小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『滅びのモノクローム』三浦明博

2011年03月31日 | ミステリ感想
~あらすじ~
CM制作者・日下が骨董市で偶然手に入れた、古い16ミリフィルム。その映像をCMに利用しようと考えた日下だったが、そのことが封印された犯罪を暴き出す結果に?
第48回江戸川乱歩賞、02年文春3位。


~感想~
こんなに褒めるところが一つもない作品は、曽根圭介『沈底魚』以来であり、どちらも乱歩賞という事実が、近年の乱歩賞のていたらくを現していると思いたくなる。
トリックと呼べるものは一つもなく、ストーリーは一本調子で意外性も何も無い。挙句に犯人はどうなったのか、ヒロインはどうなったのか、オチすらもつかず全てが消化不良。
キャラ付けも「釣り好き」とか「おネエ口調」とか「酒席の一発芸を持つ」というただそれだけの有様で、各人が持って回ったような人生論を語り出すところもあまりに唐突すぎる。
文庫版の解説で「文春で3位に入りながら、このミスでランクインすらしないのは若い世代の歴史に対する無知」などと的外れな批判をされていたが、なんということはない。単に駄作だからである。
ダメミス特集・第五弾で予告していた「乱歩賞」はこれではないのだが、おそらく用意していた作品がこれよりもダメということはあるまい。
乱歩賞の問題点、文春ランキングの不的確さ(もともと文春は乱歩賞というだけでとりあえず上位に入れることが多々あったが)、文庫版解説の井家上隆幸氏の目が曇っているのを浮き彫りにしたことだけは、評価できるだろうか。


11.3.28
評価:なし 0
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ダメミス感想-『トップラン 6 大航海をラン』清涼院流水

2011年03月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
2001年1月1日―新世紀の到来と同時に、世界は神々しいまでの輝きに包まれる。20世紀までに書かれたあらゆる小説ジャンルと隔絶する方法論でつくられた新しい物語。21世紀「娯楽小説以降」を鮮烈に印象づける書き下ろし文庫シリーズ『トップラン』完結作にして、清涼院「流水大説」の揺るぎない到達点。問答無用の最高傑作、ここに誕生。


~感想~
ついに完結を迎えたトップラン最終巻。OK、内容をざっと振り返ってみよう。
22ページまでは前巻のあらすじだ。なんと前巻の半分にまで分量を減らすことに成功している。すごいぞ流水! でも隔月刊行で前巻の話は記憶に新しいんだから、あらすじ自体がいらなかったと思うぞ。
28~44ページはオランダ雑学だ。現代なら「オランダwiki」でググれば同等の情報が手に入るが、当時はまだ日本にwikiはなかったらしいので流水を責めないでくれ。
47~75ページは00年7月までの重大ニュースダイジェストだ。図書館に行って新聞を見なくてもこの頃のニュースがわかるなんて親切だろ?
76ページからやっと話が動き出して黒幕が明らかになる。ちなみに黒幕は徳川家康だ。もう一度言おう、徳川家康だ。流水のデビュー作(現代日本が舞台)の黒幕に比べれば1000年以上も最近の人物だ。なんの不思議もないだろ?
家康が犯人という時点でだいたいどんな本だかわかっていただけたと思うが、そういう話なんだ。一部引用すると、

進みすぎた感性を持つ導入者(イノベーター)と接点はないのだが、初期採用者(アーリー・アダプター)の後追いをする形で、『初期多数派(アーリー・マジョリティ)』と『後期多数派(レイト・マジョリティ)』が……

そうなんだ。参考書か何かを丸写ししたような文章も流水の特徴なんだ。

このファイナルファンタジークリスタルクロニクルクリスタルベアラーってのはゲームキューブで出たクリスタルを求めて旅するファイナルファンタジークリスタルクロニクルシリーズの続編じゃなくてDSで出たファイナルファンタジークリスタルクロニクルリングオブフェイト、ファイナルファンタジークリスタルクロニクルエコーズオブタイムに並ぶファイナルファンタジークリスタルクロニクルシリーズの一つの作品なだけ。

