小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『鈍い球音』天藤真

2011年01月29日 | ミステリ感想
~あらすじ~
日本シリーズを目前に控えた監督が、東京タワーで不可解な失踪を遂げた。
にわかに白熱化する日本シリーズの真っただ中、今度は代理監督が蒸発してしまった。
事件の陰に潜む黒い陰謀を暴こうと、新聞記者や監督の娘・比奈子が奔走するが……。


~感想~
創元推理文庫版の解説では倉知淳が古びない名作だと賞賛しているが、さすがに古い。
野球の試合経過ひとつ、継投ひとつ取っても現代からは考えられないものであり、フェミニストや女性読者が眉をひそめそうなほど女性描写もまた古い。
天藤ミステリらしい軽妙さもいまいちで、巨悪が裏に潜む陰謀譚もあまりに事が都合よく動きすぎで物足りない。
驚異的な高打率を誇る天藤作品としてはいまひとつ、といったところ。


11.1.29
評価:★★☆ 5
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映画感想―『ミラーズ2』

2011年01月26日 | 映画感想
~あらすじ~
父親の勧めでビルの夜間警備員として働くことになったマックス。ある夜、彼は勤務先で鏡に映る不気味な少女を目撃する。
以降、そのビルで働く社員が惨殺される事件が立て続けに発生。自分の家族に危険が迫っていることを知った彼は、謎の解明に奔走し、ビル設立の背後に隠された恐ろしい真実を知ることに……。

~感想~
前作はジャック・バウアー VS 悪魔というバカ要素と、必要以上にグロい描写で個性を出していたが、第二弾となる今作は起承転結をしっかりと付けたせいで、逆に個性のない映画になってしまった。
グロ描写だけは健在だが、ハリウッドホラーらしからぬ、原因があって結果があるきちんとした流れが、観終わってなんの印象も残さないのはネック。
どんでん返しのない韓流ホラーでも観ているような気分で、感想を書くことすら難しい。ハリウッドホラーがアジアに追いつくのはまだまだ先のことだろう。


評価:★★ 4
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映画感想―『プレデターズ』

2011年01月25日 | 映画感想


~あらすじ~
それぞれ異なる戦術を兼ね備えた戦闘のエリートたちが、どこともわからぬジャングルに“気がつけば落下していた”。
その顔ぶれは傭兵、死刑囚、特殊工作員とさまざまだが、なぜ今ここに自分がいるのかを理解できない。
実は彼らは、プレデターの獲物として集められたのだった……。


~感想~
アクション、SF、サバイバル、ホラーとあらゆる要素が詰め込まれた第一作と比ぶべくもないほど脚本は破綻しているが、『プレデター3』と冠さなかった英断、あるいは配慮を評価して、『プレデター外伝』として見るなら許せるレベルの映画ではある。
登場人物たちは特殊部隊、暗殺者、傭兵、囚人、医者、ヤクザと様々な肩書きを持ちながら、個性は持っている武器の種類くらいしかないほどキャラ付けが弱いため、誰がやられてもモブキャラが死んだ程度の印象しか受けない。
チームワークは皆無でなにかと衝突しているのに、突然ヤクザの人が「ここは俺に任せて先に行け」と犠牲精神を出すのはもしかして「日本人だから」という理由で片付けられてはいないだろうか。(どうでもいいがこいつの斬りかかる時の掛け声はおかしすぎる)
対するプレデターもいちおう4種類いて、それぞれ違う特色を持っているのだが、外見がほとんど変わらないため区別が付かないのも痛い。というか犬使いはどうして一度しか犬を使わなかったんだろうか。鳥使いもせっかくの鳥を戦いに使わないし。
と、キャラ設定だけに限っても細かい瑕疵をあげれば切りが無いが、激しいアクションとテンポの良さだけは評価できるため、プレデターシリーズだと変に気構えなければ、いちおう楽しめることだろう。

ちなみに予告編では12人以上のプレデターが登場することを示唆するシーンが流れていたが、どうも予告編制作会社の方で勝手に映像をいじったようである。予告編詐欺ってレベルじゃねーぞ!


