小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『密室』アンソロジー

2000年12月31日 | ミステリ感想
~収録作品~
消えた背番号11  ――姉小路祐
開かずの間の怪  ――有栖川有栖
うば捨て伝説  ――岩崎正吾
傾いた密室  ――折原一
密室のユリ  ――二階堂黎人
ロス・マクドナルドは黄色い部屋の夢を見るか?  ――法月綸太郎
靴の中の死体―クリスマスの密室  ――山口雅也
声たち  ――若竹七海


~感想~
アリスの江神短編が珍しい。それ以外は僕が出来がいいと思わない作品ばかり――のなか、若竹氏の短編が実にすばらしかった。末尾の一言にはヒザを打つ。佳作。


00.12.31
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『工学部水柿助教授の日常』森博嗣

2000年12月31日 | ミステリ感想
~収録作品~
ブルマもハンバーガも居酒屋の梅干で消えた鞄と博士たち
ミステリィ・サークルもコンクリート試験体も海の藻屑と消えた笑えない津市の知的指摘
試験にまつわる封印その他もろもろを今さら蒸し返す行為の意義に関する事例報告及び考察(「これでも小説か」の疑問を抱えつつ)
若き水柿君の悩みとかよりも客観的なノスタルジィあるいは今さら理解するビニル袋の望遠だよ
世界食べ歩きとか世界不思議発見とかボルトと机と上履きでゴー(タイトル短くしてくれって云われちゃった)


~感想~
一言で言えば、森節・炸裂。それ以上でもそれ以下でもない。


00.12.31
評価:★★★★☆ 9
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ミステリ感想-『消える上海レディ新装版』島田荘司

2000年12月22日 | ミステリ感想
~あらすじ~
チャイナドレスとつば広の帽子、青いパンプスで着飾った謎の「上海レディ」。
彼女は取材で神戸~上海を結ぶ「鑑真号」に乗ることになった女性誌記者を
出航前から執拗につけねらっていた。密室と化した船内で連続して起こる兇行。
「上海レディ」の正体とは?


~感想~
全体的に整理されていない印象を受ける、混雑した作品。
これで新装版なら元はどうなっちゃってたんだろうと失礼な考えも浮かぶ。まあ、面白いんですけど。


00.12.22
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『確率2/2の死』島田荘司

2000年12月20日 | ミステリ感想
~あらすじ~
プロ野球選手の子供が誘拐された。身代金は一千万円。
犯人の指示で電話から電話へと走り回る吉敷。
だが、6度目の電話を最後に、犯人は突然、身代金を放棄し子供を解放。
はたして犯人の目的とはなんだったのか?


~感想~
テレビドラマ(ネタバレ?→)「あぶない刑事」を思い出す方もいるだろう。まさかこれが元ネタなのだろうか?
設定はともかく、氏にしては淡泊な、奇想・不可能興味ともに薄い作品。展開もやや冗漫にすぎるきらいも……。


00.12.20
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『「Y」の悲劇』アンソロジー

2000年12月18日 | ミステリ感想
~収録作品~
あるYの悲劇  ――有栖川有栖
ダイイングメッセージ《Y》  ――篠田真由美
「Y」の悲劇―「Y」がふえる  ――二階堂黎人
イコールYの悲劇  ――法月綸太郎


~感想~
『あるYの悲劇』
こういったトリック(ネタバレ→雑学・ウンチク)をメインに据えるのはどうかと思うが、アリス作品としては近年まれに見る完成度の高さ。余分すぎる文学味さえとっぱらい、トリック主体で行けばまだまだやれるはずなのに。
……でも、文学味のない、論理に磨きをかけたアリスって、つまり法月じゃん。

『ダイイングメッセージ《Y》』
蒼の物語である必然性が感じられない。展開・真相もつきなみ。

『「Y」の悲劇―「Y」がふえる』
なにか嫌なことでもあったのだろうか。読んでいてとにかく不快。
ユーモアセンスの欠如はいつものこと。

『イコールYの悲劇』
二転三転の展開や終局の逆転といい、ダイイング・メッセージ物としては出色のでき。


~総括~
冒頭のアリスと巻末の法月が、明と暗の対比を見せる。間の2編はまあ、あえて触れまい。


00.12.18
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『高山殺人行1/2の女 新装版』島田荘司

2000年12月17日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「女房を殺してしまった」愛人に電話で告白された女。
彼のアリバイを偽装工作するため、被害者に変装して、
東京から高山までの道のりを単独でドライブすることに……。
しかし、奇妙な男の尾行、謎の脅迫状など不可解なトラブルが次々と彼女を襲う。


~感想~
テンポ良く、引きつけてやまない文章。不可能興味にあふれた奇想も見事。
多少真相はあっけなく、読後に不満は残るが……。
こんな枝葉末節(失礼)みたいな作品でも手を抜かず、改訂までするとはさすがにさすが。


