小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『ダンガンロンパ霧切 2』北山猛邦

2019年08月31日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ダブルゼロクラス探偵の七村彗星に招かれ、黒の挑戦が行われる廃ホテルを訪れた、霧切響子と五月雨結。
毎晩一人が殺される中、殺されない「探偵権」をめぐってオークションが行われる。


~感想~
全キャラのイラストが描かれ、全員にわかりやすい特徴が付いている以外は、前作に続き今回も特にダンガンロンパらしさは感じられないが、そんなことは気にならないほど本格ミステリとして楽しめる。
本格ミステリにありがちな強引な設定や殺人ゲームは、ダンガンロンパ世界では当たり前の物なので、面倒な説明抜きで作者がイキイキとやりたい放題しているのが伝わってくる。

密室トリックはそれしか無いけどあんまりな力業で、普通にやったら怒られるか現実性が皆無になるところ、この設定ならば成立してしまう。探偵権を争うコン・ゲームも数人の思惑が絡む知恵比べではなく、ほとんど一騎打ちかつあっさりしたもので、振り返ってみるとトリックもコン・ゲームもわりと緩いのだが、この世界観と設定のおかげですんなり受け入れられる。
決着後にはもはや探偵とかトリックとかそういう問題ではないスタンド能力が普通に出てきて流石に笑った。やっぱりこれ流水大説だろ……。カーニバルで見たぞこれ。
もはや霧切響子である必要性すら無くなってきた気がするが、機会があればまたシリーズを追いかけようと思う。


19.8.30
評価:★★★ 6
コメント

オカルト三国志  魏の誕生は天の意志

2019年08月30日 | オカルト三国志
「杜瓊伝」に曰く。
優れた予言者として知られる周舒(しゅうじょ)は古くから伝わる「漢に代わるのは当塗高」という謎めいた予言を「当塗高とは魏だ」と解いた。
蜀の杜瓊(とけい)は譙周(しょうしゅう)にその解説を求められ「魏には宮城の門という意味がある。門は塗(道)に当たり高くそびえている」と答えた。

さらに杜瓊は「漢の時代になってから、部局のことを曹と呼ぶようになった。役人は属曹といい、下僕は侍曹と呼ぶ。曹操は魏を建国し、やがて漢から帝位を奪うだろう。曹氏に属し、曹氏に侍るということだ。自然とそんな偶然が起こるのだから、これはほとんど天の意志だ」と言ったという。
コメント

ミステリ感想-『ダンガンロンパ霧切 1』北山猛邦

2019年08月28日 | ミステリ感想
~あらすじ~
女子高生探偵の五月雨結は、依頼人に招かれた天文台で意識を失った。
目覚めると同行した探偵たちは首を切られ、別の胴体のそばへと置かれていた。
そして中学生探偵の霧切響子は凶器を握って倒れており…。


~感想~
今さら説明不要の傑作ADV「ダンガンロンパ」に登場する霧切響子の中学時代の活躍を描いたスピンオフ。
…なのだが霧切響子が登場し、ダンガンロンパと同じイラストレーターが挿絵を描いている以外は、ダンガンロンパの雰囲気は薄い。
むしろオリジナル設定として世界中の探偵のデータベース「探偵図書館」とか、探偵の実力を数値化とか、謎の犯罪組織による探偵 VS 犯人の犯罪ゲームとかをぶち込み、清涼院流水のJDCシリーズを思い出させる。というかいくらシナリオライターに直々に指名されたとはいえこんな世界観ごと変える設定を勝手に作っていいのかww
まあいろいろ好き放題やってもどうせダンガンロンパ世界は【禁則事項】なので影響は無いと思うが。

探偵と犯人のゲーム的な知恵比べという背景が早々に明かされ、開始時点で語り手と霧切響子しかいないというシンプルすぎる状況で、本格ミステリを読み慣れない、原作ファンから本書を手に取った人にも優しく、また本格ファンも図解付きで示される死体の有様を見ただけでもう笑わずにはいられないだろう。
表紙に「物理の北山」と大書してあるのはちょっとどうかと思うが、トリックは単純かつ大胆で、霧切響子の推理も見事に決まった。解決後の思いっきり次回に続き、ますますJDC臭が濃くなる展開も興味を引きと、原作ファン・ミステリファン・北山ファンが揃って笑顔で読める、素晴らしいスピンオフではないだろうか。

