小金沢ライブラリー

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マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 3』加藤元浩

2009年06月23日 | マンガ感想
ともあれ、本作品を読まれたみなさんの感想は「ここまでやるか!」の一言でしょう。
それに対する私たちの返答は---むろんのこと自戒と反省を込めて言うのですが---
本格推理小説というものは「ここまでやる」ものなのです。

『離れた家』山沢晴雄 に寄せた芦辺拓の解説より



「ブレイク・スルー」★★★ 6
~あらすじ~
燈馬のMIT時代の友人ロキとエバが来日。二人によると、燈馬は論文を何者かに破り捨てられ、MITを去ることを余儀なくされたという。

~感想~
燈馬の過去と頭の体操で一編まとめ上げた――だけではなく、逆をつく伏線の忍ばせ方が実に巧み。
伏線ひとつだけで良作をものせるという好例。


「褪せた星図」★★★☆ 7
~あらすじ~
取り壊しの決まった天文台に集められた所有者の家族と関係者たち。しかし天体望遠鏡の中から黒焦げの死体が発見され……。

~感想~
天文台という舞台を活かしたトリック、望遠鏡の密室、さらにはドロドロの血縁関係とこれだけの分量に詰め込み過ぎの内容。
真相には物理だけではなく心理をからめ、皮肉な結末までつけてみせた。これだけ盛りだくさんの作品にケチをつけたら罰が当たるだろうが、その分ごちゃついてしまった印象があるのも確か。
それにしても、貧乏性の目から見れば、一つの作品にこれだけアイデアを使うなんてもったいないとすら思えてしまう。
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映画(DVD)感想―『D-WARS』

2009年06月20日 | 映画感想

~あらすじ~
怪獣がギャー。イケメンがワー。美女がキャー。バリーンドカーンウオー。完。

~感想~
韓国で公開された年のナンバーワンヒットを記録した一方で、アメリカのレビューサイトで最低映画賞に輝いた糞映画、それが今作である。
韓国での大ヒットは韓国人の感性がアレなわけではなく、単に宣伝の勝利だろうことは、彼らの名誉のために付記しておきたい。
背景はともかくとして、感想はどうかというと、なんと一言で済む。
こ れ は ひ ど い
である。
CGが『デビルマン』並だったら『デビルマン』級の歴史的駄作だったに違いない。
しかしCGだけは、質感や背景への溶け込みこそハリウッドには一歩及ばないものの、気合と愛のこもった作りこみに、満載のアイデアに支えられ超大作にも劣らない出来栄えになっている。
だがそれ以外の要素のなにからなにまで――脚本、カット割り、演技、シナリオ、キャラ造型――すべてが大学生の自主制作映画とどっこいどっこいなくらい破綻しているため、金だけ異常にかけたB級映画になってしまっているのだ。
どう破綻しているのかいちいちツッこむと『デビルマン』並にきりがないので、もしニコニコ動画にアップされた場合につけられそうなタグを紹介するにとどめよう。

クルマ最強説
クルマTUEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!
・神出鬼没ジジイ
・夢オチを二度やるという発想に脱帽
・一足飛びに500年さかのぼる記憶
・大蛇「本気出したら追いついてた」
・CG班だけが本気
ここはロサンゼルスのどこなんだ
一撃必殺のブレストファイヤー
シーユー来世!
・もう一度飲み込むなら吐くな
酔拳をほうふつとさせるラストシーン

……しかし冷静に考えるとこの映画と『トランスフォーマー』がどう違うのかわからない気もするから困る。


評価:★★ 4
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ミステリ感想-『隠蔽捜査』今野敏

2009年06月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
連続殺人は序章にすぎなかった。
警察庁長官官房でマスコミ対策を担う竜崎伸也。その朴念仁ぶりに、周囲は〈変人〉という称号を与えた。だが彼はこう考えていた。エリートは、国家を守るため、身を捧げるべきだ。私はそれに従って生きているにすぎない、と。
吉川英治文学新人賞受賞作。


