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~あらすじ~
宮司百合子と善知鳥神は、藤衛との対決のため全ての始まりの地である大聖堂へ赴く。
かつて藤衛が不可能殺人を犯した地で、再び惨劇の幕が開く。
堂シリーズ第7弾・完結編。
~感想~
超面白かった。が、小説としてとか、ミステリとして、ではなくツッコミどころが多すぎて矢野龍王的な超面白さだったので取扱い要注意。ツッコミのほとんどはラスボスで「藤天皇」の異名を取る世界一の数学者・藤衛に集まる。
(↓以下ネタバレ↓)
読めばわかるが数学者というかゴリゴリの体育会系で、知的な犯罪は全くできず、御年93とは思えない驚異的な体力で不可能を可能にするのでイメージは完全に黄忠。たぶん本業よりジムに通ってる時間のほうが多いはず。
そもそも本当に世界一の数学者なのかも不明で「リーマン予想を20年前に解いたキリッ」とのたまうがその証明は全くせず解けたと主張するだけで、「諸君はまだ解けないのかね?ニヤニヤ」と凡人を馬鹿にする一方で、解けそうな若手を殺して地位を守るというやってることは超小物で、数学者よりも話術に自信ニキにしか見えないのがネック。
またある事件で20年も収監されていたのだが、その間ずっと思索に勤しんでいたと「襤褸を纏えど心は錦」みたいなことをのたまうが、20年も超偉い数学者が臭い飯食って一斉に風呂に入り軽作業していたと考えると失笑物であり小物感はますます拭えない。そのやられ様もものすごい小物っぷりなので必見である。
藤天皇(笑)のことばかり話しているが、ストーリーも色々と雑で、被害者たちは石崎幸二マジリスペクトでレミングスのように淡々と殺されていき、そういえば孤島だし、例のトリックも少しだけ入っており、女子高生3人組と冴えない顧問がいないのが不思議なほど。いちおう理由はあるものの警戒心ゼロで殺されていく被害者はもちろん、他のメンバーもぼんやりしてるうちに被害者を増やしているので双方に問題がある。
トリックは超大掛かりだけどすげえどうでもいい奴と、十角館の殺人マジリスペクトな仕掛けが組み合わさったもので、沼四郎が関わっていないのだから当然ながら、せっかく天元突破なテッペリン城みたいなドリル形状の堂なのに一切回らないのも残念。
最後は館もろとも孤島が爆発炎上するのはもちろんのこと、マジで一行たりとも伏線はおろか説明無しで急に善知鳥神が不治の病(?)で倒れたり、十和田がリーマン予想が解けそうだからと孤島と運命をともにする怒涛のテンプレ展開なのだが、十和田が島に残る理由が「島の緯度と経度にヒントがある」と言い、それって帰ってググればわかりますよね?と読者を混乱に陥れる。
そしてラストは楽屋落ちに楽屋落ちを重ねるというメフィスト賞でもやらなかった前代未聞の構成で、解説を編集者が担当しむっちゃ褒めちぎるというマッチポンプにも程がある黒歴史を堂々と示し、あんなツッコミどころ満載のシリーズを天才数学者が描いていたというありえない設定に震えを禁じ得ない。
というか堂シリーズはこの編集者のせいで森博嗣になれなかったのだと確信に至った。
というわけで矢野龍王に勝るとも劣らないツッコミどころの山のおかげで非常に楽しく読めたし、シリーズをここまで追ってきたファンなら必読だが、改めて取り扱いは要注意だと言っておきたい。
19.3.27
評価:★★★ 6