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ミステリ感想-『リライト』法条遥

2012年06月05日 | ミステリ感想
~あらすじ~
過去は変わらないはずだった。
1992年の夏、美雪は未来からやってきた保彦と出会う。
事故に巻きこまれた彼を救うため、10年後へ跳んで携帯電話を持ち帰った。そして2002年の夏、タイムリープ当日になっても10年前の自分は現れない。
不審に思い調べていくなかで、記憶にない事件がいくつも起きていることに気づく。


~感想~
傑作「バイロケーション」でデビューしながらも第二作「地獄の門」で滑った作者の、早くも三作目。
ホラーレーベルを離れ、典型的なSFミステリの体裁をとった作品、ながらむしろホラー要素は「地獄の門」よりもなぜか上。
まずは視点人物が天祢涼とは別の意味でコロコロ入れ替わり、軽い混乱を招く。
これはひょっとしてという疑念を抱きつつ読み進めていくと、大胆不敵なトリックが待ち受けているのだが、トリックの要請上しかたのないことながら、この視点人物の入れ替わりのせいで物語全体がどうにもごちゃついてしまっている。
探偵役を廃し、たとえるなら地の文だけで真相を説明するようなラストも、ごちゃつきに一層の拍車を掛けており、ところどころ光っていたさりげない伏線も十分には活かされておらず、もう少し整理して欲しかったところ。
とはいえ、ただの勘ぐりかも知れないが、三作続けてSFミステリの系譜に連なる作品を出し、重要人物に「保彦」と名付けたことからも、全盛期の西澤保彦を継いでやろうという心意気を感じる。
これからも意欲的なSFミステリを期待したい。


12.
評価:★★★ 6
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