~感想~
こんなに典型的な、にもかかわらず魅力的な官僚がかつていただろうか。
このミス20位にランクインしているが、ミステリ的な要素はほぼ皆無。
起こる事件に謎はなく、主人公の竜崎は事務方だけに、捜査にたずさわることもない。だが物語はその事件を中心に動き、その時々で竜崎に迫られる決断が読む者を引きつけてやまない。
だが構成やストーリーの行方もさることながら、この小説の真の魅力は竜崎という特異な人物の造型にあり、彼の一本芯の通った、だがそれゆえに奇抜な言動や、選択の数々が、非常に面白いのだ。
そういった意味では今作は純然たるキャラ小説であり、どこまでも官僚的で、いついかなる時も正論を放ち、それがしかも本音とリンクしている竜崎というキャラを産み出した時点で、大成功を収めたと言えるだろう。


09.6.4
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『贖罪』湊かなえ

2009年06月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
穏やかな田舎町で起きた、むごたらしい少女殺害事件。
犯人と目される男の顔をどうしても思い出せない四人の少女たちに投げつけられた激情の言葉が、彼女たちの運命を大きく狂わせる。
……これで約束は、果たせたことになるのでしょうか?


~感想~
デビュー作『告白』と同じく、連作短編集の体裁をとるが、やはり『告白』のように個々の短編としては特段の謎もトリックもなく、長編の一部としてしか機能していない。
ミステリというか、きわめて普通の文学に近く、全体に謎や伏線を張りめぐらせることよりも、因縁譚として物語に結末をつけることに腐心したようで、驚きや意外性といったものはほとんどない。
だからと言って退屈というわけではないが、『告白』と比較するとオチが弱く、せめて『告白』における『聖職者』のような卓抜した一作があれば見栄えも変わったろうが、全体的にこじんまりとまとまってしまった印象。
とはいえ『聖職者』と同じく教師を語り手に据えたときの毒のすさまじさや、これってミステリというか『呪怨』じゃね? と思えてしまう「関係者は皆殺し」テイストは面白い。
……ひょっとしなくてもこれはホラー小説として読むのが正しいのだろうか。


09.6.17
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『絶望ノート』歌野晶午

2009年06月15日 | ミステリ感想
~あらすじ~
中学2年の太刀川照音は、「絶望ノート」と名づけた日記帳に、いじめの苦しさと両親への不満を書き連ねていた。
そんな彼はある日、校庭で奇怪な石を見つけて持ち帰り、それを自分にとっての“神”だと信じた。神の名はオイネプギプト。自らの血をもって祈りを捧げ、いじめグループの中心人物の死を神に願った。はたしていじめっ子はあっけなく死んでしまい……。


~感想~
これなんてデスノ?
それはおいとくとしても、効果的ではない後出しジャンケンといった印象の、不満ばかり後に残る作品である。

どんでん返しが連続するミステリでは、「実は●●は●●でした」をくり返すだけの安易な手法に陥ることがあるが、これはその典型例の一つと言えるかもしれない。
また、全体の2/3を占める手記が、たとえば『眩暈』や『黒猫館の殺人』とは異なり、リアルタイムで記されていることもあり、現実の流れに沿って記述がゆらいでしまい、内容のどこからどこまでが真実で、どこからどこまでが嘘なのか、あまりにも縛りがなさすぎるのがネック。
ましてや種明かしで「ここからここまでは本当で、ここからここまでは嘘でした!」と言われても驚くことはできない。また、手記を離れた部分でも「実は●●は●●でした」の連発で、伏線も少なく、受ける衝撃は非常に薄い。
とどめに結末では悪癖を再発させてしまい、全編にわたって煙に巻かれただけのような気にさえなってしまう。
駄作ではないが、こういった趣向で、ここまで長大にするならば、もっと他にやり口はいくらでもあったのではなかろうか、と思えてならない。


09.6.4
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『コズミック・ゼロ』清涼院流水

2009年06月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
日本から人がいなくなる!元日の午前零時、全国の初詣客が大量に消失し、同時に警視庁や県警本部が謎の集団に占拠された。それが日本絶滅計画の幕開けだった。計画を実行するのはそれぞれが特殊な能力を持った7人組“セブンス”。リーダー・タクトの指揮の下、彼らは日本中の人という人を次々と、大量に消していく。一体どうやって、そして何の目的で?2009年、全く新しいパニック・サスペンスの傑作がここに誕生。
※コピペ


~感想~
蒼井上鷹? 汀こるもの? 笑止! 退けい退けい! ダメミス神のお通りぞ!!

