小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『本格ミステリ02』アンソロジー

2003年03月31日 | ミステリ感想
~収録作品~
不在の証明  ――有栖川有栖
北斗星の密室  ――折原一
わらう公家  ――霞流一
鳥雲に  ――倉阪鬼一郎
人の降る確率  ――柄刀一
交換炒飯  ――若竹七海
「別れても好きな人」見立て殺人  ――鯨統一郎
通りすがりの改造人間  ――西澤保彦
フレンチ警部と雷鳴の城  ――芦辺拓
闇ニ笑フ  ――倉知淳
英雄と皇帝  ――菅浩江
通り雨  ――伊井圭
やさしい死神  ――大倉崇裕
トリッチ・トラッチ・ポルカ  ――麻耶雄嵩
坂ヲ跳ネ往ク髑髏  ――物集高音
麺とスープと殺人と  ――山田正紀
ひよこ色の天使  ――加納朋子
消えた裁縫道具  ――河内実加


~感想~
『不在の証明』
はい、肩すかしでした。

『北斗星の密室』
ものすごいバカミスじゃないですか。奇想天外な密室にあ然。

『わらう公家』
バカミスの第一人者を初体験。なんというか――流石だw
ものすごいトリックは筆舌に尽くしがたい。とにかく驚いた。

『鳥雲に』
勝手にやってなさいという感じ。

『人の降る確率』
よくできていることは解る。すごく解る。だが。あんな情景、頭ん中だけで描けるかっつーの。

『交換炒飯』
これは変革構造。ただの交換殺人に終わらない仕掛け。

『「別れても好きな人」見立て殺人』
どこが見立てやねん。

『通りすがりの改造人間』
改造人間の存在に、とってつけた感がいなめない。この一作だけ取りだして楽しめるものではあるまい。

『フレンチ警部と雷鳴の城』
氏はカーを模倣したほうが、はるかに文体が読みやすくなるのはどうしてだろう。
どこかで見たトリック(見当のついた方だけネタバレ→)『嘘でもいいから殺人事件』島田荘司 はともかくとして、雰囲気といい楽しめた。

『闇ニ笑フ』
とんでもないとんでもない。本書中どころか01年度の最高傑作短編。
鮮やかな反転。最後の一行が示す真実。脂が乗りに乗ってます。

『英雄と皇帝』
専門知識総動員ミステリ。好きになれない。

『通り雨』
よくできているようで、非常に粗削りな強引トリック。
文章がこなれていて、これから伸びそうな作家――っていい年なんだなこの方。

『やさしい死神』
解りきった犯人をいつまでも引っぱりすぎ。筆力は高い。円紫なんてさっぱり思いださなかった自分が好き。

『トリッチ・トラッチ・ポルカ』
賛否両論のトンデモ探偵登場。とにかくバカなトリックが冴える。

『坂ヲ跳ネ往ク髑髏』
トリックはもちろん、プロットもロジックもサプライズもどこにあったんだろう。
氏はどうしても好きになれない。というか一、二を争うくらい嫌いなもんで。

『麺とスープと殺人と』
いかにもなオッサン臭さが行間からにじみ出るが(暴言)しっかりとした本格ミステリ。

『ひよこ色の天使』
そこまでひっくり返してくれてよかったのに。とはいえ、読みやすく透明感のある佳作。

『消えた裁縫道具』
単なるマンガ化かと思いきやオリジナルとは。つくづくマンガ向きの題材だと思う。
しっかし、これを読んで誤った二階堂観を抱く少年少女が出ないかは危ぶまれる。


~総括~
去年の、日本のミステリ界は大丈夫かと思わせるラインナップからは一変――とまではいかないものの、
そこそこ楽しめるアンソロジーでした。それにしても……正統派が減ったなあ。


03.3.31
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『しゃべくり探偵の四季』黒崎緑

2003年03月20日 | ミステリ感想
~収録作品~
騒々しい幽霊
奇妙なロック歌手
海の誘い
高原の輝き
注文の多い理髪店
戸惑う婚約者
怪しいアルバイト


~感想~
『騒々しい幽霊』
(ネタバレ→)足音 は聞こえそうな気もするけど。伏線の張り方がさすがのそつなさ。

『奇妙なロック歌手』
なるほどなるほど。奇抜なトリックながら納得の出来。

『海の誘い』
なんだかなあ。細工もほとんどないし。そのまんまだ。とことん低評価したい。

『高原の輝き』
特に理由もなく、あっという間にトリックに気づいてしまった。

『注文の多い理髪店』
あまりに意外すぎる真相のせいで、パズラーとしての完成度の高さまで目が行かない。
流し読みしていたら面食らい、あわてて読み返した。出色の一作。