評価:★★☆ 5
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映画感想―『特攻野郎AチームTHE MOVIE』

2011年01月24日 | 映画感想


~あらすじ~
1年前――特殊部隊のメンバーから結成されたAチームの面々が、何者かの謀略により無実の罪で逮捕された。
しかしリーダーのハンニバルは、まんまと刑務所からの脱獄し、部下のフェイス、B.A.、マードックと合流する。
かくして復活したAチームは、ハンニバルが編み出す荒唐無稽な作戦のもと、自分たちの名誉を汚した黒幕に迫っていく。


~感想~
原作ドラマは未見だが、噂通りに想像通りの徹頭徹尾アメリカンな展開におなかいっぱい。
アメリカンな野郎どもがアメリカンな会話を交わし、アメリカンな事件をアメリカンな腕力で解決する、むせ返るほどの漢のアクション。こうでなくては!
もう本当に他に何一つ言うべきことのない映画なので、アメリカンLOVEな向きは迷わず観ていただきたい。
それにしてもクイントン・ランペイジ・ジャクソンはいい役者だなあ。


評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『琅邪の虎』丸山天寿

2011年01月23日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「虎が人の姿をして災いを振りまく」琅邪で奇妙な事件が続発する。
「神木の下の連続殺人」「暗躍する謎の集団」「人間の足が生えた虎」「始皇帝の観光台崩壊」すべては虎を遣わした古代王の祟りか?
恐怖に陥る人々を救うため、求盗の希仁や徐福の塾の面々が、異能を駆使して真相に迫る。


~感想~
デビュー作『琅邪の鬼』では歴史小説の体裁をとりながら、大小さまざまな事件を一本の真相でつなぎ、武侠小説さながらのバトルで締めるという、新人離れした技量を見せてくれたシリーズ、待望の第二弾。
今回もやり過ぎ感すらただよう謎の数々あり、異能集団の活躍あり、痛快なバトルありと前作と同じことをやっていながら、しかし雑然としすぎた印象も。
たった一つの真相から全ての謎がつながっていくのだが、どうにもツギハギだらけの様相で、個々の謎が無理くり連結されたように見えてしまう。
しかし本格ミステリとして見れば強引でも、本来これは武侠ミステリとでも呼ぶべき娯楽作品なのだから、細かいところに目くじら立てるのは無粋というもの。
他に類を見ない面白いジャンルだけに、今後も末永く続いて欲しいものだ。


11.1.21
評価:★★★ 6
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時代小説感想-『堪忍箱』宮部みゆき

2011年01月22日 | ミステリ感想
~あらすじ~
蓋を開けたら最後、この近江屋に災いが降りかかる……。
決して中を見てはいけないというその黒い文箱が、しだいに人々の心をざわめかせ、呑み込んでいく表題作。
なさぬ仲の親と子が互いに秘密を抱えながらも、寄り添い、いたわり合う「お墓の下まで」。など時代小説八篇。


~感想~
宮部みゆきの時代小説は好物なのだが、それにしてもオチが付かなすぎではなかろうか。
時代小説なのだからオチは不可欠というわけではないが、尻切れとんぼな話が多すぎる。
そうなると怪談、ミステリ取り混ぜた内容も雑多な印象を受けてしまう。
結果ではなく過程を楽しむことのできない僕は悪い読者である、ということで一つ。


11.1.20
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『黄金色の祈り』西澤保彦

2011年01月16日 | ミステリ感想
~あらすじ~
他人の目を気にし、人をうらやみ、成功することばかり考えている「僕」は、高校卒業後、アメリカの大学に留学するが、いつしか社会から脱落していく。
しかし一発逆転を狙ってついに小説家デビュー。かつての級友の死を題材に小説を発表するが……。


~感想~
語り手と作者の略歴が大きく重なり、私小説の面も合わせ持つ異色作。
なぜか本ミス8位にランクインしたが、謎もトリックも真相もたいしたものではなく、読みどころは私小説としての面に限る。しかし西澤保彦らしいひねくれた視点の青春小説として、それだけでも充分楽しめるだろう。

だがSFミステリでの華々しい活躍から一変し、近年はウザイだけのジェンダー論を振り回す作家に成り下がってしまった氏の、転落への萌芽とも言うべきものが散見されるのは悲しい限り。
綾辻行人「暗黒館の殺人」ばりに言うなら、ジェンダー論、百合成分、誰得の自己主張と「ここに全てがあった」のだ。
西澤保彦転落への分水嶺となった作品なのかも知れない。


11.1.16
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『黒き舞楽』泡坂妻夫

2011年01月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
一刀彫りの郷土人形を作る旧家に嫁いだ女性が次々に不審な死を遂げる。
最初の妻は交通事故に遭って家に戻ったその晩に、二番目の妻は心臓発作で急死。どちらも夫は不在だったという。
その家には江戸時代から伝わる美しい浄瑠璃人形があり、それにはただならぬ因縁が絡んでいて……。