というわけで流水大説をひさびさに読了。
「コズミックのようなすごい作品を」と依頼されたからって、タイトルに「コズミック」を入れてしまうセンスにまずは脱帽。
お笑い芸人にたとえるなら、蒼井やこるものは面白おかしくやってるつもりが見ている側には痛くてたまらない痛キャラだろう。
では流水はというと、彼はおそらく自分では変なことをやっているつもりはなく、彼の常識が一般と大きくかけ離れているから、異様に映るだけの、いわゆる天然ボケキャラなのだ。
その独特のセンスは容赦なく全開で、登場人物は人形のように魂が抜けているのは当然として、英国人のエッカートと、彼と会話する人物のセリフがなぜか英語で「これはなにかの伏線かな?」と思いきやもちろんそんなことはなく、単なる枚数稼ぎだったり、くり返しある人物の動向が気にかけられ、なにか劇的な結末とか意外なストーリーへの絡み方をするのかと期待したら、当然のごとくそんなものはなかったり、序盤に殺人鬼の神父が登場するのだが、その思考がぶっ飛んでいて、ざんげに来た人を一年目は1人、2年目は2人、3年目は4人となぜか規則正しく倍々で殺していって、8年目の去年は256人殺せたから、17年後には日本国民全員殺せるぜと、ちょっと考えるだけでも「お前んとこの教会はどんだけ繁盛してんだよ」とか「お前の教会でみんな消息を絶ってたら余裕で捕まるだろ」とか「死体処理はどうしてるんだ」とか百のツッコミが思い浮かぶが、そんなことより問題なのはこの濃いい神父が登場から24ページ後に死亡して、以降まったく登場しないという無意味っぷりなどなど、まっとうな物書きにはとうてい作ることのできない流水ワールドに次ぐ流水ワールド。
まあ流水とゆでたまご御大にツッコむという行為自体がまず無意味なのだが、出オチ神父や無理すぎる黒幕や無理すぎる結末に、そういえば京極夏彦のマネをして見開きページ内に文章を収めるようにしてたのはなんでやめたの? という素朴な疑問、人間消失のトリックが主眼かと思ったら人間消失のトリックなんてものはぜんぜんなかったぜ! という衝撃の(というか想像通りの)真相などはもう、「ああ、僕はいま流水大説を読んでいる」という気持ちにはさせてもらえるものの、それでなにがしかの得るものがあるかというと、まったくそんなものはない。

「たぶん今回もこんな内容だろうなあ」と思い描いていたとおりのド真ん中直球勝負なので、カタギの人間は手を出さないのが賢明でしょう。


09.6.8
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『もつれっぱなし』井上夢人

2009年06月07日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「…あたしね」「うん」「宇宙人みつけたの」「…」。男女の会話だけで構成される6篇の連作編篇集。宇宙人、四十四年後、呪い、狼男、幽霊、嘘。厄介な話を証明しようとするものの、ことごとく男女の会話はもつれにもつれ?。エンタテインメントの新境地を拓きつづけた著者の、圧倒的小説世界の到達点。
※コピペ


