小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『退職刑事2』都筑道夫

2003年11月28日 | ミステリ感想
~収録作品~
遺書の意匠
遅れてきた犯人
銀の爪きり鋏
四十分間の女
浴槽の花嫁
真冬のビキニ
扉のない密室


~感想~
前作よりは落ちるが、読めば読むほど味の出る逸品ぞろい。


03.11.28
評価:★★☆ 5
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非ミステリ感想-『四季・夏』森博嗣

2003年11月25日 | ミステリ感想
~あらすじ~
米国から帰国した真賀田四季は13歳。
すでに、人類の中で最も神に近い天才として世に知られていた。
叔父、新藤清二と行った閉園間近の遊園地で、四季は何者かに誘拐される。
瀬在丸紅子との再会。そして妃真加島の研究所で起こったことの真相とは?


~感想~
非ミステリ。森文学というより「四季の初恋物語」いやさ「四季のひとなつの経験」といったところ。
だからなんなんだ。正直言って呆れた。前作にはまだトリックに工夫があったが、これはなんなんだ。
ここにはなにもない。こんなものに森ミステリィと冠して、一段組の薄さで売りだ(以下自粛)


03.11.25
評価:問題外
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ミステリ感想-『四季・春』森博嗣

2003年11月22日 | ミステリ感想
~あらすじ~
天才科学者、真賀田四季の少女時代。
叔父、新藤清二の病院で密室殺人が起こる。唯一の目撃者は透明人間?
すべてを一瞬にして理解し、把握し、思考する才能に群がる多くの人々。
それらをはるかに超越して、四季は駆け抜けていく。


~感想~
非ミステリ。森博嗣版「百鬼夜行-陰」といったところ。
なにが“密室”やねん。こんなの、ただ客寄せのために“密室”と冠されただけのこと。
メイントリックはまだマシだが、分量といい、納得がいかない。

※この四季シリーズはあっちこっちでネタバレしまくっているので、S&MおよびVHシリーズ全20作を読んでいない方は絶対に手を出してはいけません。


03.11.22
評価:★ 2
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ミステリ感想-『花の下にて春死なむ』北森鴻

2003年11月21日 | ミステリ感想
~収録作品~
花の下にて春死なむ
家族写真
終の棲み家
殺人者の赤い手
七皿は多すぎる
魚の交わり


日本推理作家協会賞(連作短編)
日本推理作家協会賞 候補 ――花の下にて春死なむ(短編)


~感想~
日本推理作家協会賞受賞作。連作短編集。
連作の成功の鍵は「着地がうまくできるか否か」それだけにかかっている。
その点、この作品は完璧。鮮やかなトリックと見事な伏線が実に利いている。
筆力の低さ(低いと思うぞ)に見合わぬ文学味に鼻白むが(P253 5行目とか)、その文学味を吹き飛ばす、ぶっとんだ論理の飛躍が面白い。


03.11.21
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『退職刑事』都筑道夫

2003年11月18日 | ミステリ感想
~収録作品~
かつては硬骨の刑事、退職したいまは恍惚の境に入りかけた父親に、
現職刑事の息子が捜査中の事件を語ると、父親はたちまち真相を引き出す。
国産「安楽椅子探偵小説」の定番ここにあり!

写真うつりのよい女
妻妾同居
狂い小町
ジャケット背広スーツ
昨日の敵
理想的犯人像
壜づめの密室

本格ミステリ・ベスト100 37位
日本推理作家協会賞 候補 ――壜づめの密室


~感想~
豊富な、そしてさりげない伏線。突飛な発想。鋭い逆転。これぞ安楽椅子探偵 『写真うつりのよい女』
ものすごい論理の逆転 『妻妾同居』・『狂い小町』
推理が推理を呼び、混迷の果てにたどりつく、あまりにもあからさまな伏線 『昨日の敵』

とにかく親父の推理力がすごすぎる。ここまで細部まで推理してしまう安楽椅子探偵はいないのでは。
飛躍した論理と鋭すぎる推理の競演は、素直に楽しい。
色あせない珠玉の名品。


03.11.18
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『ダブルダウン勘繰郎』西尾維新

2003年11月15日 | ミステリ感想
~あらすじ~
京都、河原町御池交差点。
蘿蔔むつみはそびえ立つJDC(日本探偵倶楽部)ビルを
双眼鏡で一心不乱にみつめる奇妙な少年虚野勘繰郎とめぐりあう。
その瞬間から、過去66人の命を奪った『連続名探偵殺戮事件』が
再起動するとも知らずに……。


