小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『湖底のまつり』泡坂妻夫

2009年07月31日 | ミステリ感想
~あらすじ~
傷心旅行に出た香島紀子は、山間の村で急に増水した川に流されてしまう。救い出してくれた埴田晃二という青年とその夜結ばれるが、翌朝晃二の姿は消えていた。
村祭でにぎわう神社で、紀子は晃二がひと月前に殺されたと知らされる。では昨日、晃二と名乗っていた人物は誰なのか。


~感想~
普段の軽い洒脱な文体からかけ離れた、幻想譚としか言いようのない展開と筆致にまずは驚かされる。
だが真に驚くべきは、この幻想小説がある一点を境に現実の景色へと変貌するところにあるのだが――。中途で真相に気づいてしまったのが無念。
しかし真相が見抜けても、寒村の雰囲気や絡み合った背景など見どころは多く、その精緻な結構とトリックを楽しめるのはいいところ。
もちろんトリックにすんなり騙されれば最上級の幸運。作者の代表作に挙げる人が多いのも納得の一作。


09.6.13
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『傍聞き』長岡弘樹

2009年07月30日 | ミステリ感想
~収録作品~
迷い箱
899
傍聞き
迷走


~感想~
表題作で日本推理作家協会賞を受賞。

非常に丁寧なつくりなのだが、あまりに丁寧すぎて事件発生と同時に真相が透けてしまうことがしばしば。
丁寧なのは決して悪いことではないのだが、それを4編にわたって毎回くり返され、真相にいっこうに気づかない鈍い語り手に、事件後の半分ほどの分量を付き合わされるとげんなりしてしまう。
意外性こそないものの、トリック自体はよく練られているので、仕掛けが悪いのではなく、作者に真相を隠す気がさらさらないだけのようなので、これはミステリではなく人情小説として読むのがベストなのかもしれない。


09.7.29
評価:★★☆ 5
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映画(DVD)感想―『ゾンビーノ』

2009年07月07日 | 映画感想

~あらすじ~
長く続いたゾンビとの戦争で危機に陥った人類は、ゾムコン社が開発した特殊な首輪に救われた。それをはめたゾンビはおとなしく従順になり、現在では家事もできるペットとして一般家庭で飼われていた。友達のいない少年ティミーの家でも、母ヘレンが世間体を気にしてゾンビを飼うことに。
やがて、ティミーはゾンビをファイドと名づけ、心を通わせていくのだが……。


~感想~
あらすじを見てもらえばわかるとおり、考えたヤツは完全に頭おかしい映画なのだが、そのイカれたアイデア一つで、話の展開的にはいたって正しいゾンビ映画を、絵面は普通にグロいシーンなのに笑わせたり、心温まらせてしまうのだからすごい。
ハートウォーミングでコメディチックなゾンビ映画という前代未聞の作品を生み出してしまうとは、ゾンビ映画というジャンルには想像を超える可能性が秘められているのだなあ。


評価:★★☆ 5
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映画(DVD)感想―『フィフス・エレメント』

2009年07月02日 | 映画感想

~あらすじ~
2214年、巨大なエネルギー体が地球に接近しつつあった。
一方、タクシー運転手のコーベンはひょんなことから赤い髪の少女を救う。
コーベンは彼女リールーを神父の元へ届けるが、そこでリールーこそ地球存亡のカギを握ると知らされる。


~感想~
初見。観る前にはSFの傑作らしいと思っていたが、ただのB級三文映画だった。

リュック・ベッソン監督が16歳の時に構想したもの、と言われれば実に納得の雑なストーリーと、日本人には厳しいアメリカンな笑いの数々に終始引きっぱなし。
正直なところ、見どころはミラ・ジョヴォヴィッチの脱ぎっぷりの良さくらい。
制作費が足りず、金稼ぎのために2日で脚本を書いた『レオン』が大ヒットしたとか、いったんはオーディションに落選したジョヴォヴィッチ姐さんが監督に直談判するや突如ヒロインに抜擢されたとか、公開直後にジョヴォヴィッチ姐さんがなぜか監督と結婚したとか、映画自体よりも背景のほうがよっぽど面白い、脱力必至のダメ映画でした。


評価:問題外
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