~感想~
ああ、これは典型的な壁本ですね。

趣向は買うが、買えるのはそれだけで、中身があまりにも薄い。
それこそ義務教育を受けた人間なら誰でも考えられる程度の結末ばかりで、なんらの意外性も論理の冴えも会話の妙味もありゃしない。
結末が残念なだけではなく、内容も変な主張をするAと全否定するBとの掛け合いという、工夫のないワンパターンぶりで、内3編は「とりあえずセックスしよう」という流れに持っていくだけという安易さ。たったこれだけの内容に50ページもかける意味がどこにもなく、並のショートショート作家なら5ページで書けるレベル。という表現すらショートショート作家に失礼なほど。
こんなものを読むなら、渡辺浩弐や星新一の(星は読んだことないけど)ショートショートを読んだほうがはるかに経済的。短いし多いしひねりも利いてるし。
読むだけまったくの時間の無駄、と断じてかまわないだろう。


09.6.3
評価:問題外
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映画(DVD)感想―『バイオハザードⅢ』

2009年06月06日 | 映画感想

~あらすじ~
ラクーンシティでの惨劇から数年後、Tウィルスの感染は世界中へ広がり、人類はアンデッドへ、地上世界は砂漠へと化していた。
さらに、アンブレラ社では“アリス計画”が始動し、アリスのクローン実験がくり返されていく。
そんな中、ひとり世界をさまようアリスは、アラスカが感染の及んでいない安息の地だと記されたノートを手に入れる。


~感想~
もうバイオというか世紀末救世主伝説になってきた感があるが、普通に楽しめるアクション映画になっている。
が、そんなことよりも重要(?)なのは、観ていて『ワン・ミス・コール』よりよっぽど心拍数の上がる場面が多かったのはどういうことなのか。
そういえば前二作でもホラー映画の基礎をわきまえた驚かせ方を心得ていて、並のハリウッドホラーよりもぞっとすることが多々あった。
そのあたり、ホラーだと思って観ていないから驚くのか、それともホラー大国・日本のスタッフの手が入っているのか、ほんの少しだけ興味があるようなないような。


評価:★★★ 6
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映画(DVD)感想―『スパイダーマン3』

2009年06月05日 | 映画感想

~あらすじ~
シリーズ第3弾。それぞれに深い事情を抱えスパイダーマンへの憎悪を燃やす3人の敵との対決に加え、MJとの波乱に満ちた恋の行方、さらには謎の黒い物体によってブラック・スパイダーマンとなった青年ピーターが、内面の悪と向き合い深く葛藤するさまが激しいバトル・シーンとともに綴られてゆく。
※コピペ


~感想~
前2作はあれだけよくできてたのに、どうして3作目でこんなになってしまったのだろう。
ストーリーが一から十まで破綻していて、どこから突っ込めばいいのかわからないほど。
ご都合主義は娯楽作品につきものだが、それにしても全てが都合よく動きすぎるのが問題。
一番わけがわからないのがヒロイン(あいかわらずかわいいんだかブサイクなんだかわからない微妙な顔がまぶしい)で、いちおうネタバレを避けて言うと、誰か「お前の彼はスパイダーマンだろ」と突っ込んでほしいところだし、真相が明るみに出てもいっこうに打ち明けようとしないあたりは「あれ? もしかして本当に別れたかったの?」と思えてしまう。
アクションさえよくできてればたいていの映画は楽しめる僕でも、プロットのあまりの壊れっぷりに、最後まで釈然としなかった。


評価:★☆ 3
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映画(DVD)感想―『ナイトミュージアム』

2009年06月04日 | 映画感想

~あらすじ~
冴えないバツイチ男のラリーは失業中で、最愛の息子ニッキーにも愛想を尽かされてしまう始末。
なんとか自然史博物館の夜警の仕事にありつくが、迎えた勤務初日、見回りを始めたラリーは、吸水機から水を飲んでいるティラノザウルスの骨と出くわしてしまい……。


~感想~
子供向け娯楽作品として正解を突き詰めた作品。
落ちこぼれパパの再起を軸に、息子との関係修復、憎めない悪役とのドタバタ対決、博物館の展示物がいきいきと動き回るという夢のある情景、強引な大団円と、まさに家族そろって楽しめる気のおけない映画。
歴史関係のさまざまなエピソードなど、教材にもうってつけではなかろうか。


評価:★★☆ 5
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