を思い出すことは罪じゃない。
要約すると「事件は家康の(さっぱり意味のわからない)遺志を受け継いだ犯人グループが起こしたものだった!」ということだ。納得しろ。
そして181~191ページでハウステンボス雑学と00年下半期のニュースダイジェストが羅列され、201ページでトップランシリーズは大団円を迎える。
この際オチも言ってしまうと「実は婆さんだった爺さんの自殺をみんなでワイワイ見守りました!」である。本当なんだ。信じろ。
MC口調でサラッと語らないことには精神の均衡を保つことが難しいこのシリーズ。「ダメミス」とか「駄作」とかそういうレベルじゃないので、くれぐれもカタギの人は手を出さないように。これ以上の犠牲者を出さないためにオチまで書いたんだからな!


11.3.25
評価:問題外
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ダメミス感想-『トップラン 5 最終話に専念』清涼院流水

2011年03月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
水面下での駆け引きが次々と暴かれ、嘘つき勝負「一巻の終わりクイズ」は意外な終幕を迎えた。「よろず鑑定師」貴船天使は夜闇に姿を消し、謎の女・孤森ヒカルの影が見え隠れする。トップラン・テストの「M資金」「Y3K―西暦3000年の問題」とはなにか?残すは最終話のみ。20世紀にとどめを刺す書き下ろし文庫シリーズ第5話。


~感想~
・・・チガウ・・・今までの男とはなにかが決定的に違う。スピリチュアルな感覚がアタシのカラダを駆け巡った・・。「・・(カッコイイ・・!!・・これって運命・・?)」


41ページまで続く前巻のあらすじ、全体の3分の1を占める2000年3月~5月の重大ニュースの羅列を除くと、内容は↑のコピペだけになってしまう。
さすがに5冊目ともなると、この本はどうやら段落の一行目と最後の行を読めば流れがわかると気づくので、飛躍的に読書スピードが上がることだろう。
いやマジでそのくらい読み飛ばしても大丈夫なんだ本当に。


11.3.25
評価:保留
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ダメミス感想-『トップラン 4 クイズ大逆転』清涼院流水

2011年03月25日 | ミステリ感想
~あらすじ~
トップラン・テストに関するすべての秘密が解き明かされる時が来た。「よろず鑑定師」貴船天使の紹介で、音羽恋子たち関係者一同は「少年狼」と衝撃的に出会う。時間と大金を賭けた嘘つき勝負「一巻の終わりクイズ」をめぐり、虚々実々のかけひきが繰り広げられる。舞台は整い、役者は揃った。盛り上がり最高潮の書き下ろし文庫シリーズ第4話。


~感想~
Oh!My God Honey(おまいが犯人!)
※本文より抜粋

今はなき某サイトで「こんなにつまらない本はトップラン3巻以来だ」と言われていた通りの惨状である。
この巻から登場する少年狼(人名)のキャラが凄まじいので彼のセリフを引用してみよう。

YO! 天使クン、今日何曜?……金曜? で、オレになんの用?

不思議なことにここまで読むと本が真っ二つになってしまうので、非常に読みづらいのだが、ラップ調のセリフは4ページほどで終わり、以降は普通にしゃべり出すのでめげずに進んでほしい。
ストーリー的には、貴船天使が「企業スパイ」という裏の顔を現すのだが、何億もの金を動かす一方で、「PS2を転売して儲ける」というちょっとした小遣いにしかならない副業を嬉々として明かし「ドラクエⅡも転売して儲けたし」と自慢するので小物臭がどんどん増していく。
また「一巻の終わりクイズ」で恋子たちと対決するものの、ルールが21個もあるくせして要するにカミングダウトだったりするのはいつもの流水クオリティなので問題ないだろう。


11.3.25
評価:保留
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ダメミス感想-『黙過の代償』森山赳志

2011年03月22日 | ミステリ感想
~あらすじ~
大学生の秋月昌平は墓参りに行った霊園で、瀕死の男に遭遇。その男は片言の日本語で「コレをダイトウリョウに渡してほしい」と言い残して昌平に鍵を託す。日本と韓国の間に渦巻く陰謀に巻き込まれた昌平の身にふりかかる危機! 本作で第33回メフィスト賞を受賞、韓国翻訳版も同時刊行した新進気鋭の作家がおくる国際派ハードボイルドサスペンス決定版。
※コピペ


