小金沢ライブラリー

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DVD感想―『宇宙戦争』

2008年11月24日 | 映画感想

~あらすじ~
ニュージャージーに暮らすごく平凡な男レイ。別れた妻との間には息子のロビーと娘レイチェルがいた。
子供たちとの面会の日、異変は前触れもなく訪れた。晴天だった空が不気味な黒い雲に覆われると、嵐が吹き荒れ稲光が地上に達し、地面に巨大な穴を空けた。
すると大地が震え、地中で何者かが激しくうごめき始めたのだった……。


~感想~
さんざんな評価を受けているが、SFではなくモンスターパニック映画として見れば満点じゃね?
肝となるモンスターにトライポッドという稀有の存在を迎えた時点ですでに勝利。
うねうね動く脚で威圧的に直立し、原理はわからんがとにかく圧倒的な科学力のビームで、次々と人類を抹殺するトライポッドに終始萌え。
一貫して英雄でも大統領でもない一般人の視点で描くことや、あれだけ暴虐と殺戮の限りを尽くしたトライポッドが、廃屋を意味もなく壊さず慎重に調査したり、無駄に宇宙人が姿を現したりすることからも、本作はSF大作ではなくモンスターパニック物だと言えよう。
一般人の主人公ならではのミクロな反撃、追い詰められた群衆の暴走、トライポッドを3機沈める大阪人(理由は「大阪人はゴモラとかと戦い慣れてるから」だそうだ)、鳥にはやさしいトライポッド、むりやりすぎるハッピーエンドなどなど見所もたくさん。
原作どおりのあっけなさすぎる、あんまりな結末さえ承知の上なら楽しめることだろう。
……それにしても観終わると『地球防衛軍』がやりたくなる。


評価:★★★★☆ 9
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DVD感想―『ミュンヘン』

2008年11月23日 | 映画感想

~あらすじ~
スティーヴン・スピルバーグ監督が、1972年のミュンヘン・オリンピックで起きたパレスチナ・ゲリラによるイスラエル選手殺害事件とその後のイスラエル暗殺部隊による報復の過程をドキュメンタリー・タッチで描いた作品。
1972年9月、パレスチナのテロリスト集団がイスラエルの選手村を襲撃、11名が犠牲となる悲劇が起きる。
これに対しイスラエル政府はパレスチナ幹部の暗殺を決定、諜報機関"モサド"の精鋭5人による暗殺チームを秘密裏に組織する……。


~感想~
重厚というかとにかく地味。これだけ地味だと「本でいいじゃん」という気がしてくる。
しかしゲリラにも暗殺者にもそれぞれの家族があり、それぞれの生活があるという当たり前のことを丹念に描いたのは好感。
それにしても、暗殺チームはターゲットの家族や周囲の無関係な人々を巻き込まないように腐心しているというのに、昨今のテロはまさにその家族や無関係な人々をこそターゲットにしているのだから、どうしようもないと思わせる。
ラストシーン、予想通りに映し出されるアレが、アレがもはやCGでしか描けないという事実が、エンディングをさらに暗く、絶望的なものに感じさせる。
スピルバーグがいくら辣腕をふるおうとも、やはり現実はなによりも強く胸に迫るのだ。


評価:★☆ 3
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映画感想―『007 カジノロワイヤル』

2008年11月18日 | 映画感想

~あらすじ~
ダニエル・クレイグ扮する6代目ボンドが初登場するシリーズ21作目。
ジェームズ・ボンド最初の任務は、世界中のテロリストを資金面で支える男、ル・シッフルの資金を絶つこと。やがて、ル・シッフルが“カジノ・ロワイヤル”で大勝負に出ることが明らかとなり、その阻止のためモンテネグロへと向かうボンド。しかし、そんな彼のもとに、財務省から監視役として美女ヴェスパー・リンドが送り込まれる。


~感想~
007になりたてのボンド、というわけで流麗なのは外見だけで荒々しい活躍ぶりを見せてくれるのが楽しい。
冒頭の追跡劇を見ているだけで「このボンドは頭脳より勢いで動いている」と納得させるのは見事。
殺し方も強引だわ、なにかというと力技で物事を解決しようとするわ、正体は常にバレバレだわ、仲間は仲間で「死んだら動け」とむちゃくちゃな指令を出したりと初々しい(というのかなんというのか)。
黙っているとロシアの大統領のような新ボンドだが、全裸でキ●タマを責められるという体当たりシーンもこなし、徐々に違和感を覚えなくなることだろう。
シリーズとしての位置づけは「007ビギンズ」といったところなので、未経験者もぜひ。