~感想~
それこそ泡坂妻夫か連城三紀彦ででもなければ、誰が書いてもバカミスに転げ落ちるだけの物語だが、そこはミステリ界最高峰の筆力を持つ泡坂妻夫。バカミス同然のアイデアを卓越した筆致で格調高くまとめ上げ、異形の恋愛譚に昇華してみせた。
はっきりしたことは何一つ書いていないのに、濃厚に漂うエロティシズム(この単語生まれて初めて使ったわ)と、人形遣いの歴史に怪談さながらの江戸時代の因縁譚を絡め、中編程度の分量で描ききる手腕はさすがのもの。
一言で言えば(超ネタバレ→)夫がマグロ専の絶倫でした というだけの物語が文学作品になってしまうのだから恐れ入る。
これのどこがこのミス12位なのかはよくわからないが、1アイデアを豪腕でミステリと純文学の融合品に仕立て上げた異色作として、味わってみるのも悪くない。


11.1.13
評価:★★☆ 5
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映画感想―『SAW 6』

2011年01月12日 | 映画感想


~あらすじ~
前作ネタバレ防止のため無し。


~感想~
名物のどんでん返しと叙述トリックの扱いが、シリーズを追うごとにぞんざいになっていて、今回などはストーリーと密接に絡まず、観客をちょっと驚かせてみようかくらいの意図しか感じられないが、それでもなにかしら仕掛けてくれるのはうれしい限り。いちおう驚いたし。
一方でグロ描写は激しさを増していて、しかもCG技術が向上しているものだから、苦手な人なら吐き気を催しかねないほどのレベルに達している。
また今回のジグソウによるゲームはシリーズでも上位に入るドSっぷりで、それも好きな向きにはたまらない。私情が絡むとジグソウも人が変わるのか。
破格の第一弾と比較してはどうしても質は落ちるものの、一定の質を保ったシリーズはいよいよ次で最終作。最後はどうなるものか。


評価:★★☆ 5
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映画感想―『エアベンダー』

2011年01月11日 | 映画感想


~あらすじ~
気・水・土・火の4つの王国が支配する世界。各王国にはその国の「エレメント」を操る「ベンダー」と呼ばれる者がいた。
その中でも、4つの「エレメント」すべてを操る「アバター」は、世界に調和をもたらす唯一の選ばれた者だった。
だが、「アバター」として生まれた気の国の少年アンは、自分の重い宿命に耐えられずに逃げ出して氷の中に閉じ込められてしまう。
そして100年後、水の国の兄妹サカとカタラは氷の中で眠るアンを発見。眠りから目覚めたアンは気の国が火の国に滅ぼされたことを知り、今度こそ「アバター」の宿命を受け入れ、試練に立ち向かう決意をする……。


~感想~
誰だよシャマランにファンタジィ撮らせようと思ったバカは。

「シックスセンス」の大ヒット後、新作を出すごとに監督生命の危機にさらされているM・ナイト・シャマランによる、まさかのアニメ実写化は、危惧通りの大惨敗であった。
というかシャマランにはもう普通に脚本を書く力が残っていないらしい。かの「トランスフォーマー」や「D-WARS」に匹敵する無数のツッコミどころが画面狭しと暴れ回る始末で、しかも「トランスフォーマー」のような激しいアクションは描けず、自主制作映画のように酷い脚本の「D-WARS」よりは出来がいいという半端な仕上がりで、笑うことすらできないため、見どころが全然ない。
脚本の酷さの一例を挙げると、

・土のベンダーが7人がかりで手の平サイズの石を一個投げつける。(7人で7個手で投げたほうが強くね?)

・火のベンダーが自身の過去の逸話をそのへんのガキをつかまえて語らせる。

・水の国の王女と主人公グループの青年が恋に落ちる……ことがナレーションで語られる→次の場面ではもう水の国の人々に厚い信頼を受けている→しかも王女と結婚寸前にまで話が進んでいる。

・「アバターは誰も傷つけてはならない」という師の言葉を回想しながら次々と敵を吹っ飛ばしたり凍らせるアバター。

・味方の精霊が殺されるところを至近距離でぼーっと眺めている屈強のベンダーたち。

・その精霊を殺した悪の幹部が一般兵4人にボコられて死ぬ。

・精霊が復活し力を取り戻した兵士が真っ先に行ったのがタックルからのマウントパンチ

・新たなる敵幹部が登場したと同時に閉幕する打ち切りマンガみたいなラスト。

「二桁以上のIQを持つ人にはお勧めできない」とまで言われたこの映画。正直、続編が作られることはないと思うのだがどうか。


評価:★ 2
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