小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

昨年9/1のNXT SUPER TUESDAY #580  アイアンマン戦の結末

2021年09月30日 | 今週のNXT
ストリートファイト
ブリーザンゴ(タイラー・ブリーズ&ファンダンゴ)&アイザイア・スコット ◯-× レガード・デル・ファンタズマ(サントス・エスコバー&ラウル・メンドーサ&ホアキン・ワイルド)
(JMLドライバー)

2週限定で火曜に放送された特番の1日目。
前半はフェイス組が凶器を駆使して圧倒するが、ファンタズマは空中殺法で反撃。
さらに前タッグ王者のインペリウムが現れタイラー・ブリーズを5人がかりで襲うが、ファンダンゴとスコットがトップロープより高い機材の上からダイヴし4人をなぎ倒す。そしてただ一人回避したエスコバーをすかさずスコットが必殺技で仕留めた。


ケイシー・カタンザーロ ×-◯ キャンディス・レラエ
(カーブストンプ)

事前にケイシーのPVが流れたわりにあっさりとカーブストンプ(ポール・バーチル式)でやられた。


ブロンソン・リード ×-◯ ティモシー・サッチャー
(フジワラアームバー)

サッチャーはせっかく捕らえたのに打撃戦を挑んでしまい自ら苦戦を招く。
だがそこへ一軍から降格してきたオースティン・セオリーが現れ、リードを襲撃。サッチャーはすかさずクロスアームバーに固め、逃げられかけるとフジワラアームバーに切り替えてタップさせた。


NXT王座決定4ウェイアイアンマン戦
ジョニー・ガルガノ アダム・コール フィン・ベイラー トマソ・チャンパ

60分経過時点で最も多くのフォールかタップを奪った者の勝利となるルール。4人で行うのはWWE含めても史上初のはず。
4人いると容易に決着に至らず、25分頃にアダム・コールはバレットクラブメンバーのフィン・ベイラーに共闘を呼びかける。フィンは応じたふりで油断させると場外へ放り捨て、トペコンヒーロで追い撃ちすると場外のアクリル板へジョン・ウーで叩きつけ、リングに上げてクー・デ・グラで初のフォールを奪った。

フィン・ベイラー ◯-× アダム・コール

リードしたフィンが3人に狙われ、チャンパがフェアリーテール・エンディングを決めたが、ガルガノがチャンパを場外へ投げ、フォールを横取りした。

ジョニー・ガルガノ ◯-× フィン・ベイラー

スリングショットDDTを狙うガルガノをスーパーキックで撃墜したコールがすかさずパナマサンライズを決めて追いついた。

アダム・コール ◯-× ジョニー・ガルガノ

ガルガノとコールに二人同時にウィローズベルを浴びせたチャンパがコールへフェアリーテール・エンディングで駄目押しし、これで4人が同点で並んだ。

トマソ・チャンパ ◯-× アダム・コール

その後は誰も抜け出せないまま残り1分を切る。チャンパが雪崩式シュバインでガルガノを仕留めたものの、すかさずフィンがクー・デ・グラを突き刺し、3カウントが入る。
フィンは勝利を確信したが残り10秒でコールが背後からラストショットを決め、終了直前に3カウントが叩かれた。

フィン・ベイラー ◯-× トマソ・チャンパ

アダム・コール ◯-× フィン・ベイラー

ウィリアム・リーガルGMはフィンとコールの二人に決着戦を命じた。
コメント

昨年8/26のNXT #579  四日天下

2021年09月29日 | 今週のNXT
・カリオン・クロスがNXT王座を返上

4日前のTAKEOVERで新王者に輝いたばかりのクロスが、試合中の負傷により長期欠場となり、NXT王座を返上した。塩試合だったが負傷の影響もあったのだろうか。


NXTタッグ王座戦
インペリウム(ファビアン・アイクナー&マーセル・バーセル) ×-◯ ブリーザンゴ(タイラー・ブリーズ&ファンダンゴ)
(ダイビングレッグドロップ)王座奪取

解説にはプロレス史上最も説得力のない必殺技の一つウェイストランドでおなじみウェイド・バレットが就任。
ブリーザンゴは特番のプレ・ショーでレガード・デル・ファンタズマとオニー・ローキャン&ダニー・バーチと戦い、ブリーズがローキャンをスーパーモデルキックで沈め挑戦権を獲得したとのこと。