評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『七つの海を照らす星』七河迦南

2008年11月17日 | ミステリ感想
~あらすじ~
さまざまな事情から、家庭では暮らせない子どもたちが生活する児童養護施設「七海学園」。
ここでは「学園七不思議」と称される怪異が生徒たちの間で言い伝えられていた。
孤独な少女の心を支える蘇った先輩。行き止まりから消えた新入生。女の子が六人そろうと、いるはずのない七人目が囁くトンネル……。
七人の少女をめぐるそれぞれの謎は、真実の糸によってつながり、希望の物語となる。
第18回鮎川哲也賞受賞作。


~感想~
近隣の本屋を数件回ったがどこにも売っていなくて、やむなく注文したところ、読んでびっくりの"名"連作短編集。加納朋子のあとを継ぐ者がついに現れた。
それにしても鮎川賞を相手に地元の書店はなにをやっているのだろうか。

どうでもいい事情はともかく、6つの短編それぞれがなかなかの強度を誇る謎と解決、新人離れした巧みな伏線を用意し、それが最後に1つへと(それも予想しない形で)つながるのだから、うれしくなってくる。
これだけ正統派の「連作」は近年まれであるし、ひとつひとつの短編も「この舞台でこのトリックを仕掛けてくるか」とうなり、同時に「この舞台でこのトリックを仕掛けられるのか」と舌を巻く。
しかも強引ではあるものの一定のリアリティを持っているのだからたまらない。選評にもあったが、装丁にまで気を配る余裕も実に頼もしいではないか。
養護施設という舞台が舞台だけに、やさしいだけの物語ではないが、逆にやさしい視線が浮き彫りになり、物語に深みを与えているのもいい。
堂々の大型新人登場、とまでは言わないが、個人的に大ファンになれそうな新鋭の登場を歓迎したい。


08.11.17
評価:★★★★ 8
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DVD感想―『ダイハード4.0』

2008年11月15日 | 映画感想

~あらすじ~
独立記念日の前夜。全米のインフラを監視するシステムに何者かがハッキングを仕掛けてきた。
FBI本部はブラックリストに載るハッカーたちの一斉捜査を開始し、マクレーン警部補は、マットというハッカーをFBI本部まで連行せよとの指令を受けてしまい……。


~感想~
ダイハードの名に恥じないアクション大作。
不死身の男マクレーンが不死身さとノリだけで後先考えずに、デジタル時代の悪を腕力とひらめきで殲滅する。アナログTUEEEEEEEEEE!!
また今回はマクレーンがつれまわすハッカー青年との友情と、彼の成長を描いたバディムービーとしての色も濃く、楽しみどころは多い。同じくブルース・ウィリスがお調子者の青年とコンビを組む『16ブロック』のパロディがあるのもご愛嬌。
公開後、アメリカのネット掲示板にブルース・ウィリス本人が降臨し、疑うファンに顔をさらして大騒ぎになったそうだが、そのことから連想して「マクレーンと●●を戦わせようぜスレ」みたいなむちゃくちゃな展開が楽しくてしかたない。これぞダイハード!


評価:★★★★☆ 9
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DVD感想―『16ブロック』

2008年11月12日 | 映画感想

~あらすじ~
NY市警のジャック・モーズリー刑事は、夜勤明けのある日、上司から証人エディを16ブロック、約1.6キロ先の裁判所まで護送してほしいと頼まれる。
15分もあれば終わる仕事と説得され渋々引き受けたジャックだったが……。


~感想~
ブルース・ウィリス主演のアクションといえば、どうしてもジョン・マクレーンの影がちらついてしまうが、今作は特殊メイクと好演で、あちこち病んでいそうで油断したらいまにも死にそうな、老境にさしかかった男という独自のキャラを形作れている。
むこうみずで勢いだけで突っ走るところはマクレーンと同じだが、こちらはいつ(負傷ではなく内臓系の原因で)吐血して倒れるのかわからない病体。不死身ぶりと強運を笑う余裕がない。
『フォーンブース』のようないわゆる箱庭映画だが、駆け引きや頭脳戦は少なく、行き当たりばったりで逃げ回りながら次善の手を打っていたら事態が好転しました系の映画なので、なにも考えずに見るべし。時系列のずらしかたが見事で、意表を突いてくれる編集もうまい。
翳のある主人公とあいまって全体的に暗く打ち沈んだ雰囲気だが、ラストは打って変わって非常に明るく救われて、実に後味がいい。
だがDVD特典のアナザーエンドはどうしようもないほど暗く、こっちを採用していたら評価は著しく変わっていただろうなと興味深い。
どうでもいいがこのパッケージはスティーブ・オースチンにしか見えないなあ。


