小金沢ライブラリー

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本ミスと文春2015についてなんやかや

2015年12月31日 | ミステリ界隈
01.深水黎一郎 ミステリー・アリーナ  ★★★★★ 10
02.倉知淳 片桐大三郎とXYZの悲劇
03.米澤穂信 王とサーカス
04.北山猛邦 オルゴーリェンヌ  ★★★★☆ 9
05.井上真偽 その可能性はすでに考えた  ★★★☆ 7
06.大山誠一郎 赤い博物館
07.有栖川有栖 鍵の掛かった男
08.白井智之 東京結合人間  ★★★★ 8
09.鳥飼否宇 死と砂時計
10.久住四季 星読島に星は流れた


本ミスは9位までがこのミスとかぶった。順位は本ミスに合わせて前後したが「オルゴーリェンヌ」が4位とは、単純に読者数の差であろうか。


01.米澤穂信 王とサーカス
02.東山彰良 流
03.深緑野分 戦場のコックたち
04.深水黎一郎 ミステリー・アリーナ  ★★★★★ 10
05.有栖川有栖 鍵の掛かった男
06.倉知淳 片桐大三郎とXYZの悲劇
07.島田荘司 新しい十五匹のネズミのフライ
08.佐藤正午 鳩の撃退法
09.阿部和重・伊坂幸太郎 キャプテンサンダーボルト
10.北山猛邦 オルゴーリェンヌ  ★★★★☆ 9


文春は特筆すべきことが何一つとしてないつまらないランキングであった。
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このミス2015についてなんやかや

2015年12月30日 | ミステリ界隈
01.米澤穂信 王とサーカス
02.深緑野分 戦場のコックたち
03.柚月裕子 孤狼の血
04.若竹七海 さよならの手口
05.東山彰良 流
06.深水黎一郎 ミステリー・アリーナ  ★★★★★ 10
07.倉知淳 片桐大三郎とXYZの悲劇
08.有栖川有栖 鍵の掛かった男
09.藤田宜永 血の弔旗
10.北山猛邦 オルゴーリェンヌ  ★★★★☆ 9
11.佐藤正午 鳩の撃退法
12.月村了衛 影の中の影
13.鳥飼否宇 死と砂時計
14.井上真偽 その可能性はすでに考えた  ★★★☆ 7
15.下村敦史 生還者
16.白井智之 東京結合人間  ★★★★ 8
17.矢作俊彦 フィルムノワール/黒色影片
18.島田荘司 新しい十五匹のネズミのフライ
19.阿部和重・伊坂幸太郎 キャプテンサンダーボルト
19.大山誠一郎 赤い博物館
19.織守きょうや 黒野葉月は鳥籠で眠らない
19.佐々木譲 犬の掟


米澤穂信が2連覇を達成。前作「さよなら妖精」のシリーズである必要性がないという評判からスルーしたが、ひねくれ者としてはこれでなおさら買いにくくなってしまった。
ハードでボイルドなみなさんは置いとくとして、若竹七海なんて完全なノーマークな作家が4位に入ったのには驚いた。氏のランクインは「依頼人は死んだ」以来15年ぶり、その前のランクインはさらに9年前の「ぼくのミステリな日常」で、ランキングの常連でもないのに24年間にわたり最前線に立っている作家は数少ないだろう。

私的ランキングの中で最上位に挙げた「ミステリー・アリーナ」が6位、「オルゴーリェンヌ」が10位とベストテンに名を連ねたのはうれしいところ。流石に1位を争うようなものではなかったし。
その他には昨年3位に飛び込んだ乱歩賞作家の下村敦史が今年も15位に滑り込んだのが目新しい。受賞後第一作は読んだのだがイマイチで、続く「生還者」は見逃してしまった。
そしてもう一つ特筆すべきは東野圭吾の圏外だろう。東野作品の順位をその年の作況を占うバロメーターとして見ると、今年は豊作の年だったのかと思ったり。
また新作のなかった貴志祐介と、宮部みゆきの名も見当たらず、他の作家にとってはランクインする絶好の機会でもあった。
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2015私的このミスベスト20