試合は交代されても相手に主導権を与えない、をテーマにしているのか交代されてもそのまま追撃されるケースがなぜか多発。ブリーズも交代してすぐ捕らえられるが、ツープラトンをかわして二人続けてスーパーモデルキックを浴びせると、ファンダンゴがダイビングレッグドロップを二人同時に喰らわせ、アイクナ―をフォールし、一軍・二軍通じて初のタッグタイトルを獲得した。


トマソ・チャンパ ◯-× ジェイク・アトラス
(ウィローズベル)

チャンパはクロスに負けて以来2ヶ月ぶりの登場。簡単にアトラスを料理した。
試合後もいたぶり続け、病院送りにし存在をアピールした。


ミア・イム ×-◯ ショッツィ・ブラックハート
(ダイビングセントーン)

先に入場したミアへ、関係ないロバート・ストーンがアリーヤとともに現れアピールしていると、ショッツィが背後からストーンを戦車で轢いて登場。
ミアのミサイルキックを自爆させ、背中へのセントーン、腹へのダイビングセントーンと畳み掛け勝利した。


・NXT王座の行方

ウィリアム・リーガルGMが久々にリングに上がり、次週ジョニー・ガルガノ、トマソ・チャンパ、フィン・ベイラー、アダム・コールの4人による史上初の4ウェイ60分アイアンマン戦で新NXT王者を決定すると発表した。
ちなみに前王者キース・リーはこの週に早くも一軍昇格を果たした。


NXTクルーザー級王座戦
サントス・エスコバー ◯-× アイザイア・スコット
(ヘッドバッド)防衛成功

エスコバーはスコットの独創的なムーブに手を焼き、場外戦でアクリル板と階段に叩きつけペースを奪い返す。
だが挑発的な打撃で目を覚ましたスコットは反撃し、レガード・デル・ファンタズマの二人が救援に駆けつけるが、すぐブリーザンゴに排除される。
スコットはJMLドライバーを決めたがロープに近すぎて逃げられ、エスコバーはリング下に隠してあったエル・イホ・デル・ファンタズモの覆面をかぶる。額が出っ張っており、鉄板か何かが仕込んであるようで、ヘッドバッドを喰らわせるとスコットは昏倒し、フォールを奪われた。


ドレイク・マーベリック ×-◯ カイル・オライリー
(ヒールホールド)

キリアン・デイン相手に優勢だった試合を壊されたマーベリックの報復戦だったが、不知火をかわされるとヒールホールドに捕らえられ、力尽きてタップした。

ロデリック・ストロング&ボビー・フィッシュと三人でいたぶっていると、デインが現れイスで三人を追い払う。だがマーベリックもクローズラインでなぎ倒してしまった。


紫雷イオ&リア・リプリー ×-◯ ダコタ・カイ&ラクエル・ゴンザレス
(チョークスラム)

終盤、メルセデス・マルティネスがエプロンに立つリアの足を払い階段に落下させる。
リアはなんとか立ち上がり、孤立したイオとの交代にこぎ着けるが、手負いではラクエルに敵わず、豪快なチョークスラムで叩きつけられた。
コメント

昨年8/22のNXT TAKEOVER ⅩⅩⅩ #578

2021年09月28日 | 今週のNXT
フィン・ベイラー ◯-× ティモシー・サッチャー
(クー・デ・グラ→1916)

急ごしらえの因縁試合。接触していると関節を取られるサッチャーにさしものフィンも苦戦するが、アンクルロックを耐え抜くと必殺技2連発でかたを付けた。


NXT北米王座決定5ウェイラダー戦
◯ ダミアン・プリースト ジョニー・ガルガノ ブロンソン・リード キャメロン・グライムス ベルベティーン・ドリーム
戴冠

4階建てのスーパープレックス、キャンディス・レラエを背負ったリードのガルガノへのスプラッシュ、場外フェンスを超えて画面外まで飛んで行くベルベティーンなど衝撃映像が連発。
最後はプリーストとガルガノがベルトをつかんで引っ張り合うが、握力の尽きたガルガノが落下し、プリーストが新王者に輝いた。