~感想~
「ブォーーーー、ブォーーーー!」※本文より抜粋(クラクションの音)

あまりにダメすぎて読むのに二週間かかってしまった代物。
なにがダメかと問われれば「なにもかも」と答えるしか無いのだが、それでも細かく挙げていくと、

1.文章
↑に引用した文学史上初かもしれない、クラクションの音を会話文で表現した手法を筆頭に、とにかく文章が酷い。
登場人物が無駄に多いが描き分けは全くできておらず、さらに同じ人物でも場面によって、蔡、蔡(チェ)、チェ、とおそらく視点人物によって呼び名が変わり、しかもチェという名前の別人までいる(とどめにもう一人のチェは偽名であり本名まで出てきやがる)ため、誰が誰やら最後まで把握できなかった。

2.ストーリー
ストーリー展開も絶望的で、「大統領にこれを渡してくれ」と鍵を託された主人公が、どうやって大統領に接触するか――に頭を悩ませる前に、本屋で前から欲しかった本を物色し、公園の芝生の上で嫌なことを忘れて読書をエンジョイし、そのエピソードが物語に一切関わってこないとか、手掛かりを求めてとった行動が「その辺のバーに飛び込んでヤクザが出てくるまで用心棒をボコる」だったり、そのヤクザは主人公を保護してくれるのだが、その方法が若い義妹の家に二人きりで預けるだったり、主人公はまだ大学生で得意のテコンドーも修行中のはずなのに、ヤクザも警官も用心棒も秒殺の暴れっぷりで、そのくせラストで重要人物たち(9割殺し屋)が一堂に会し、一触即発の空気が流れたが事態を収束させたのはテコンドー無双ではなく、偉い人が出てきて怒るだったりと、もはやストーリーが破綻しているとかそういう問題ではない。

3.韓国マンセー
本書は恐ろしいことに日韓同時発売をしたのだが、あまりに韓国寄りな描写が目に余る。
本編に入る前の前文からして、韓国の国定教科書からの引用だし、韓国人のヒロインは太平洋戦争の際の日本軍によるアジア侵略を定型的に罵るのだが、それに対して日本人の主人公は普通に納得しちゃったりと、終始「うわぁ……うわぁ……」とつぶやきっぱなしであった。
また、中盤から日韓問題を絡めたそれなりに興味深い真相が明らかになるのだが、それも最終的には投げっぱなしにされ、問題提起されただけで置き去りなのも悲しい。

4.痛い
ご覧の有様なのに作者は、

社会性と娯楽性、この二つが両立した小説が好きでした。殘念ながら、こういった描き手はそう多くはないようです。だったら自分が読みたいものを妥協せずに描いてみようと。そうやって苦しみ拔いて、この小説はできあがりました。みなさんの厳しい目で、志の高さ、を確かめてください。

と、お前は清涼院流水かと思うくらいの強気っぷりである。ついでに新刊の帯には、

すべての謎、登場人物の葛藤などがひとつの事柄へ集約していくよう、ミステリの仕掛けを施してあり、クライマックスにそれらを踏まえたサスペンスも用意しています。この手の小説は嫌いだ、という方も、プロローグの一行だけでも読んでみてください。そこからすでに謎(トリック)ははじまっています。

と書かれているのだが、そのプロローグの一行目といえば、

まったくなんてことをするんだ。

だったりするのだからある意味本当にすごい。
切りがないのでこのくらいにしておくが、作者の新作は全く出ていないこと、本書はメフィスト賞史上最低の誉れ高いことを付記しておく。


11.3.21
評価:問題外
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ダメミス感想-『届かぬ想い』蘇部健一

2011年03月21日 | ミステリ感想
~あらすじ~
小説家を夢見る小早川嗣利(こばやかわつぐとし)は、美しい妻と可愛い娘に囲まれ幸せに暮らしていた。
だが、ある日娘が誘拐され行方不明となる。やがて生まれた二人目の娘も不治の病に……。
重なる悲劇に意気消沈する嗣利は、幸せな家庭を取り戻せる方法があると知る。愛する娘のため、嗣利は遠い世界へと旅立つが……。