2015年12月29日 | ミステリ私的ランキング
01.深水黎一郎 ミステリー・アリーナ  ★★★★★ 10
02.北山猛邦 オルゴーリェンヌ  ★★★★☆ 9
03.深緑野分 戦場のコックたち  ★★★★☆ 9
04.東山彰良   ★★★★☆ 9
05.若竹七海 さよならの手口  ★★★★☆ 9
06.白井智之 東京結合人間  ★★★★ 8
07.大山誠一郎 赤い博物館  ★★★★ 8
08.早坂吝 虹の歯ブラシ 上木らいち発散  ★★★★ 8
09.月村了衛 影の中の影  ★★★★ 8
10.澤村伊智 ぼぎわんが、来る  ★★★★ 8
11.井上真偽 その可能性はすでに考えた  ★★★☆ 7
12.島田荘司 新しい十五匹のネズミのフライ  ★★★☆ 7
13.倉知淳 片桐大三郎とXYZの悲劇  ★★★☆ 7
14.伽古屋圭市 からくり探偵・百栗柿三郎  ★★★☆ 7
15.月村了衛 機龍警察 火宅  ★★★☆ 7

20.浦賀和宏 究極の純愛小説を、君に  ★★★ 6
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ミステリ感想-『東京結合人間』白井智之

2015年12月28日 | ミステリ感想
~あらすじ~
人間が生殖を捨て男女で結合する世界。
結合人間の中には絶対に嘘をつけないオネストマンが時として生まれた。
彼らを集め孤島での生活を追う映画の撮影が企画されるが、そのさなかに殺人事件が起こる。
殺したのはオネストマンか、それとも。


~感想~
人肉食が肯定される世界でのデビュー作「人間の顔は食べづらい」も問題作として騒がれたが、それをもやすやすと飛び越えるさらに異形のミステリが爆誕。いやもう本当に作者は頭おかしい。
設定はもちろんのこと物語も完全に頭おかしく、話の区切りには超展開と呼ぶしかない事態が待ち受け、そのくせ提出される論理は恐ろしいほどに緻密で、一語一句もおろそかに出来ない膨大な伏線と手掛かりにあふれており、そこまでちゃんと読み込んでいない自分がなんだか申し訳なくなるほど。
終盤は論理の飛躍・逆転・爆発が繰り返され、それこそ結合人間の8本の手足に弄ばれ、もみくちゃにされているような心地で呆然とするばかり。
頭おかしい世界で頭おかしい物語が頭おかしい論理で信じられないほど緻密に解かれる、この頭おかしい作者にしか描き得ない、とんでもない本格ミステリである。


15.12.25
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『ミステリー・アリーナ』深水黎一郎

2015年12月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
近未来、紅白に代わり大晦日を彩る推理番組「ミステリー・アリーナ」。
大雨で橋が流れ孤立した屋敷で起こる殺人事件の謎。
ミステリオタクたちがキャリーオーバーで貯まった賞金20億に挑む。


~感想~
全力の悪ふざけを見た。
いわゆる多重推理・多重解決物の極北と呼ぶべき内容で、早押し形式の犯人当てミステリ推理番組と、問題文となる物語が交互に進行していく構成がまず珍しい。
多重推理物の弱点というか必然として、先に出された推理は間違いであり、後から出された推理に駆逐される運命にあるが、テレビ番組という形式をとったことで、基本的に最後の最後まで正解か否かはわからないのが巧い。
また提出される推理も与えられたテキストの一面をただ取り上げただけの捨てトリックから、一面だけを曲解してこしらえたバカトリック、回答者がミステリオタク揃いという特性を活かし、ミステリというある程度の様式、お約束が存在する特色を逆手に取り、先の先まで展開を読んだメタ推理などなど多岐にわたり、しかもそれぞれが一定以上の説得力を持っているため飽きさせない。