また星海社を初めて読んだが、かさばるし持ちづらいものの、紙質が同じままフルカラーで挿絵が入れられるのは良いアイデアだと思った。


19.8.26
評価:★★★ 6
コメント

ミステリ感想-『ゴーレムの檻』柄刀一

2019年08月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
エッシャーを継ぐ者と評された天才画家は、妻子を殺した犯人を告発する作品を残した。展覧会に訪れた宇佐見博士はエッシャーの作品が実在する世界に迷い込み…エッシャー世界
双子の兄弟が一人は死体で、もう一人はカプセルの中で生死不明で発見される。双子の兄は自身が爆弾魔だと明かし、さらにどちらかが殺人犯だと指摘し、正解しなければ毒ガスが散布されると脅迫する…シュレーディンガーDOOR
知人の創作したミステリに宇佐見博士は挑戦する。それは罪を告白するよう迫る何者かの声がどこまでも追ってくる話で…見えない人、宇佐見風
中世イギリスの監獄の監督官に意識が乗り移った宇佐見博士。収監されたゴーレムと呼ばれる男は、厳重に閉鎖された監獄から姿を消し…ゴーレムの檻
太陽を信奉する宗教団体で、独房に囚われていた男が2つの密室から脱出した…太陽殿のイシス

たびたびファンタジー世界に巻き込まれる宇佐見博士を主人公とした連作短編集。

2005年本ミス9位、日本推理作家協会賞候補、本格ミステリ大賞候補


~感想~
冒頭の「エッシャー世界」は表題のエッシャー世界のトリックが腰砕けなものながら、犯人を告発する作品の方は鮮やかに罠がはまった。本作中で最も好み。
続く「シュレーディンガーDOOR」は針の穴を通すような、というか細々した忙しいアリバイトリックなものの、●●が飛んでいくだけでもう面白い。
「見えない人、宇佐見風」は本当に出来の悪い創作ミステリのようなしょぼさだが、あってもなくてもどうでもいいサブトリックの方は面白かった。
「ゴーレムの檻」は作者おなじみの、そこに死角があると理解できるのは世界中で作者だけな目線トリックで、自分には「時刻表をどうこうしたらなんかアリバイが出来たし間に合いました」と同じ物にしか見えないが、細かい仕掛け(というか努力)が張り巡らされ、初読時よりは好印象だった。
ラストの「太陽殿のイシス」は「ゴーレムの檻」よりもっと酷い死角を構築しているし、どう考えても成功しないと思うが、皮肉の効いた物語自体は良く出来ている。連作短編集を締めくくる結末も伏線が上手い。

相性が悪いと自覚している作者だが、その中ではわりと楽しめた。
問題なく読める向きならもっと楽しめることだろう。


19.8.26
評価:★★☆ 5
コメント (2)

今週のキン肉マン #293 出奔の代償!!

2019年08月26日 | 今週のキン肉マン
・なんでドアにぶつけただけの傷がこんなに深いんだ
・試合中もっと深い傷いくらでも負ってるだろ
・さてはドアに込められたキン肉王家の怨念だな
・キン肉スペシャルっぽいなプリズンアームロック
・ハンブルグの黒い霧のセットアップ超かっこいい…
・ブロッケンの地名技はどんな格上の相手にもクリーンヒットする(フェニックス、サイコマン、アリステラ)
・褒められて足踏みして喜ぶブロッケン
・犬か
・ここで地獄のネジ回し
・特にトラウマになってた印象はないけど
・むしろ観戦してるラーメンマンのほうが苦しんでそう
コメント

ゲーム感想-『レイジングループ』

2019年08月24日 | ゲーム
あらすじ
失恋のショックから旅に出た房石陽明は、山道で迷い崖から滑落。
女子大生の芹沢千枝実に助けられ、彼女の住む奇妙な風習の残る寒村に招かれる。
そして夜、霧が立ち込めた村に人狼が現れる。
村人たちは密かに紛れ込んだ人狼を倒すため、異能を用い議論を交わす。
そして陽明は、死ぬと道に迷った所まで時間が巻き戻ることに気づき―。


1.概要
いわゆるサウンドノベルで、人狼ゲームを潔いほどそのまま流用した設定がまず特色の一つ。
もう一つは主人公の房石陽明の特性で、彼は死ぬたびに記憶を保持したまま物語の冒頭に戻される。
つまりプレイヤーの視点をそのままシステムに持ち込んだもので、失敗した記憶をもとに危機を回避していくのだが、ここが面白いところでプレイヤーの選択の余地はほとんどない。死んで手掛かりを得てやり直していく陽明の苦心惨憺ぶりを見るだけの一本道と言っても良い。なんせ「誰が人狼か」を選ぶ選択肢が出ることすら稀である。
というか危機を回避するための選択肢をいちいち設けて、それを総当りさせていたら膨大かつ煩雑すぎて間違いなくプレイヤーが死ぬので、これが正解であろう。
もっともそのためには「一本道なのに退屈させないほど話自体が面白いこと」が絶対条件である。そしてこれがもうとんでもなく面白いのだ。
これをセール中のPSプラス会員価格2000円以下で売って本当に良いの? もうちょっと払うよ?