アダム・コール ◯-× パット・マカフィー
(パナマサンライズ)

NXTでもこういう有名人を迎えた試合をやるようになったのかと感慨深い。
というかマカフィーが異常にプロレスが上手い。コールが受けてやる部分と全く関係なく空中姿勢の美しいセントーンボムやドロップキックを見せ、トップロープからムーンサルトで着地し、ひとっ飛びでトップロープに乗ってのスーパープレックスは何人が真似できるだろう。少なくともパンチはランディ・オートンの百倍上手い。
牛殺しや最後のパナマサンライズの受け身も完璧で、というかカナディアンデストロイヤーは素人に喰らわせる技じゃないだろww
ぜひまた試合を見たくなる堂々たるプロレスラーっぷりだった。


NXT女子王座戦
紫雷イオ ◯-× ダコタ・カイ
(ムーンサルトプレス)防衛成功

ダコタはGTKを決めるがロープに近すぎてブレイクされる。ブートをレフェリーに誤爆してしまい、イオのムーンサルトプレスが決まるがカウントは入らず。これまでおとなしくしていたラクエル・ゴンザレスがすぐにイオをチョークスラムで叩きつけたが、ダメージを負ったレフェリーのカウントは遅くフォールに至らなかった。
イオは初披露のカミゴェで反撃し、ラクエルもろともムーンサルトアタックでなぎ倒し、2発目のムーンサルトプレスでベルトを守った。

その後ラクエルがイオを襲ったが、リア・リプリーが現れ追い払った。


NXT王座戦
キース・リー ×-◯ カリオン・クロス
(雪崩式ドゥームズデイ・サイトースープレックス)王座奪取

無敗ながらこれまで特段良い試合をしたわけでもなく挑戦権を得たクロスだが、肝心のリーと全く手が合わない。いたって低調な試合展開のまま、盛り上がることなくなんか普通に勝った。
少なくともTAKEOVER史上最低のメイン戦だったことは疑いない。
今のところクロスの魅力は入場とスカーレットと顔芸だけで9割を占めており、試合内容自体はあんまり。リーの一軍昇格がすでに決まっており、新王者が必要だったがちょっと早計に過ぎたような気もする。 
コメント

今週のキン肉マン #358 超巨体超神 VS ジェロニモ!!

2021年09月27日 | 今週のキン肉マン
・なんの前触れもなく急に委員長たちの前に浮いてるカメラ
・きっとザ・マンの厚意だろう
・さっそく吐血ww
・やられっぱなしにはならないが攻められ続けるジェロニモ
・サンシャインの地獄のピラミッドに刺されたのを思い出す
・唾吐きで挑発
・モラルが低いのではなくジェロニモを怒らせ力を出させる目的だろう
・ベジータのヤツで片膝をつかせる
・急に一線を越えて刃物で斬るエクスキューショナー
・これを衣装だからセーフは無理あるって
・肉のカーテンで防いでくれてよかった
・これで終わってたらどうするつもりだったんだエクスキューショナー
・一気に行く? カピラリアが乗ったらマジで終わりかねないぞ
・いいのかその決着で?
・カピラリアは膜を張って防ぐにしろアパッチのおたけびの威力は健在のはず
コメント

ミステリ感想-『ダック・コール』稲見一良

2021年09月24日 | ミステリ感想
~収録作品とあらすじ~
CM撮影のため山に泊まり込んだ若手カメラマンは、年に一回の撮影チャンスのその瞬間に、貴重なシベリア・オオハシシギを見つける…望遠
うだつの上がらないサムは夢のようなリョコウバトの大群とその大虐殺に出くわす…パッセンジャー
ガンを機に若隠居した私は、野生児のような少年に出会い、ともに密猟を企む…密猟志願
日系の志願兵として太平洋戦争を生き抜いたケンは、腕を見込まれ保安官とともに3人の脱獄犯を追う…ホイッパーウィル
炎上する船から脱出し波間を漂う源三は、板に乗った亀と鳥に出会う…波の枕
鴨に似せたデコイの模型は、少年に拾われささやかな冒険をする…デコイとブンタ

1991年このミス3位、東西ベスト(2012)81位、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞・短編