正直言って終盤の展開や大仕掛けは3分の1ほど読んだところでわかってしまったものの、ある真相が明かされてからは結末まで怒涛の勢いで雪崩れ込み、万が一他の誰かが思いついても書き上げないような、考えるだに苦笑するしかない偏執的なトリックには素直に脱帽した。
これは最高の褒め言葉のつもりなのだが、全力の悪ふざけとでも冠したくなる悪仕掛けで、多重推理ジャンルの極北にして一つの到達点であることは間違いなく、ある意味で今後これを越える多重推理ミステリはまず生まれないだろう。
それにしても(ネタバレ→)字面だけ見れば本当の多重「解決」物はこうでなくてはいけないのだが、よくぞこれを考えつきそして実行したものである。


15.12.24
評価:★★★★★ 10
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ミステリ感想-『魔球』東野圭吾

2015年12月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
弱小校を甲子園まで導いた天才ピッチャー須田武志。
9回裏2死満塁、彼が最後に投じた魔球が全ての始まりだった。
大会後、バッテリーを組んだ捕手が犬とともに殺され、事件の裏には魔球が見え隠れする。

88年このミス18位、文春10位、85年江戸川乱歩賞候補


~感想~
東野小説によくある、一息に面白く読んだものの感想が全く思いつかない作品。
展開、伏線、真相、解決、物語と過不足なく、もし減点方式で採点すれば高確率で90点をオーバーしてしまう東野作品だが、本作も実質デビュー2作目とはとても思えない恐ろしいまでのそつなさで、早くもベテランの風格が漂う。
だからといって物足りないこともなく、いくつもの事件が意外なつながりを見せ、些細な着眼点から真相が浮かび上がり、その裏には悲哀が漂う、もしミステリ作家養成学校があれば教科書として採用すべき、素晴らしい仕上がりである。
まあ取り立てて褒めるべき長所は特にないのだが、それもこれだけ欠点のない作品に無理やり欠点を探しだす、窓の桟を指でなぞり埃を集めるような行為であり、言うだけ野暮というもの。
読んで損するはずもない佳作である。


15.12.23
評価:★★★ 6
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今週のキン肉マン #154 運命の邂逅!!

2015年12月21日 | 今週のキン肉マン
・シルバーマンまぶしさを感じるくらい神々しすぎ
・キン肉族の印はもともとシルバーマンのSだった?
・そのセルフ階段なんなの
・リフトアップスラムwwwww
・クラッシュマンは倒したしサイコマンも追い詰めたけど善戦超人だったね…
・結構前から見てたシルバーマン
・光が収まるとますますキン肉族の戦闘スタイルらしさが目立つな
・起こったことはサイコマンの言うとおりだがシルバーマンの視点からは別の物語があるのだろう
・それが次回語られるか、それともネメシスの時みたいにサイコマンの言うとおりなのか
・まだまだシルバーマンがブロッケンを虐☆殺する可能性十分あるよね
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先週のNXT #309  絶対痛いハイキック

2015年12月19日 | 今週のNXT
タイ・デリンジャー ×-◯ バロン・コービン
(エンド・オブ・デイズ)

コービンは2週後のロンドン公演でのアポロ・クルーズ戦を前に、クルーズの乱入で流れたデリンジャーを迎え撃つ。
勝負を急がず痛めつけるが、中盤からはデリンジャーも反撃。二段階スーパーキックでカウント2まで追い込むなど健闘したが、プランチャを平然と受け止められ必殺技で仕留められた。


ブルーパンツ ×-◯ ナイア・ジャックス
(レッグドロップ)

お役御免かと思われたブルーパンツが新曲を引っさげ久々に登場。前の曲のほうが絶対良かった。
しかしクローズラインを前転でかわしポーズを決めたのが気に障ったか、ナイアに必要以上に痛めつけられ、サモアンドロップからのレッグドロップで惨敗した。


ジェームズ・ストーム ○-× アダム・ローズ
(ラストコール)

一戦したものの去就が不明で、インディー団体のポスターにNXT所属と書かれていたから契約したのでは?と噂され、でもアメリカ人そのへん絶対適当だしインディーのポスターなんて厳密に考えずに刷ってるだろと思われていたストームがNXTに帰還。
中盤戦はローズに攻めさせてやる余裕を見せ、必殺のラストコール(スーパーキック)で快勝した。


ジェイソン・ジョーダン&チャド・ゲイブル ○-× ボードビレインズ(エイダン・イングリッシュ&サイモン・ゴッチ)
(投げ渡しバックドロップホールド)

