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ミステリ感想-『楽園とは探偵の不在なり』斜線堂有紀

2024年09月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ある日天使が降臨し世界は変わった。
顔のない不気味で無機質な天使が人類に与えたルールは一つだけ。2人以上殺した人間は天使によって地獄へ落とされる。
変わった世界で全てを失った探偵は、天使の集う楽園に招かれ、そしてありえないはずの連続殺人事件が起こる。

2020年このミス6位、文春3位、本ミス4位、本格ミステリ大賞候補


~感想~
「決して2人以上殺せない世界の連続殺人」というド真ん中の特殊設定ミステリで各種ランキングでも高評価を受けたが、本作と作者の本分はそこにはない。
天使の降臨によって変えられた世界と、失意の探偵の絶望と再生が主題であり、実のところミステリ要素は副次的な物に過ぎない。
そのため事件はすいすいと犯人の思惑通りに進み、重要な手掛かりはひょんなことからあっさり手に入り、大掛かりなトリックも解決前にほとんど明かされてしまい、本格ミステリとして読むとちょっと拍子抜けする。
だが失意の探偵をめぐるエピソードとその過去は実に読ませるもので、作者が一番描きたかったのもおそらくは事件解決後からエピローグに掛けてなのだろうと勝手に思う。ミステリとしては個人的に拍子抜けながら物語としてはここで一段も二段も上へと至り、探偵譚を締めくくってくれる。
ミステリ要素もある終末的探偵物語として心に残る一作だった。


24.9.13
評価:★★★ 6
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