小金沢ライブラリー

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映画感想―『タキシード』

2006年01月27日 | 映画感想

~あらすじ~
タクシー運転手のジミーは謎の大富豪デヴリンに雇われる。
ところが謎めいた彼は爆弾で重傷を負ってしまう。
原因を調べるうちに「決して触れてはならない」と戒められていたタキシードに袖を通したジミーは、ひょんなことから世界的陰謀に巻き込まれ……。


~感想~
ご存じジャッキー・チェンの主演映画。といっても今作の主役はあくまでも「タキシード」。
珍しくワイヤーアクションを多用し、ひと味違ったジャッキー映画になっている。
ところどころで特撮は使っても、体を張っているのはあいかわらず。実写と特撮がほどよく溶け合い、飽きさせない軽妙な娯楽映画になった。
それにしても、科学の粋をこらしたハイテク兵器(タキシード)の性能が、チェンの身体能力に追いついただけのような気もするがどうだろう。


評価:★★★☆ 7
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映画感想―『ヴィレッジ』

2006年01月25日 | 映画感想

~あらすじ~
深い森に囲まれたその村では、人々が一つの家族のように暮らしていた。
しかし地上の楽園さながらのその村には、決して破ってはならない掟が三つ。
森に入ってはならない、赤い色を封印せよ、警告の鐘に注意せよ。
村人は森に棲む何者かを恐れ慎ましく生活していた。
そんなある日、ひとりの若者が、薬を手に入れるために、禁断の森を抜ける許可を申し出る……。


~感想~
『シックスセンス』『アンブレイカブル』『サイン』とトリック映画を連発するシャマラン監督の新作。
今回のネタ自体は使い古されたおなじみのもの。だが見せ方が巧い。
トリックとラブストーリーをからめ、最後まで流れるような展開。
明確なオチを付けず、余韻の残る結末にしたのも、これは正解。
トリック映画としては物足りないが、シャマラン映画としては十分な出来にしあがった。


評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『QED ~Ventus~鎌倉の闇』高田崇史

2006年01月21日 | ミステリ感想
~あらすじ~
鎌倉をそぞろ歩く奈々、沙織の棚旗姉妹に、桑原崇が説く鎌倉の真実。
源三代にまつわる謎の答えが、闇の中に白く浮かび立つ。
殺人事件もちょっとだけあるよ!


~感想~
「Ventus」シリーズは、ミステリらしさをいさぎよく削ぎ落とし、紀行文さながらの作風にしてしまった。
殺人事件は刺身のツマ程度の飾りに過ぎず、主眼はあくまでも「歴史の闇に埋もれた鎌倉の真実」。
鎌倉時代に興味があるか否かが、この作品を楽しめるか否かの分かれ目となるだろう。
あっと驚く歴史の新事実はないが、またひと味違った視点で鎌倉時代を眺められるはず。
『新・平家物語』吉川英治著 をまた読みたくなった。


06.1.21
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『恋路吟行』泡坂妻夫

2006年01月20日 | ミステリ感想
~収録作品~
黒の通信
仮面の恋
怪しい乗客簿
火遊び
恋路吟行
藤棚
勿忘草
るいの恋人
雪帽子
子持菱


~感想~
「恋」を主題にした短編集。
いまさら言うまでもない、流れるような文体と情感あふれる味わい。
ただ読んでいるだけで幸せになれる作品ばかり。それがたとえ悲劇で終わろうとも、皮肉で閉じられようとも、その作品世界に浸れることが、とにかく至福。
僕にとって氏は、そんな稀有の作家である。
一編挙げるなら『黒の通信』が印象深かった。


06.1.19
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『パズル自由自在』高田崇史

2006年01月17日 | ミステリ感想
~収録作品~
桜三月三本道
迷路な二人
徒競走協奏曲
似ているポニーテイル
ゲーム・イン・ゲーム
直前必勝チャート式誘拐


~感想~
以前からその気配はあったのだが、「パズルの合間に小事件が起こるキャラ萌えライトノベル」として完成した。
事件もトリックも謎解きも「ミステリ」と呼ぶほどの厳めしさはなく、ぴいくんや千波くん、慎之介の会話を楽しむのが主眼になっている。
それが退屈かといえば、決してそんなことはなく、パズルで頭をひねり、確立されたキャラたちのやりとりにニヤリとし、飽きさせない。
「ミステリ」を読んでいる気には全くなれないが、気軽に楽しく読める一冊には仕上がった。


06.1.17
評価:★★★ 6
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映画感想―『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』

2006年01月14日 | 映画感想

~あらすじ~
ホグワーツ魔法学校の新学期。街は脱獄囚シリウス・ブラックの話題で持ちきりだった。
噂によると、ブラックはハリーの両親をヴォルデモードに引き渡し、死に追いやった張本人。
今度はハリーの行方を追っているらしい。
学校の周囲にはブラックへの備えとして危険なディメンターがうろつき回り、そしてついにハリーに魔の手が……。