~感想~
JDCトリビュート作品。
維新にしてはハズレ。値段相応とは言いがたいが、短いなりの質は保った。
謎はなく、トリックはそこそこ。JDCである意味はあったのだろうか? ハズしてもまあこの水準。それなりに。


03.11.15
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『続・垂里冴子のお見合いと推理』山口雅也

2003年11月11日 | ミステリ感想
~収録作品~
湯煙のごとき事件
薫は香を以て
動く七福神
靴男と象の靴


~感想~
暴言吐きます。
えっと……こんなに寒かったっけ? ギャグの数々に「無理してる感」がただよい、鳥肌が立つこともたびたび。
会話や比喩が面白かった覚えの濃い前作を怖くて読み返せなくなるほど、寒い。
作品自体も専門知識のオンパレードなどアンフェアに過ぎ、楽しめなかった。


03.11.11
評価:★ 2
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ミステリ感想-『麿の酩酊事件簿 花に舞』高田崇史

2003年11月09日 | ミステリ感想
~収録作品~
勧修寺家“婚姻家訓”「見合い厳禁。手助け無用。独力発掘。自力本願……」
勧修寺家の跡取り息子・文麿、31歳独身。
家訓にかなう素敵な女性を探すも、いつも最後のところで空回り。
酔えば酔うほど名推理を発揮し、悩める美女を救うが、彼の願いは遠ざかり……。

ショパンの調べに
待宵草は揺れて
夜明けのブルー・マンデーを
プール・バーで貴女と


~感想~
『ショパンの調べに』
専門知識の総動員も、ここまでやればまあ許容範囲。

『待宵草は揺れて』
専門知識の総動員。ただそれだけ。ひねりなし。

『夜明けのブルー・マンデーを』
専門知識(以下同文)。しかもこれはどう考えても西澤保彦の某長編(見当の付いた方だけネタバレ→)『実況中死』 のパクりのような。

『プール・バーで貴女と』
専(以下同文)特にあんまりだと思う。なんせ「(中略)なんていうことを知っていたのは、おそらく何人もいなかったでしょう」と文中で開き直っている。はいそのとおりです。


~総括~
解るかンなモン!と叫びたくなるようなトリックばっかし。描写はマンガ的というよりエセ台本。無理に面白おかしく書こうとしているのが悲しい。歯の浮くセリフにちんけなトリック。千波くんシリーズの軽妙さはどこへ行った。


03.11.9
評価:☆ 1
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ミステリ感想-『スイス時計の謎』有栖川有栖

2003年11月07日 | ミステリ感想
~収録作品~
あるYの悲劇
女彫刻家の首
シャイロックの密室
スイス時計の謎


~感想~
『あるYの悲劇』
こういったトリックをメインに据えるのはどうかと思うが、アリス作品としては近年まれに見る完成度の高さ。余分すぎる文学味さえとっぱらい、トリック主体で行けばまだまだやれるはずなのに。
……でも、文学味のない、論理に磨きをかけたアリスって、つまり法月じゃん。

『女彫刻家の首』
古くさいトリックだなあ。ひねりもなにもない、当たり前の切断の理由。新味がなさすぎる。

『シャイロックの密室』
倒叙形式にしておいて、このトリックはないだろう。

『スイス時計の謎』
ド真ん中というか、手抜き。200枚もかけて書くようなトリックか? これ。
え? これで答えなの? どんでん返しは? 奇抜な着眼点は? 肩すかしというか腰くだけ。


~総括~
どれもこれもせめて30ページの短編なら、印象も変わったろうにという内容の薄さ。


03.11.7
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『黒いトランク』鮎川哲也

2003年11月04日 | ミステリ感想
~あらすじ~
一九四九年十二月十日、東京・汐留駅に届いた大型トランクのなかから、男の腐乱死体が転がり落ちた。
容疑は当然、九州からトランクを発送した近松千鶴夫にかかったが彼もまた、瀬戸内海上に漂う死体として発見される。
最高傑作の呼び声高い作品を、初刊当時の形で文庫化、トリック詳解を付す。

日本推理作家協会賞 候補


~感想~
マニアを自認していればいるほど評価しづらい一品。
絶賛するのも面はゆく、けなすには余りにも精緻にすぎる。
あちこちで「ミステリ史上最高傑作」と呼ばれるのも納得の、とにかく堅牢な完全無欠のプロット。
しかし……これがとにかく地味。昨今の刺激に満ちたミステリに慣れきった身には、いささか退屈。
読むのならばじっくりと腰を据え、手帳の一つも用意して鬼貫とともに苦吟すべし。


03.11.4
評価:★★☆ 5
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