小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『記憶の果て』浦賀和宏

2002年12月31日 | ミステリ感想
~あらすじ~
父が死んだ。自殺だった。
大学進学を間近に控えた安藤直樹の人生は激変していく。
父の書斎に残されたパソコンには「安藤裕子」という名前の人工知能が宿っていた。
機械と言ってしまうにはあまりに人間的な「裕子」。
彼女は本当に機械なのか? それとも……。
1998年 メフィスト賞。


~感想~
若書きではあるがなかなかに巧みな出来。冗長ではあるが退屈はしない。
ミステリのコード(枠組み)を破壊しながらも、枠の中でもがく。この完結しきった話が次作以降も続くのがすごい。
文庫版では全面改稿がなされているというので、ぜひ読んでみたい。


02.12.31
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『堕天使殺人事件』リレー小説

2002年12月30日 | ミステリ感想
~リレー順~
二階堂黎人→柴田よしき→北森鴻→篠田真由美→村瀬継弥→歌野晶午→西澤保彦→小森健太朗→谺健二→愛川晶→芦辺拓


~感想~
リレー長編。11人の新本格作家が打ち合わせなし・締め切り2週間の過酷な条件に挑む。

(全体的にネタバレ↓)
二階堂黎人
最高の発端。出足は完璧。でも「ヒグマ男」はないよね。

柴田よしき
見事な展開。斬新な切り口と突然の密室は後続を恐怖におとしいれた。

北森鴻
主要キャラを登場させたが異様な展開で混乱を招いた。

篠田真由美
自キャラを持ち込む豪腕は見事。だが後続は明らかにとまどった。

村瀬継弥
サブストーリーでお茶をにごしただけ。自分のキャラしか使ってないし。

歌野晶午
小休止とおさらい――と見せて、実は核となった重要なパート。中盤を見事にさばいた。

西澤保彦
かなり大胆に展開させ、これも中核となった。あとがきのように暴走してくれても面白かったのに。

小森健太朗
北森氏が出した異形の裏をせっかく復活させたのに、ほとんど捨てトリックにされる。

谺健二
大半を雑学で糊塗し、前章の前フリから逃げただけ。

愛川晶
これまでの展開をブチ壊し、なおかつ伏線(瑕疵?)を拾い集めた功績は大。
それにしても、終局の一文で芦辺氏の退路を断ったのは楽しい。

芦辺拓
こんなモンまっとうにまとめられるかと言わんばかりに、かたっぱしから粉砕・一蹴。
こんな強引なまとめかたしかできないよなあ。ところどころ、目のつけどころは良かった。


~総括~
良くも悪くもツギハギミステリ。悪条件の中、よく奮闘したと思う。
各氏がそれぞれの持ち味を出し、楽しめるお祭り的作品には仕上がった。
自分の後にどう展開するか予想した裏話が面白い。



02.12.30
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『祝福の園の殺人』篠田真由美

2002年12月30日 | ミステリ感想
~あらすじ~
17世紀イタリア。侯爵モンタルト家別邸の、亡き女主人が丹精込めて造った庭園で男の死体が発見される。
つづいて次々と起こる侯爵家に関わる者たちの不可解な死。
“呪われた庭”に隠された真実のメッセージとは何だったのか?


~感想~
前作『琥珀の城の殺人』を「宝塚」と揶揄された作者が「だったら本当に宝塚なミステリを書いてやろうじゃねえか」と一念発起した作品。
こうなったらもう「宝塚なミステリです!」と紹介するしかあるまい。
とにかくイキイキと描かれた、絢爛豪華な洒脱な瀟洒な舞踏会的ミステリ。
読み終わるとどっと疲れるのもたしか。


02.12.30
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『月蝕の窓』篠田真由美

2002年12月29日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「赤いお月様」はなにを語る?
少女の記憶がよみがえった時、「月映荘」でまた惨劇が。
容疑は少女にかけられ、事件の真相は呪われた館の過去、そして京介の封印された記憶にからみつく。


~感想~
余分な要素は持ち込まなくてもいいのに。
初の京介視点は、神秘さ・超人ぶりを薄ませ逆効果なのでは?
すっかりマンネリ化したので、打ち砕こうとしたのだろうが、そろそろシリーズ打ち切りを検討すべきではないかなあ。


02.12.29
評価:★★ 4
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ミステリ感想-『タイムスリップ森鴎外』鯨統一郎

2002年12月29日 | ミステリ感想
~あらすじ~
何者かに殺されかけ、大正11年から現代の渋谷にタイムスリップしてしまった森鴎外。
道玄坂で若者に袋叩きにされているところを女子高生うららに助けられる。
彼女の友人達の助けを借り、元の世界に帰る方法を探るうちに、文学史上の大疑問に突き当たり、鴎外を狙う意外な犯人の名が浮かぶ。