4人がそれぞれの持ち味を出しあい、イングリッシュが王座戦で負傷した左脚を狙われるも、ショルダースルーでゲイブルを場外へ投擲。
自陣に孤立させるが一本背負いで抜け出したゲイブルがタッチに成功すると、躍動したジョーダンが一息にビレインズを追い詰め、必殺ツープラトンでゴッチを仕留めた。

試合後、ジョーダン組は敬意を示し握手を求めるも、不振のビレインズはそれを無視して去っていった。


エマ ○-× リヴ・モーリー
(エマロック)

マーリーの名でエヴァ・マリーと対戦したリヴが新たなリングネームで登場。現NXTディーバの中で一番かわいい。
エマは久々にディル・エマ(タランチュラ)を披露し、テキサススープレックスからポール・バーチル式のカーブストンプと珍しい技をつなげ、必殺技で勝利した。

試合後、サンドバッグを蹴るアスカが映され、ロンドンでの対戦が決まった。


トマソ・チャンパ ×-◯ サモア・ジョー
(コキーナクラッチ)

まだ契約の残っていたチャンパの「ジョーの紹介で妻と出会った」というほのぼのエピソードが出されるが今のヒールなジョーには逆効果。
ドSの両者は全力のビンタの張り合いから延髄斬りや、プロレスにあるまじき鈍い音を立てて突き刺さるハイキックを容赦なく決め合う。
最初はブーイングを浴びせていた観客もハードヒットの打撃や説得力抜群のパワーに見せられ、次第にジョーを応援。
最後はマッスルバスターからコキーナクラッチでチャンパをタップさせた。
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先々週のNXT #308  エヴァが勝ったら暴動

2015年12月18日 | 今週のNXT
・NXT王座戦の調印式

ウィリアム・リーガルGMが手術で欠場のため一軍実況のマイケル・コールが番組を仕切る。しばらく見ないうちにビンス・マクマホンにやけに似てきた。
調印式に先立ち、リーガル卿が認めなかったエヴァ・マリーの女子王座挑戦を上層部が決定したことを発表。
続いてNXT王者のフィン・ベイラーと挑戦者のサモア・ジョーを呼び込む。ジョーはリングに上がるやさっさとサインだけ済ませて帰っていってしまう。
フィンも済ませて去っていくと、エントランスでジョーが襲撃。リング上での攻防からコキーナクラッチで絞め落としてしまった。


NXTタッグ王座戦
スコット・ドーソン&ダッシュ・ワイルダー ○-× ボードビレインズ(エイダン・イングリッシュ&サイモン・ゴッチ)
(フラップジャック+コードブリーカー)防衛成功

タッグ王座をめぐり再戦。互いにツープラトンの必殺技を回避し合うも、ドーソン組がブラインドタッチから二度目のフラップジャック+コードブリーカーのツープラトンを成功させ、ワイルダーがイングリッシュをフォールした。

試合後、卑劣な襲撃で王座挑戦をフイにされたエンツォ・アモーレ&コリン・キャサディがドーソン組に報復した。


・エヴァ・マリーに友達ができる

王座挑戦を控えたエヴァがリーガル卿不在のGM室を占拠しインタビューに応じ、新たな友達としてナイア・ジャックスを紹介した。


アスカ --- デイナ・ブルック
(エマに襲わせる→試合不成立)

デイナはマイクアピールでアスカの注意を引きつけた隙にエマに背後から襲わせる。
即座に蹴り倒されたがダメージは浅く、再びエマが襲いかかりエマロックで絞め上げた。


アポロ・クルーズ ○-× ジェシー・ソーレンセン
(ブルーサンダーボム)

すでに二度NXTに参戦しているソーレンセンが初登場扱いで現れる。アメプロではよくあること。
ディーボン・ダッドリーの弟子と紹介されたソーレンセンは何発か打撃は見せたものの、ほとんどなすすべも無く敗れ去った。

