小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『きみとぼくの壊れた世界』西尾維新

2004年02月29日 | ミステリ感想
~あらすじ~
禁じられた一線を現在進行形で踏み越えつつある兄妹とその友人たち。
彼らの世界は学園内で起こった密室殺人事件によって決定的に壊れていく……。
保健室のひきこもり、病院坂黒猫が指し示す、壊れた事件の真実とは?


~感想~
維新節は戯言シリーズよりは笑い不足も、全開。
あまりにも情報量の少ない事件模様は意外にして異例。
しかしいざ真相が明かされてみると……。謎も手がかりも全て“もんだい編”にて勢ぞろい済み。
「こんなので解けるのか?」と終始疑問だったが、終わってみれば十分すぎるほど手がかりがあるわあるわ。
これは珍しい。終わらない物語は好きではないが、これはハナから終われない物語。続編もあるのだろうか?


04.2.29
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『四季・秋』森博嗣

2004年02月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
手がかりは孤島の研究所の事件ですでに提示されていた。
大学院生となった西之園萌絵と、恩師犀川創平は、真賀田四季が残したメッセージをついに読み解き、
未だ姿を消したままの彼女の真意を探ろうとする。


~感想~
前二作と比べれば、まだちょっとは森作品っぽい。ミステリらしさを出しているようで出していない。
『すべてがFになる』の時点でここまで考えていたとは思えない。
自分で書いてしまったもののつじつま合わせを楽しんでいるような印象。
それを読者も楽しめるかどうかは別問題なのだが。
犀川先生がひさびさのせいか、どこからしくない気も。(P201のくだりなど)
しかし、これだけ書いたら『四季・冬』ではなにを書くつもりなのか?


04.2.26
評価:★★ 4
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ミステリ感想-『有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー』有栖川有栖

2004年02月24日 | ミステリ感想
~収録作品~
埋もれた悪意  ――巽昌章
逃げる車  ――白峰良介
金色犬  ――つのだじろう
五十一番目の密室  ――ロバート・アーサー
〈引き立て役倶楽部〉の不快な事件  ――W・ハイデンフェルト
アローモント監獄の謎  ――ビル・プロンジーニ
生死線上  ――余心
水の柱  ――上田
「わたくし」は犯人……  ――海渡英祐
見えざる手によって  ――ジョン・スラデック


~感想~
『埋もれた悪意』
え? これで解けるの? と面食らった。意外性抜群のトリックは、伏線の山に支えられて冴えわたる。逸品。

『逃げる車』
え。これで……解けというの? と面食らった。シンプルすぎてあっけないが、装飾をとっぱらえば、どのミステリもこうなるのだろう。面白い。でも、「異様に論理的」というか「異様な論理的」でしたよね。

『金色犬』
なつかすぃ~。僕のミステリ初体験は、『迷路館の殺人』ではなくこれだったのかあ~。
あんまりなつかしすぎて、評価不能。いま見るともりだくさんの作品。

『五十一番目の密室』
「おお、これがそうなんだ」とマニアならしっぽを振る一編。ただ唸るばかり。

『〈引き立て役倶楽部〉の不快な事件』
「おお! これか! これがそうなのか!」とマニアならよだれを垂らす一編。
こんなによくできた話だとは思わなかった。『五十一番目』ともども、クイーンのルーブリックがすばらしい。
にしても……犯人のあの一言(ネタバレ→)「その前日の午後には(中略)きれいに見逃してしまうにちがいない」あはは。僕も見逃してた。 大好き。

『アローモント監獄の謎』
元祖バカミス? 史上まれに見る不可能トリックが……実際の情景を思い浮かべるだに爆笑の真相へとさま変わり。「本格って楽しい」

『生死線上』
すみません。読むの放棄しちゃいました。

『水の柱』
先にトリックを解説で見てもうた。しかし、トリックらしいトリックはあったろうか? 謎の設定がこうもあやあやでは。文章はえらく読みやすかったが。

『「わたくし」は犯人……』
うおお。「ただそれだけのトリック」見参。堅牢に見えてすっかすかの蟻塚細工。ひとしきり唸らせる傑作。

『見えざる手によって』
アメリカにも泡坂・天藤臭をただよわせる御仁がいた。トリックも鮮やか。不可能状況には心臓わしづかみ。北村氏も解らなくて安心した。


~総括~
アリス、向いてる。北村セレクションとは逆に、僕好みの良作がずらり。
どれもこれも本格の楽しさを改めて思い知らせてくれる。
アリス、新作とかもういいから、またこれやってくれよ。


04.2.24
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『銀座幽霊』大阪圭吉

2004年02月21日 | ミステリ感想
~収録作品~
三狂人
銀座幽霊
寒の夜晴れ
燈台鬼
動かぬ鯨群
花束の虫
闖入者
白妖
大百貨注文者
人間燈台
幽霊妻


~感想~
『三狂人』
評判ほどのキレは感じず。よく解らないのは、なぜ犯人はそうしなかったのか?

『銀座幽霊』
氏にしては珍しく、謎の設定が明白。トリックよりも真相は(ネタバレ→)本文二行目 にあったところに注目。

『寒の夜晴れ』
酷評されるような作品だろうか。足跡トリック・幻想・逆転・情景。すべてが秀逸。もっと長く書いて欲しかった気も。

『燈台鬼』
怪物の正体にあ然。『幽霊妻』と肩を並べる、口あんぐりの真相。

『動かぬ鯨群』
こういった舞台設定が類例を見ない。トリックも大胆。結末もいい。

『花束の虫』
これも真相に思わず目を疑う。やや謎が不明瞭なのが惜しい。

『闖入者』
お得意のトリック(トリック?) 読者としては不満足。

『白妖』
↑に準ずる。

『大百貨注文者』
まさかここでこれが飛び出すとは。天藤真ばりの(逆です)ユーモア味が巧い。これが真骨頂?

『人間燈台』
終わってみれば(ネタバレ→)そのまんまのタイトル 怪奇・空気・奇想・哀切――好きだなあ。

『幽霊妻』
近年では『葉桜の季節に君を想うということ』に匹敵するくらい驚いたトリックかも。
大乱歩の『赤い部屋』に通ずる(?)鮮烈さ。


~総括~
前作よりも印象の濃い、味わい深い佳編が集まった。氏の色とりどりの才能に酔いしれるべし。


04.2.21
評価:★★★☆ 7
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