~感想~
「しばらく見ない間にすっかり大きくなっちゃって~」と親戚のおばさん気分で見られるシリーズ第三弾。
この作品から監督が替わり、ずいぶんと強引な筋だと思っていたら、意外な仕掛けが用意されていた。
ストーリーに絡まない、細かな魔法世界の描き方があいかわらずうまい。
大人も子供も楽しめるとは、まさにこのシリーズのためにある言葉。
前作・前々作も観ていないと、話の流れは解らないが、気軽に楽しめる娯楽作品です。
食わず嫌いはイクナイ!(・А・)


評価:★★★★ 8
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映画感想―『アイデンティティー』

2006年01月13日 | 映画感想

~あらすじ~
大雨でモーテルに閉じこめられた、いわくありげな11人。
やがて一人、また一人と殺されていき、事態は不可能犯罪の様相を表す。
そして11人に意外な共通点が見つかり……。


~感想~
正統派のミステリ映画には確実に裏切られてきたが、これは初の当たり。
文章化すればメフィスト賞を獲りそうな「新本格」テイストあふれる、良質のミステリに仕上がっている。
映画ならではの映像を駆使した伏線や、どんでん返しの連発と、90分間を一息に見せてくれた。
重点が置かれたのはトリックよりもプロット。しかし素晴らしいプロットは時として「なるほどそういう仕掛けか!」とトリックにも劣らない爽快感をもたらしてくれる。
地味ながらも鋭く切れる一作。ミステリ好きがミステリ好きにオススメします。


評価:★★★★☆ 9
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ミステリ感想-『鬼子母像』泡坂妻夫

2006年01月12日 | ミステリ感想
~収録作品~
鬼子母像
弟の首
鳴き砂
ライオン
他化自在天
指輪の首飾り
竹夫人
三郎菱
ジャガイモとストロー
色縫い
幕を下ろして
連理


~感想~
テーマはあえて上げるならば「時」。泡坂氏特有のねじれた論理で、時の流れを色濃く描いている。
一歩間違えば――というか冷静に考えればギャグとしか思えないような筋の話に、これだけの情緒をあふれさせてしまうのだから恐れ入る。
力のない作家が書けば、単なる出来の悪い童話くずれの、脱力一歩手前のオチの数々。
日常を舞台としながらも、奇妙にねじくれた作品ばかり。
短い話ばかりだが、長く印象に残ることだろう。


06.1.11
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『女王様と私』歌野晶午

2006年01月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
冴えないオタク真藤数馬は無職で独身。
でも「引きこもり」じゃない。毎日コンビニに行くし、週1でビデオ屋、月1で秋葉原にも出かける。
今日もかわいい妹と楽しいデートの予定だった。あの「女王様」に出逢うまでは……。


~感想~
中盤のどんでん返しには「これは『世界の終わり、あるいは始まり』のリベンジだ!」と快哉を上げたものの、どんどん尻すぼみ。
K点を大きく越える大ジャンプと見せて、ありがちな地点に着地してしまった。
ここから盛り上がるぞと見せかけて、一気にしぼむしぼむ。
そこら中で言われているが、このトリックはミステリマニアならば容易に気づく。
傑作になるか否かはそれ以降の展開にかかっていたのだが、どうにも想定の範囲内。
動機も真相も結末にも、衝撃を受けるまでには至らず。
作者としては、このトリック一本に勝負を賭けたわけではなく、全体の丁寧な構成が肝なのだろうが……。
『葉桜の季節に君を想うということ』を放ってしまった氏は、そう簡単には及第点をもらえない。
それが不幸なのか、それとも作家冥利に尽きるのか。読者としてはただ、次なる傑作を切望するのみ。
どうでもいいが、多くの読者が指摘する妹の口調に、別段の違和感を覚えなかった僕は、もうネット中毒だろうか。

06.01.07
評価:★★☆ 5
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映画感想-『ヘルボーイ』

2006年01月08日 | 映画感想

~あらすじ~
第二次大戦末期。敗色濃厚のナチスドイツは、怪僧ラスプーチンの力で魔界の扉を開こうとする。
だが米軍の奇襲で企ては失敗。ラスプーチンは魔界に消え、後には悪魔の赤ん坊が残された。
米軍に同行した学者に“ヘルボーイ”と名づけられた赤ん坊は、やがてエージェントとして育ち、魔界の者と戦うのだった。


~感想~
キャラは魅力的。CGも及第点。なのに凡作になっているのは脚本のせいだろう。
主人公の力が、パワータイプにしては中途半端なのは原作のせいとしても、アクションシーンの貧弱さや、悪魔と人間の狭間で苦悩に揺れる(べき)ヘルボーイの心に、葛藤がなさすぎるのは脚本を責めるべき。
敵モンスターも数が多いだけで終始同じキャラが出ずっぱり。しかも噛みつくくらいしか能がないから、アクションを広げられない。
短所を補強して続編を出せれば、そこそこ面白くなりそうなのだが……。
ところでスポーンといいヘルボーイといい、並はずれたパワーがあるのに、わざわざ銃を使うあたりお国柄が見えたり。


評価:★★ 4
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