~感想~
鳥にまつわる6編の短編集。
このミス3位・東西ミステリベスト100で81位に選ばれてしまったが、まるっきりミステリではない。
また時代設定も登場人物もバラバラで繋がりもないのになぜか連作短編集と呼ばれるが、それも間違いである。
しかし自分のようなミステリ馬鹿の門外漢にもものすごく楽しめた珠玉の短編集であった。
ジャンル分けするなら冒険小説か、ハードボイルドだろう。1編1編の密度が濃く、文章が味わい深い。鳥に1ミリも興味が無い読者にもその魅力の一端を垣間見せ、ミステリしか読まない人間にも次から次へとページをめくらせる物語の面白さがあるのだ。

また作者は末期癌を宣告され、生きた証を残すために作家になり、デビューから5年で多くの賞を取り、そして病没したという人生そのものがハードボイルドだったようなすさまじくかっこいい人物である。
自分はミステリしか読まないが、ミステリでさえあれば、かすってさえいればなんでも読む。このミスにランクインしてくれたおかげで本作を読め、稲見一良を知ることができて本当に良かった。
幸いまだ何冊もランクイン作品があり、ちょっと優先的に読んでいこうと思う。


21.9.21
評価:★★★★ 8
コメント

ミステリ感想-『死体の汁を啜れ』白井智之

2021年09月23日 | ミステリ感想
~あらすじ~
世界屈指の殺人事件発生率を誇る牟黒市。
豚の頭をかぶった死体、頭と両手足を切断された死体、胃袋が破裂した死体。死体の中の死体…。
異常な殺人事件の数々にヤクザや悪徳刑事や悪徳占い師ら、ならず者たちが挑む。


~感想~
異常な死体にこだわった(?)連作短編集。
SF界隈ですら注目される飛び抜けた発想と、それに基づいた緻密なロジックに定評のある作者だが、本作はまず死体が異常なだけで特殊設定は無く、したがって異形の論理も今回は控えめ。
なぜそんな異常な死体が生まれたのかというロジックやさりげなく張られた伏線は相変わらず巧みだし、霞流一ですら長編一作で一件だけ扱った「死体で遊ぼ」が短編とはいえ8編も繰り出されるのは単純にすごいが、質は玉石混交で、絶えず誰も見たことないアイデアを出し続けてきた作者にしては、おとなしめのトリック・ロジックが多いのも確か。
とはいえグロトリックをグロ手掛かりからグロ論理で暴く個性は健在で、ファンなら十分に楽しめるだろう。
個人的には霞流一みたいな死体ゴラスイッチが素晴らしい「何もない死体」と、たった19ページながら、これとこれをこう組み合わせると不可能状況が出来上がる「屋上で溺れた死体」の発想の冴えが好みだった。


21.9.14
評価:★★★☆ 7
コメント

2018~2020年のミステリ遍歴

2021年09月20日 | 雑文
2018年
図書館のおかげで依井貴裕を全巻読めた。粗い点も多々あるが、半ば伝説になるのも納得の、他にない個性の光る作品ばかりだった。
月村了衛「機龍警察 暗黒市場」に打ちのめされ大ファンになった。都市伝説のように言われる「あまりの面白さで校正もついつい読んでしまった」のか誤植が山ほどあったのも印象的。
昨年の「NN」に続くメフィスト賞負の遺産の秋保水菓「コンビニなしでは生きられない」、名倉編「異セカイ系」は実に酷かった。酷かったがホームランか三振かの、あの頃のメフィスト賞が戻ってきたようでうれしかった。
旧作では長年、本棚で熟成させておいた浦賀和宏「松浦純菜シリーズ」を読み始めた。ちょうど読み終わった時に作者が急逝してしまい、一層思い出深いものとなった。
あの清涼院流水がミステリを離れ、英語講師やルイス・フロイス「日本史」の全訳をしていると知った。残念ながら続刊は出ていないようだが。
宇佐美まことに本格的にはまったのがこの年。「愚者の毒」で日本推理作家協会賞は取ったものの、ランキングには見向きもされていないが、とにかくエロくてとにかくすごいミステリを次々と放っている。