評価:★★★☆ 7
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DVD感想―『デジャヴ』

2008年11月11日 | 映画感想

~あらすじ~
500人以上もの犠牲者を出したフェリー爆破事件。
捜査を開始したATFのダグ・カーリンは、FBIの特別捜査班に招かれ、政府の極秘装置“タイム・ウィンドウ”と呼ばれる監視システムを使った事件解明に協力することになるのだったが……。


~感想~
事前に「どんでん返し映画」と聞いていたが、これどんでん返しと言わない。
サスペンスかと思ったらSFかと思ったらアクション映画だったのはたしかに「どんでん返し」だが、伏線がはまりだしたあたりから、アクション映画に比重を移してしまい、せっかくの伏線がもったいないことに。
むしろはじめからSFアクションだと承知していたほうが楽しめただろう。


評価:★★☆ 5
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映画感想―『ヴォイス』

2008年11月09日 | 映画感想

~あらすじ~
声楽の素質を持つ女子高生ヨンオンは、音楽室に居残り、歌の練習をしていた。
そこにどこからか入ってきた聴き慣れない声。
その夜、ヨンオンが殺害された。


~感想~
姿は見えないが声だけが親友の耳に届き、校舎に閉じ込められた主人公という「世にも奇妙な物語」テイストの設定がまず目を引く。
だがその設定が十全には活かされず、名物のどんでん返しも意外性に乏しく、いまいち小粒な印象。
さすがに韓国ホラーだけに見て損することはないのだが。
どうでもいいが主要人物が終始「音楽の先生」呼ばわりされるのはあんまりじゃなかろうか。


評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『十三回忌』小島正樹

2008年11月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ある素封家一族の、当主の妻が不審死を遂げが、警察はこれを自殺として捜査を打ち切ってしまう。
当主の妻の一周忌には「円錐形のモニュメントに真上から突き刺さった少女」、三回忌には「木に括りつけられ首を切られた少女」、七回忌には「唇だけ切り取られた少女」と忌まわしい殺人が続いていく。
そして迎えた十三回忌。厳戒態勢のなか、やはり事件は起こった。


~感想~
島田荘司との共著という異色のデビューを果たした作者がひとり立ち。
詰め込みすぎて窮屈な感もあるが、多くの仕掛けをぶち込み奇想を演出した力作である。
島田荘司といえば、ひとつ間違えばバカな物理トリックというわけで、今作も期待通りに豪快なトリックを見せてくれる。
特に「木に括りつけられ首を切られた少女」のトリックがすごく、想像するだに笑うしかない。
事件もトリックも詰め込みすぎて、探偵がちょっと頭をひねっただけで次から次へと真相を当てていくのも明らかにやりすぎ。だが、最後に目を丸くするようなひねりまで加えていて、ありとあらゆるトリックを網羅してみせたのは素直にたたえるべきだろう。
もっと削れば見栄えがするだろうが、しかし(単身)デビュー作ならではの、このやりすぎ感をこそ楽しむべきである。
なお、ほうぼうで文章が下手だと槍玉に挙げられているが、もっと酷い文章の本は山ほどあるし、この作者は言うほど下手ではないことを強調しておきたい。


08.11.8
評価:★★★☆ 7
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映画感想―『霊 リョン』

2008年11月07日 | 映画感想

~あらすじ~
記憶をなくした女子大生ジウォンの前に、ある日高校時代の同級生だという女性ユジョンが現われ、共通の友人だったウンソが死んだと聞かされる。
数日後、大学を訪れた刑事からユジョンもまた死んだことを知らされる。ウンソとユジョンの2人の死に共通していたのは、どちらも“水のない場所”での溺死という点。事件の謎が失われた記憶の中にあると感じたジウォンは、自らの過去を調べ始めるのだが……。


~感想~
「どんでん返し映画が見たければ韓国ホラーを観ろ」という格言が(僕の中には)あるのだが、まさにその好例。
どんでん返し映画です。と書けばそれだけで感想になる作品である。
それにしても、日本に持ち込まれる韓流ホラーはほとんどがこういった映画なのだが、韓国では当たり前なのか、それとも仕入れる日本側の趣味なのかは興味あるところ。
結末を付けないことがホラーだと信じ込んだ、凝り固まった頭の和製ホラーとは一線を画した韓流ホラーに大ハズレなし。


評価:★★★ 6
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