小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『悪魔と詐欺師』高里椎奈

2005年08月31日 | ミステリ感想
~感想~
連作短編集ぎみ長編。
どうしても好きになれない。

まず、単純にストーリーが解りづらい。
僕の読解力が低いせいもあるだろうが、この作者は読者に通じるように書いているとは思えないのだ。
例によって独特の読みづらく解りづらい文体で、好きでもないキャラの好きでもない物語なものだから、いっそう文意をつかみがたい。

注文を付ければ、まず妖怪や悪魔が「なにをどこまでできて、なにがどこまではできないのか」制約を設けてくれないと辛い。
物語としてどこまで「アリ」でどこまで「ナシ」なのか。
現状ではなんでも「アリ」になっていて、「これはミステリでござい」と澄ましているのが気に障ってしかたない。

他にも好きになれない理由を列挙してみると
1:秋がムカツク
ぜんぜん魅力的に映りません。それが性差によるものかは不明ですが、こんなにムカツク主人公はかつてないです。

2:心理描写がウザイ
清涼院流水を思わせる、薄っぺらく冗長な「そのとき僕はこう思った。しかし彼の言動にはこんな深い意味があったのである」という書きぶりはどうにかならないのか。

3:キャラ賛美もウザイ
全編にわたり「秋は素晴らしい」「座木はこんなにすごい人だ」という賛美があふれかえっている。
しかし僕は彼らにひとかけらの魅力も感じないので、好きでもない人の褒め言葉をうだうだ書きつらねられても辛いだけである。
たとえば松本人志中毒患者を見ているような。


ううーむ。激しく疑問なのだが、このシリーズを今後も読みつづけていって僕に得はあるのだろうか?
いつかは化ける作家だと思うので、できれば早めに化けてほしいのだが。


評価:★ 2
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ミステリ感想-『黄色い目をした猫の幸せ』高里椎奈

2005年08月22日 | ミステリ感想
~感想~
デビュー作と同時に書き下ろしているだろうに不思議なものだが、だいぶ文章は読みやすくなった。
まだ臆断するには早いが、どうもこのシリーズは普通のミステリとしてとらえるよりも、薬屋さんたちがかっこよく事件を解決するドラマとして読んだほうがいいのかもしれない。
楽しみ方としては「清涼院流水のJDCシリーズ」と同じかも。
(もちろんミステリとしての骨格は格段によく組み上げられているが)

手がかり・伏線は読者に論理的な解決をさせるには足らず、トリックもあってないようなもの。
伏線の量は前作から半減し、物語は必要以上に長い。
早く好きにならないと、今後も読みつづけていくのは辛いかも。

評価は読みやすくなった分で前作より+1点。


評価:★ 2
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ミステリ感想-『ラミア虐殺』飛鳥部勝則

2005年08月14日 | ミステリ感想
~あらすじ~
吹雪の山荘で起こった連続殺人。
「突きとめられないなら、全部殺してしまえばいい。
その方が自分がやられるよりは、はるかにいい」
殺すか、殺されるか。極上にして凶悪なインモラルミステリ。


~感想~
これは意表をつかれた。氏の本を初めて読むだけに、これが異色作なのかどうか判断はつかないが、とにかく異質。
予備知識をもって読んだだけに、覚悟はできていたが、もしなにも知らずに読めば、いったいどんな感想を抱いたものか――。
ぜひなにも調べずに、先入観なしに読んでいただきたい。
B級本格ミステリここにあり。

一言でいえば、この作者はバカなんだと思います。(褒め言葉)


評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『銀の檻を溶かして』高里椎奈

2005年08月12日 | ミステリ感想
~あらすじ~
にぎやかな街の一角、まるでそこだけ時に取り残されたかのようなその店。
蒼然たる看板に大書された屋号は、『深山木薬店』。
優しげな青年と、澄んだ美貌の少年と、元気な男の子の三人が営む薬屋さんは
極めて特殊な「探偵事務所」でもあり……。
99年メフィスト賞。


~感想~
文体は未熟で粗けずり、とにかく読みづらく解りづらい。
日常会話・描写でさえ、いまなにが起こりなにを話しているのか見失うこともしばしば。
肝心なところは説明足らずで、どうでもいいことを説明しすぎている。
それが事件の解決にいたっても同じで、トリックや真相がいまいち伝わってこない。
同人誌的ノリやボーイズラブ的設定、同性からは魅力を感じない主人公などなど、とっつきにくさは満点。
しかし、デビュー作ならではとでも言うべき、山のような伏線とすべてがつながっていく展開は、「この作家にはなにかがある」と思わせるに十分。
とにかく読み疲れる文体さえこなれてくれば、大化けする可能性は高い。(デビューから6年経ったいまも第一線に立つ作家に言うのも変だが)


99.12.28
評価:☆ 1
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ミステリ感想-『松浦純菜の静かな世界』浦賀和宏

2005年08月02日 | ミステリ感想
~あらすじ~
大ケガを負い、療養生活をおくっていた松浦純菜が2年ぶりに自宅に戻ると、
親友の貴子が行方不明になっていた。市内では連続女子高生殺人事件が発生。
被害者は身体の一部を持ち去られていて……。
大強運で超不幸な“奇跡の男”八木剛士と真相を追う、2人の心の闇が少しずつ重なり合う。


~感想~
松浦純菜はなぜ剛士に近づくのか。その最大(?)の謎が明かされるのが最後の最後のため、登場人物に感情移入できずに読み終えてしまうきらいがある。
松浦純菜の言う「力」というものが不明瞭で、物語としての必要性もいまひとつ。伏線・トリックは基準以下。
ひねくれた若者の視点は、人それぞれだろうが読んでいて不快なだけだった。
時系列をバラバラに組み立てたことによる、読書効果もトリックもほとんどないのは、ただ煩雑なだけ。
浦賀和宏の描く、新たな青春ミステリといったところだろうが、個人的にはさっぱり興味の湧かないシリーズになりそうな予感。


05.8.2
評価:★★ 4
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