~感想~
あの蘇部健一が真面目に描いちゃった、という時点で爆死は決定しているのだが、良くも悪くも予想通りの出来にしあがっている。
最近の「六とん」でくり返し使われているアレを主軸に据え、「六とん」の数々の短編ですげー見覚えのある展開をふんだんにまぶして、強引に長編に引き伸ばしたような印象。
文章はいまさら言うまでもなく全力でダメ。しかし潔いほどに一直線にストーリーだけを追う展開は、40分足らずで読めてしまうリーダビリティを備えた。
人道的な意味でやっちゃいけない最悪のオチ、40分で一気読みすれば気づけないトリック、このジャンルならばたいていの物は楽しめてしまう性質のせいか、僕は意外にも面白く読めてしまった。
とはいえこれは特殊なケースだと思われるので、一般的な読者は手出し無用。「蘇部健一の描く純愛(?)物語」という特異すぎるジャンルに興味のある方だけどうぞ。


11.3.21
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『月の裏側』恩田陸

2011年03月16日 | ミステリ感想
~あらすじ~
九州の水郷都市・箭納倉(やなくら)。ここで三件の失踪事件が相次いだ。
消えたのはいずれも掘割に面した日本家屋に住む老女だったが、じきに記憶を喪失したまま戻ってきた。
何者かによる誘拐か、新興宗教による洗脳か、それとも?
事件に興味を持った塚崎多聞らは〈人間もどき〉の存在に気づき……。
00年このミス11位。


~感想~
恩田陸といえば何度も書くが、風呂敷を広げる上手さと、広げた風呂敷をたたまないことに定評があるのだが、今回もまさにまさにの恩田節。
真相を投げっぱなしにした作品はままあるが、この作品はすっぽ抜けの投げっぱなしジャーマンといった雰囲気で、技への入り方、相手を固めるクラッチ、美しく弧を描くブリッジ……と完璧に決まっていながら、ただ結末という相手だけが置き去りで、単に美しく脳天から自爆しただけの作品である。
本当に中盤までは面白い。この未曽有の天災に見舞われた現状で「水」を題材にしたホラーに出会ったという、奇異なめぐり会わせと相まって、ふくらみにふくらんだ物語と、傑作への予感が、残りページ数が少なくなるごとに一気にしぼんでいく。恩田陸と浦沢直樹は3/4までが面白いのは承知していたが、それでもこちらの想定以上に何も起きない結末にはあ然とした。
なぜかこのミス11位にランクインしているのだが、「木製の王子」や「火蛾」より上位という以前にミステリーでもなんでもない、結末すらつかないホラーなので取り扱いに要注意。
でも、3/4までは傑作ですよ。


11.3.15
評価:★★ 4
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ミステリ感想-『象牙色の眠り』柴田よしき

2011年03月07日 | ミステリ感想
~あらすじ~
富豪の家族を襲った殺人事件。屋敷に住むのは美しい未亡人とその私生児、前妻の生んだ長男と長女。
家政婦の瑞恵がみる限り、邸内には家族の絆も存在しないが、恐ろしい殺され方をするような現実的な人間もいない。
はたして誰がなぜ、なんのために?
00年このミス16位。


~感想~
著作はあまり読んでいないが、作者にしては珍しくキャラクター性を排し心理と推理だけで組み立てた作品だとか。
いくつか読んだ短編でも見せていた、本格ミステリの肝を心得た展開がうまく、ドロドロした一族の関係や、謎めいた美少年、続発する怪死などまさに王道。
それだけに事件全体の印象は薄くなりがちなのだが、タイトル「象牙色の眠り」の意味が二転三転し、結末につながっていく構成が光り、心に残る作品となった。
王道を往くわりに地味な物語を、展開と構成の巧さで佳作へと引き上げた、作者の技量がものを言った作品であろう。


11.3.3
評価:★★☆ 5
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ダメミス感想-『殺人ピエロの孤島同窓会』水田美意子

