら、見逃してきた他の烏賊川市シリーズの短編集も読まなくてはなるまい。
17.11.26
評価:★★★ 6