2.ストーリー
「人狼+ひぐらし+京極堂+メガテン+TRICK+横溝正史」とおすすめされ購入したのだがマジだった。一つか二つは足りない気がしても話が進むと全部出てくるので安心して欲しい。なんならそこに「+雨格子の館+街」も足してよい。
さらに度肝を抜かれたのがクリア後に解禁される「暴露モード」である。ここでは本編では語られなかった心情やネタバレ解説、説明不足だった部分の補足や、人狼ゲーム中のそれぞれの戦術までもが明かされる。本編にそのまま暴露パートが追加される恐るべき分量で、必読である。


3.キャラ
全員ほんのり棒読みで、特に主人公の陽明が一番しゃべる癖に一番棒読みなのが、本作最大のネックだろう。
なんせ有名な声優が一人もいない。というか経費節減のためか全員スクール生、つまり素人らしい。
陽明も性格からして棒読みはハマっているのだが、これだけ全員が全員上手くないのは逆にすごい。
どうしても我慢できなければオプションで一人ひとり音声のオン・オフを選べるので活用して欲しい。自分は陽明だけギブアップした。
棒読みを除けばキャラの立った個性派揃いであり、しかもほぼ全員が一見してわからない裏の顔を持っているので何度となく驚かされるだろう。

ストーリーとキャラの面白さはネタバレ無しでは全く語れないのでページを設けた。
興味のある方は必ず本編クリア後に読んでいただきたい。
超キモいし6千文字あるけど。 → レイジングループネタバレ感想


4.人狼
人狼ゲームを役職の名前だけ変えた設定で、もう潔いほど丸パク…そのまんま。
村内での立場やキャラごとの背景と、人狼ゲームでの役職が複雑に絡まった論理・心理戦も本作の魅力である。
そのため人狼ゲームでのセオリーが有効とは限らないし、戦いはゲーム内だけで完結しない。そのうえ主人公は「死に戻り」の能力まで持っている。
この設定でできることの全てをやり尽くしたといって過言ではなく、少なくとも今後これを超える人狼ゲーム物はまず出ないだろうし、人狼で何か書こうと思っていた後続の作家を全滅させてしまったことは疑いない。

総じて、人狼+ひぐらし+京極堂+メガテン+TRICK+横溝正史(+雨格子の館+街)のいいとこ取りの、歴史的傑作ADVである。羅列した要素のいくつかに興味があるならぜひプレイして欲しい。本当にすごいから。


★★★★★★★☆ 15
コメント

オカルト三国志  予知をしない理由

2019年08月23日 | オカルト三国志
「杜瓊伝」に曰く。
蜀の杜瓊(とけい)はあらゆる学問に通じ、予知術も心得ていたが使わなかった。なぜやらないのか問われると「この術は非常に困難で、自身の目で全てを見極めねばならない。朝も晩も働いてようやくわかるのだが、今度はせっかく知った予言が他人に漏れないかと心配になる。それなら初めから知らないほうがマシなのです」と言ったという。
コメント

オカルト三国志  張裕の失敗

2019年08月22日 | オカルト三国志
「周羣伝」に曰く。
蜀の張裕(ちょうゆう)も空の様子から予言をするのを得意とし、周羣(しゅうぐん)よりも才能があった。
だが219年、劉備が漢中を攻めるにあたり「必ず負けます」と言い外れてしまった。
張裕は劉備に仕える前に軽口で不快にさせたり、「220年に後漢は終わり、222~223年にあなたも亡くなる」と占っていたため、恨まれていた。
そこで漢中攻略の予言が外れた責任を問われとうとう処刑された。
死後、後漢の滅亡と劉備の死は的中した。

張裕は人相占いにも長けており、鏡を見るたびに自分の顔に刑死する相を見てしまい、激怒して鏡を割っていたという。
コメント

オカルト三国志  周羣の図讖

2019年08月20日 | オカルト三国志
「周羣伝」に曰く。
蜀の周羣(しゅうぐん)は父から図讖(としん)という予言術を習い、自然現象から未来を占った。裕福な家だったため庭に楼を立て、下僕に交代で空を見張らせ、少しでも異変があれば観察した。

202年、越雋郡で男が女に変身する異変があった。周羣は前漢の時代にも同じことがあり、王朝が交代する兆しだと言った。
220年、後漢は滅び魏が興った。

207年、彗星が現れた。星座を地図に対応させると荊州にあたるため周羣は「荊州を治める劉表(りゅうひょう)が亡くなり土地を失う」と占い的中させた。

212年にも彗星が現れ、「西方で領土を持つ者がそれを失う」と占い、3年以内に的中した。

219年、劉備は漢中を攻めるにあたり周羣に占わせた。
「土地は手に入るが住民は手に入りません。一部隊を出せば必ず負けます」と占い、全て的中したという。
コメント

オカルト三国志  井戸に桑の木が生える夢

2019年08月19日 | オカルト三国志
「益部耆旧伝」に曰く。
蜀の何祇(かし)は井戸の中に桑の木が生える夢を見て、夢占いの名手の趙直(ちょうちょく)に質問した。
趙直は「井戸に木が生えたら植え替えます。桑は「桒」とも書き、十を4つの下に八と書きます。48歳で寿命が尽きるという意味でしょう」と答えた。
何祇はそれだけあれば十分だと笑い、予言通りに48歳で亡くなったという。
コメント