~感想~
歴史の闇を照らすというか、こじつけ、侮辱しているだけでは。
韻を踏むつもりすらないラップに仰天。白ける描写といい、もっとちゃんと書いてほしい。


02.12.29
評価:☆ 1
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ミステリ感想-『センティメンタル・ブルー』篠田真由美

2002年12月28日 | ミステリ感想
~収録作品~
BLUE HEART,BLUE SKY
BEELZEBUB―ONE DAY OF THEIR HIGH SCHOOL LIFE
DYING MESSAGE"Y"
SENTIMENTAL BLUE


~感想~
『BLUE HEART,BLUE SKY』
込み入ったようでいて、すごく単純なお話。人物数を絞りすぎたのがマイナスに働いたような。

『BEELZEBUB~』
冗長に過ぎる。設定と序盤のフリがどんどんしぼんでいった。惜しい。

『DYING MESSAGE"Y"』
蒼の物語である必然性が感じられない。展開・真相もつきなみ。

『SENTIMENTAL BLUE』
トリックも犯行手口もなんだか強引かつテキトー。物語にばかり目を奪われ、細部をおろそかにしたような。


~総括~
さんざんくさしてみたが、ただ読む分には面白い。
「ミステリ」と冠するから首をかしげてしまうのだ。
この際、新規読者は無視して、シリーズファンだけが楽しめる路線に転向してはどうだろうか。


02.12.28
評価:★★ 4
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ミステリ感想-『仮面の島』篠田真由美

2002年12月28日 | ミステリ感想
~あらすじ~
イタリア人実業家の亡夫から相続した、小島の館に隠棲する日本人女性レニエール夫人。
彼女から鑑定の依頼を受けヴェネツィアを訪れた神代教授と京介だったが、跡を追った深春、蒼と合流して早々に島の売却を巡るトラブルに巻き込まれる。


~感想~
いかにも氏らしい(常套句)作品。衝撃はないがあいかわらず丁寧。


02.12.28
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『夏の夜会』西澤保彦

2002年12月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
祖母の葬儀のため、久しぶりに帰省したおれは、かつての同級生の結婚式に出席した。
同じテーブルになった5人は小学校時代の同級生。
飲み直すことになり、思い出を語りあうなか、30年前に起こった担任教師の殺害事件が浮かび上がる。


~感想~
いつもの酩酊ミステリから陽気さを取っ払っただけの気が。
肝心の謎もありがちな決着に到ったり、釈然としない。結末もあっけなさすぎ。


02.12.27
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『暗闇の中で子供』舞城王太郎

2002年12月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
あの連続主婦殴打生き埋め事件と三角蔵密室はささやかな序章に過ぎなかった!
「おめえら全員これからどんどん酷い目に遭うんやぞ!!」
模倣犯/運命の少女/そして待ち受ける圧倒的救済(カタルシス)……。
奈津川家きっての価値なし男にして三文ミステリ作家、
奈津川三郎がまっしぐらにダイブする新たな地獄。
(背表紙より抜粋)


~感想~
ミステリというか奈津川家サーガ。一読目では全く意味不明だった。要するにこれは(ネタバレ→)“誰かの懸命さは必ず他の誰かに見られているということは物語が伝えるべき正しい真実だからだ” の一文に全てが収束する作品である。……と、思う。


02.12.26
評価:なし 0?
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ミステリ感想-『煙か土か食い物』舞城王太郎

2002年12月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
アメリカ/サンディエゴ/俺の働くERに凶報が届く。
連続主婦殴打生き埋め事件。被害者は俺のおふくろ。
ヘイヘイヘイ、復讐は俺に任せろマザファッカー!
腕利きの救命外科医・奈津川四郎が故郷・福井の地に降り立った瞬間、
血と暴力の神話が渦巻く壮絶な血族物語が幕を開ける。
「密室? 暗号? 名探偵? くだらん、くたばれ!」
(背表紙より抜粋)
第19回メフィスト賞、このミス8位


~感想~
破壊神、降臨。ミステリの作法・枠組みを余すところなくブチ壊す、まがまがしい悪魔が新世紀に降り立った! こんな文体のくせに圧倒的な筆力・描写力には心底驚嘆。毒々しいまでの諧謔味と凄絶な展開。煩雑なようで計算され尽くした物語。新たなる異才の切り拓く地平に、はたしてなにが待つのか……?


02.12.26
評価:★★★★☆ 9
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