00.12.17
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『奇跡の男』泡坂妻夫

2000年12月12日 | ミステリ感想
~収録作品~
奇跡の男
狐の香典
密会の岩
ナチ式健脳法
妖異蛸男


~感想~
『奇跡の男』
見事。凝った作りは実に堅固。奇想もフーダニットも定石も無しにこんな傑作をものせる腕前に脱帽。

『狐の香典』
『可愛い動機』の焼き直し、という感じもするが、巧みなことに変わりはない。

『密会の岩』
泡坂作品として見れば、辛い評価は否めない。

『ナチ式健脳法』
なんだこれはなんだこれはなんだこれは。よくもまあ、こんなことを思いつく。

『妖異蛸男』
豪華。伏線・展開・論理・トリックと、惜しげもなく辣腕をふるう。


~総括~
傑作・怪作めじろおし。これまた珠玉の短編集。


00.12.12
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『ジュリエットの悲鳴』有栖川有栖

2000年12月10日 | ミステリ感想
~収録作品~
落とし穴
裏切る眼
遠い出張
危険な席
パテオ
多々良探偵の失策
登竜門が多すぎる
世紀のアリバイ
タイタンの殺人
幸運の女神
夜汽車は走る
ジュリエットの悲鳴


~感想~
『落とし穴』
計画がずさんかつテキトーすぎるところに目をつぶれば、なかなかにうまい作り。タイトルはぜんぜんうまくないけど。

『裏切る眼』
展開に予想がつく。もっととことん皮肉にすればいいのでは?

『遠い出張』
オチが利いている。

『多々良探偵の失策』
これまた巧い。ショートショートに意外な才能?

『危険な席』
展開がそのまんますぎ。ひねってよ。あと、許すなよ。

『パテオ』
幻想的落語。オチがちょっと解りづらい。

『登竜門が多すぎる』
逆にオチなんてなくてよかった一編。関西人らしいシャレのよさはいいのだが、もっとふざけまくってくれて良かったのに。

『世紀のアリバイ』
本書中の白眉。

『幸運の女神』
そのまんますぎる。

『タイタンの殺人』
真相があっけない。もっと風刺を利かせても。

『夜汽車は走る』
結局のところ、なんなのか? なにを言わんとしていたのか? 釈然としない。

『ジュリエットの悲鳴』
読後感はとにかく退屈。完全にタイトル負けしている。


~総括~
ショートショートは鋭いのに……。僕の嫌いな「文学寄りに傾いたアリス」ばっかりなので、楽しめなかった。


00.12.10
評価:☆ 1
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ミステリ感想-『私が捜した少年』二階堂黎人

2000年12月08日 | ミステリ感想
~収録作品~
渋柿信介、独身。ライセンスを持たない私立探偵。
日常のしがらみに追われながらも、鋭敏な頭脳と大胆な行動力で、次々に舞い込む事件を解決へと導く。

アリバイのア
キリタンポ村から消えた男
センチメンタル・ハートブレイク
渋柿とマックスの山


~感想~
『私が捜した少年』
渋柿探偵の描写がもっとも凝っている。というか以降尻すぼみ。二階堂氏の新たなる一面を(この時点では)見せてくれる。

『アリバイのア』
トリックが感覚的に無理そう。

『キリタンポ村から消えた男』
氏にしては珍しいトリックが使われている。

『センチメンタル・ハートブレイク』
トリック云々よりも描写で楽しませる。

『渋柿とマックスの山』
トリック自体はよくできているのだが、短編集後半になるにつれ、ネタ切れになった気が。


~総括~
作者の名を聞いて驚いたのも最初だけ。どんどん地金が出てきていつのまにか二階堂丸出しに。
トリックに(それほど)手を抜かず、まっとうな仕掛けをしてくれたのはさすが。


00.12.8
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『ダイヤル7をまわす時』泡坂妻夫

2000年12月05日 | ミステリ感想
~収録作品~
ダイヤル7
芍薬に孔雀
飛んでくる声
可愛い動機
金津の切符
広重好み
青泉さん


~感想~
『ダイヤル7』
メイントリックよりもむしろ、サブトリックの巧みさに感服。犯人を当てるのは容易だが、そこに至るまでの過程が精緻きわまりない。とにかく爽快な傑作。

『芍薬に孔雀』
そう来たかあ。構成はまさに魔術さながら。動機がちょっと島田荘司っぽい。

『飛んでくる声』
これは少し簡単だったか。

『可愛い動機』
ある意味、本書中で最も感心した作品。なんてこたあない(こともないけど)話を、見せ方一つで変貌させた腕の冴え。すごい。

『金津の切符』
これまた見事。憎たらしい敵役と、待ち受ける顛末。皮肉が実にいい。

『広重好み』
逆転。の発想はさすがだが、やや印象薄。

『青泉さん』
なんとも魅力的な人物像を、たったこれだけの文で作り上げる。
シリーズ化もできそうな使い捨ての登場人物たち。さすがさすが。


~総括~
本当に、本・当・に・素晴らしい短編集。傑作傑作また傑作の嵐。あまり知られていないのが惜しすぎる。


00.12.5
評価:★★★★☆ 9
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