2011年03月05日 | ミステリ感想
~あらすじ~
日本から1500キロ離れた、東硫黄島。島の外輪火山が噴火し、住民は東京に強制移住させられ、現在は、観測所を守っている老人が1人住むだけの孤島である。そんな島で同窓会が開かれることになり、4年ぶりに東硫黄高校同窓生が集まった。出席者はクラスメイト36人中、不登校だった1人を除いた35人。和やかムードで進んでいた同窓会は、突如現れた殺人ピエロにより恐怖の孤島と化す。次々と同窓生たちを惨殺し始める殺人ピエロの正体は?
06年『このミステリーがすごい!』大賞特別奨励賞受賞作。
※コピペ


~感想~
「作者は娘でもおかしくない年齢」という戦慄すべき事実を前にしては、何を書いても大人げないことにしかならないので、どうしても矛先はこんなものを出版させてしまった大人たちに向けられてしまう。
選評を見ると「12歳だから」という理由だけで出版させたのは明らかで、内容は二の次である。若ければデビューできるなら世の親御さんは幼稚園児の子供にどんどんミステリ書かせれば印税でウハウハできていいと思うよ。
それでもどうにかしてむりやり褒めるとすれば、12歳で内容はどうあれ、これだけの量の文章を書けるのは素直にすごいとは思う。内容はどうあれ。大事なことなので二回言いました。
山田悠介師匠(奥義的な意味で)の奇書『リアル鬼ごっこ』でさえ、文庫化に当たってはそれなりの文章にしてしまう編集の手がどれだけ入っているか解らないので、いったいどの程度まで校正されているのかは不明だが、ところどころ語彙の少なさから来る幼稚きわまりない言葉の選び方は目につくものの、何を言っているのか理解できるという点では山田師匠よりはるかに日本語はまとも。
しかし小学生にまっとうなミステリを期待するほうがそもそも間違いであり、美意子たんなりにキャラを描き分けて、編集側のアドバイスで付け加えたんだと思いたい、大きなお友達が喜びそうなエッチい描写もがんばって、読者の120%が気づくだろうから遠慮なくネタバレするけど、ピエロの正体が野比じゃなかったりするが、正直そんなことは心底どうでもよく、読んでいる間ずっと早く話が終わることだけを願い続けていた。何かの拷問だろうかこれは。
なにはともあれ12歳の女の子の将来をねじ曲げてしまったのだから、推薦した大森望を始めとする大人たちは、責任持って育ててくれることを祈るばかりだ、と良識ぶったことを書いて締めとしてみる。


11.3.4
評価:問題外
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ミステリ感想-『デッド・ロブスター』霞流一

2011年03月03日 | ミステリ感想
~あらすじ~
劇団「建光新団」宛に送られてきた恵比寿様の像。送り主は2週間前に溺死した俳優だった。
劇団内に不穏な空気が流れる中、起こってしまった殺人事件。現場には足跡がなく、死体は逆エビ固めをかけられたがごとく、背骨がへし折れていた。
さらに続発する不可能殺人を、迷探偵・紅門福助は切り崩せるか。


~感想~
「霞お兄さんの死体ゴラスイッチ」……もとい殺人トリックを、何度となくゲーム「刻命館」に例えてきたが、今回はむしろ刻命館を意識したような雰囲気すら漂う。
よくもまあこんなトンデモな仕掛けを思いつくと感心するしかない奇想天外な物理トリックはあいかわらず。一方で推理は、消去法を用いた論理的なものなのだが、事件の裏に潜むある秘密を探偵が知ったとたん、その秘密から解けるのは一つの事件だけのはずなのに、解決パートになだれ込んで、他の事件まで一気呵成に解決してしまうという無理やりさに吹いた。
たいして多くない分量なのに、エビ雑学やギャグの応酬(というかダジャレだらけの茶々入れ)をふんだんに盛りこむから、ページ数が足りなくなったのではと思えてしまう。
そういえば「生き物雑学」「必要以上に多いギャグ」「物理トリック」と、汀こるもの大明神と霞流一は共通点が多いな……。


11.2.27
評価:★★★ 6
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