~あらすじ~
船頭の勘違いで孤島に送られた火村英夫と有栖川有栖。
そこには孤高の幻想作家を囲み、裏のありそうな正体不明の人々が。
なごやかに流れていた滞在生活は、IT長者の乱入と撲殺事件で、歪んだ真相へと迷走していく。
はたして彼らの目的は? 正体は?
~感想~
火村シリーズ初の孤島物は、孤島物の定義を大きく外れた、言うならばダークファンタジー。
孤島ミステリに付き物のあれやこれやは一切なく、奇妙で穏やかな孤島生活を淡々と描く前半は退屈とも取れる。
いざ事件が起こってみても、ケレン味は薄く、解かれるべき魅力的な謎は見当たらない。
主題は「孤島に集まった人々の謎めいた目的」であり、殺人事件は味つけ程度。謎は謎、事件は事件で別個に存在し、謎と事件が密接に絡まなかったのが大きな不満である。
また肝心な謎も、解かれるのは終盤で、そこまでは背景に留まり、物語に大きな影を落としつづけているものの、あくまでも特異な設定として存在するだけになってしまった感が強い。
これだけの奇抜な設定なのだから、欲を言えば、そこから始まる物語が、そこから紡がれる謎が見たかった。
孤島ミステリながら、流れる雰囲気はいわゆる村ミステリ、あるいは邑ミステリ。しかし閉鎖された空間で行われる異様な風習――は匂いと気配だけに終わった。
謎も事件も、物語を終始いろどる、空を舞う鴉たちと同程度の存在感に過ぎなかったのかも知れない。
06.6.24
評価:★★ 4
船頭の勘違いで孤島に送られた火村英夫と有栖川有栖。
そこには孤高の幻想作家を囲み、裏のありそうな正体不明の人々が。
なごやかに流れていた滞在生活は、IT長者の乱入と撲殺事件で、歪んだ真相へと迷走していく。
はたして彼らの目的は? 正体は?
~感想~
火村シリーズ初の孤島物は、孤島物の定義を大きく外れた、言うならばダークファンタジー。
孤島ミステリに付き物のあれやこれやは一切なく、奇妙で穏やかな孤島生活を淡々と描く前半は退屈とも取れる。
いざ事件が起こってみても、ケレン味は薄く、解かれるべき魅力的な謎は見当たらない。
主題は「孤島に集まった人々の謎めいた目的」であり、殺人事件は味つけ程度。謎は謎、事件は事件で別個に存在し、謎と事件が密接に絡まなかったのが大きな不満である。
また肝心な謎も、解かれるのは終盤で、そこまでは背景に留まり、物語に大きな影を落としつづけているものの、あくまでも特異な設定として存在するだけになってしまった感が強い。
これだけの奇抜な設定なのだから、欲を言えば、そこから始まる物語が、そこから紡がれる謎が見たかった。
孤島ミステリながら、流れる雰囲気はいわゆる村ミステリ、あるいは邑ミステリ。しかし閉鎖された空間で行われる異様な風習――は匂いと気配だけに終わった。
謎も事件も、物語を終始いろどる、空を舞う鴉たちと同程度の存在感に過ぎなかったのかも知れない。
06.6.24
評価:★★ 4