試合後、クルーズは王座戦をブチ壊したバロン・コービンを挑発し対戦が決まった。


NXT女子王座戦
ベイリー ○-× エヴァ・マリー
(雪崩式ベイリー・トゥ・ベリー)防衛成功

ゴリ押しによる挑戦決定、ナイアのセコンド入りに続き、上層部の意向で上級レフェリーのチャールズ・ロビンソンが立会人として登場。エヴァにベルトを獲らせるためのお膳立てが整えられる。

ゴング前から「エヴァが勝ったら暴動」というもっともなチャントが飛ぶ中、ベイリーは序盤戦でいきなりベイリー・トゥ・ベリーを炸裂させる。
しかしピンフォール寸前でナイアがレフェリーを引きずり下ろして排除。なぜか反則裁定は下らずロビンソンが代役として試合を続行する。
ナイアの介入もあり劣勢に立たされたベイリーは、ロビンソンに抗議した隙に不知火を浴びるがなんとか返す。
ロビンソンもエヴァと衝突してリング下に転げ落ち、レフェリー不在の中トップロープに上がったエヴァはちんたらしている間にベイリーのエルボーを浴びてフラフラに。
いったんはナイアが阻止に入るもなんとか排除し、1分近く間が空いたのにエヴァはまだエルボー一発でグロッキーで、雪崩式の必殺技で放り捨てられると、元のレフェリーがタイミングよく駆けつけカウント3を叩いた。

試合後、疲労困憊のベイリーをナイアが襲い、新たな挑戦者に名乗りを上げた。
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ミステリ感想-『オルゴーリェンヌ』北山猛邦

2015年12月15日 | ミステリ感想
~あらすじ~
書物の駆逐された世界でミステリを求める少年クリス。
ひょんなことから知り合った口の利けない少女ユユを守り、少年検閲官エノとともにオルゴール職人たちが暮らす島へ向かう。
少女をオルゴールにした男の伝承が残る島で、奇怪な連続殺人の幕が開く。

~感想~
冒頭の少女をオルゴールに作り変える男の伝承、ボーイミーツガールから荒海に閉じ込められた孤島へ、怪しげな島の住人に連続殺人と、This is a 本格ミステリな舞台設定から、予想の上を行く展開を最後まで見せ続けた傑作。
しかし魅力のほとんどがネタバレにつながり伏せ字無しでは多くは語れないため、早速↓ネタバレ注意↓

キャラ立ち過ぎの新たな少年検閲官カルテの解決、屋敷の主人クラウリの告白、探偵役エノの推理といわゆる多重推理がなされるが、先に出された2つの推理が単なるハズレではなく、いずれも存在意義があるというのがまず秀逸。
カルテの解決は事件の真相として表に出され、これが無ければクリスもエノもユユも処罰は免れ得ない。
クラウリの告白はそれ自体がユユへの心理的圧力、束縛として機能し真相であるか否かは全く関係ない。
そしてエノの推理は、前2つの推理を上回り、完全に予想外のところから真相を導き出すもので(ただし憶測に過ぎず証拠は全くなく、カルテの解決を覆せないというのも実に秀逸)物語の、ミステリの結末として完璧な着地。
多重推理が真相の補強や意外性を演出するのははもちろんのこと、物語にも深みを与えるという素晴らしい作例である。

また真相そのものも犯人は島外におり、しかもクリスらが島に着いた時点で全てが終わっていたという遠隔殺人トリックの代表的作品として今後真っ先に挙げられるべきものだが、惜しむらくはそれを口外した時点で壮絶なネタバレになってしまうというジレンマがもどかしい。

ラノベ設定のおかげで中世と現代のいいとこ取りのような奇抜な舞台や独特の世界観、思惑通りに嵌まりまくる刻命館的トリック、タイミングの良すぎるビルの崩壊とキリイの死などなども特段不自然ではなくなったのも良い所。前作に続き氷のガジェットが少しも使われなかったのはどうかと思うが、そんな無粋なツッコミは重箱の隅をつつくような行為だろう。


もしラノベ題材ならば容易にシリーズ化できていたであろう設定ながら、作者はこれだけのトリックと物語を盛り込むまで満を持して第二作を出さなかった。
その選択は大正解だし、待たせただけはある今年度を代表する傑作である。


15.12.14
評価:★★★★☆ 9
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