『戸惑う婚約者』
もう新興宗教ものはワンパターンにすぎる。

『怪しいアルバイト』
『五十円玉二十枚の謎』所収の『消失騒動』を改題。
内輪ウケでお茶をにごすプロが続出するなか、きっちりと小説にしあげた出色の一作。


~総括~
笑わせるボケは皆無。外見はこんなだが中身は硬派なミステリがずらり。
食わず嫌いはもったいない。


03.3.20
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『奇商クラブ』G・K・チェスタトン

2003年03月18日 | ミステリ感想
~収録作品~
“会員は完全に新しい商売を発明し生活を支えなければならない”
奇想天外な規約を持つ「奇商クラブ」の面々をめぐる事件を隠退した裁判官バジルが逆説で解く全六編に、中編『驕りの樹』と『背信の塔』を併録。

ブラウン少佐の大冒険
痛ましき名声の失墜
牧師はなぜ訪問したか
家屋周旋業者の珍種目
チャッド教授の奇行
老婦人軟禁事件
背信の塔
驕りの樹


~感想~
奇商クラブの六編は、ミステリとして読むと点は辛くなるが、物語は楽しめる。
むしろ実力をまざまざと見せつけられるのは『驕りの樹』
チェスタトン作品の眼目は結末にあり。二転三転の展開を収束させる手際がさすが。
個々として見ると、堅いわ難解だわと読むのに骨が折れるが、読後感は非常にいい。
皮肉や会話の妙は、時代を超えて輝く。


03.3.18
評価:★★ 4
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ミステリ感想-『鋏の記憶』今邑彩

2003年03月17日 | ミステリ感想
~収録作品~
三時十分の死
鋏の記憶
弁当箱は知っている
猫の恩返し


~感想~
どこがホラーやねん。
いまひとつサイコメトリー能力を活かしきっていない。紫も進介も造型が甘い。
辛く評したが、決して退屈しない佳作。損はしませんよ。


03.3.17
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『こわれもの』浦賀和宏

2003年03月16日 | ミステリ感想
~あらすじ~
人気マンガ家、陣内龍二は婚約者を事故で失ったショックから、次作のヒロインを衝動的に殺してしまう。
殺到するファンからの抗議の中に事故死を予知した手紙があった。
日付は事故の数日前。手紙の差出人は熱烈なファン。
なぜ彼女は予知できたのか? そして予知された死は防げないのか?


~感想~
すげー面白かった。
シリーズを離れた番外編(?)なだけに、いつもと異なる手法ながら、結末まで一気呵成の読破。
終章で明かされる結末はまさに驚愕の一言。浦賀色に染まった作品は、期待を裏切らない。


03.3.16
評価:★★★★☆ 9
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ミステリ感想-『名探偵は、ここにいる』アンソロジー

2003年03月15日 | ミステリ感想
~収録作品~
神影荘奇談  ――太田忠司
Aは安楽椅子のA  ――鯨統一郎
時計じかけの小鳥  ――西澤保彦
納豆殺人事件  ――愛川晶


~感想~
『神影荘奇談』
久々に投げた。物理的に。
盛り上がりなんて計算にも入れていないような淡々とした流れ、そのまんまの手がかり、締め切りに追われてとってつけたような結末。

『Aは安楽椅子のA』
いつもどおり。もう安易な障害はやめてください。

『時計じかけの小鳥』
あいかわらず。もう展開が読めて意外とも思えない。終局の独白なんてもう……。いたってつまらん。

『納豆殺人事件』
分量が少なすぎた。詰め込みすぎて窮屈になった印象。惜しい。


~総括~
名探偵はここにいたのか? 根津愛は幼児。西澤氏はシリーズキャラを出さず。
ただひとつ言えることは、ここに佳作はなかった。


03.3.15
評価:なし 0
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ミステリ感想-『日曜の夜は出たくない』倉知淳

2003年03月14日 | ミステリ感想
~収録作品~
空中散歩者の最期
約束
海に棲む河童
一六三人の目撃者
寄生虫館の殺人
生首幽霊
日曜の夜は出たくない

このミス19位


~感想~
連作短編集。

『空中散歩者の最期』
トリックはともかく、犯行がやや強引(ネタバレ→)いかにも意味深なカラスを偶然で済ませるのも ちょっと片手落ちか。

『約束』
動機がやや弱い。トリックもインパクトに欠け一息か。

『海に棲む河童』
破綻なくしあがった良作。でもわざわざ訳なんていらないのに。

『一六三人の目撃者』
不可能状況があやふやの着地。詰めも甘い。

『寄生虫館の殺人』
氏はこういう文体・構成に抜群の冴えを見せる。謎もトリックも鮮やか。

『生首幽霊』
なぜか読んでいるうちに泡坂妻夫「亜愛一郎シリーズ」を思い出す。結末とか「意外な遺骸」あたりを思い出しません? 僕だけかw

『日曜の夜は出たくない』
(ネタバレ→)真犯人までちゃんと解いてくれればいいのに。疑いを晴らすだけでは食い足りない と思うのは贅沢すぎ?


~総括~
お手本のような、しかしおそらく“誰にも”読み解けないだろう連作短編集ならではの細工。
全体として、まだ倉知淳プロトタイプとでも呼ぶべきか、小粒な作品ばかりだが、種々雑多な味わいは飽きさせない。
倉知氏入門編として、おひとついかが?


03.3.14
評価:★★★ 6
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