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ミステリ感想―『金糸雀の啼く夜』高里椎奈

2005年09月16日 | ミステリ感想
~感想~
いつもどおり。
読者には解きようもない事件を薬屋さんたちが解決するだけ。
毎度思うのだが、氏の文章は間の取り方が下手だ。
間を置くべきところで置かず、詰めるべきところで空ける。読んでいて非常にリズムが悪い。
盛りあげようとしている場面で描写が淡々と流れてしまい、展開に緩急がない。
かと思えば、本筋に関わらない脇道の描写がのんべんだらりと続き、読者を飽きさせる。(むしろそこがメインだとおっしゃる向きもあるだろうが)

今回のお話は上流階級が舞台なおかげで、普段以上に会話が鼻につき、細かい心理描写(というか心理解説)がいっそう間を悪くしている。
肝心の(↓以下ネタバレ↓)
イェンリーの過去はファンタジィな物語で、いきいきと描かれているのだが、せっかく過去の物語を紡いだところで、その人物が初登場では感慨なんてさっぱり抱けない。
せっかくのシリーズ物なのに、なぜいままでイェンリーをストーリーに一切からめてこなかったのか?
そうすれば「いままで脇役だった彼にはこんな裏があったのか」と意表をつけたのに。不思議でならない。

もうひとつの主軸だった座木vs秋は盛り上がること皆無で、「秋の手の平で転がされていたのだ」と説かれても、秋の暗躍に無理がありすぎて(計画はずさんだわ、あまりにもご都合主義だわ)伏線に驚くこともできない。

些細なことだが、誤植や用法の誤りも目に余った。

もう辛いよ。早く見返してくれ。


評価:★☆ 3
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