2019年
「私が殺した少女」ですっかり原尞のファンになってしまった。ハードボイルドとミステリの完璧な融合で、それに加えて驚異的な文章力でただ読むだけでも面白くて仕方ない。
周木律は「大聖堂の殺人」で堂シリーズを完結させた。ツッコミどころの山で非常に楽しく読めたが、本来の楽しみ方ではないだろう。森博嗣になれなかった理由はよくわかった。
数ヶ月前からあらすじと書影を予告され、たった一作で漫画化・映画化と必要以上に持ち上げられた今村昌弘だが、第2作「魔眼の匣の殺人」できっちり前作を超えてきた。周囲は騒がしいものの第3作はさらに2年半後と、作者は落ち着いている様子で安心して見守っていられる。
この年最大のトピックは相沢沙呼「medium」に尽きる。帯を埋め尽くす書店員サマの賛辞に、今やなぜか狙ったようにダメミスを推薦することでおなじみとなってしまった有栖川有栖の名が輝き、読む前から地雷臭がすさまじく、これだけで読む気を失ったという意見もいくつか見たほどだったが、読んでびっくり2019年を代表する傑作だった。
国民的作家への道を着実に歩んでいる米澤穂信は11年ぶりの小市民シリーズ「巴里マカロンの謎」を刊行。ミステリとしては簡単すぎるのにあの小鳩くんや小山内さんが一切真相に気づかないという不自然さで今ひとつだったが、シリーズ再開自体がうれしい。


2020年
浦賀和宏が急逝した。年齢が近いこともありひいきしていたが、ちょうど松浦純菜リーズを読み終えたタイミングで亡くなってしまうとは。本名がシリーズ主人公と同じだったり、「究極の純愛小説を、君に」が作者死去で完成するような内容だったりと驚かされた。近年も若い頃と同じ尖った作品を出し続け、色々な構想もあったそうで残念でならない。
昨年刊行の澤村伊智「予言の島」が個人的にスマッシュヒット。ホラー作家ならではの発想で心底驚かされた。
綾辻行人は「Another2001」をようやく上梓。ここ十年で一番推理が冴えて、真相を完璧に見抜いてしまい十全に楽しめなかった。
旧作では若竹七海「葉村晶シリーズ」を一気に読破。今さら読んでおいて恐縮だが全ミステリファン必読のシリーズである。
またコロナ禍により(?)前年11月~本年10月だったこのミス期間が1ヶ月前倒しとなった。突然の変更で話が違うと思った出版社も多いだろう。この影響は早くも翌2021年に現れ、例年より1ヶ月早い7~8月に話題作が集中することとなる。
コメント

2016~2017年のミステリ遍歴

2021年09月19日 | 雑文
2016年
刊行前からアニメ化決定という異例のスタートを飾った青崎有吾「アンデッドガール・マーダーファルス」が登場。マンガ化はしたもののいまだアニメ化はしていないが、続編も期待通りの面白さで続いて行く。
早坂吝は「誰も僕を裁けない」で社会派・エロ・ミステリの三身悪魔合体に成功。デビュー作の頃のエロさは据え置きでこちらもシリーズは順調に続いている。
旧作では宮部みゆき「ソロモンの偽証」のぶっちぎりの面白さに魅せられた。個人的には「模倣犯」に軍配を上げるが、歴史的傑作であることに違いはなく、通勤のお供に文庫版5冊を読んだ1ヶ月は至福の時間だった。
倉阪鬼一郎の小林幸子シリーズは昨年秋に刊行できず「桜と富士と星の迷宮」を今年刊行し閉幕となった。ミステリもその後書いていないような…。
昨年話題をさらった「その可能性はすでに考えた」の続編「聖女の毒杯」は、前作をはるかに上回る素晴らしい出来だった。やはり量産できる作風ではなく、第3作は5年経った今も出ていない。
個人的には一度手放した森博嗣「Gシリーズ」・「Xシリーズ」の読破を開始。質の低下は否めないが、なんだかんだで楽しく読めた。
最強ミステリ漫画「Q.E.D.証明終了」の加藤元浩が初のミステリ小説をリリース。正直、可もなく不可もない出来だったが、第2作は見違えるほど面白かった。まず漫画家が小説も普通に書けるのがすごいと思う。
鮎川賞に輝いた市川憂人「ジェリーフィッシュは凍らない」がこのミス・文春・本ミスでベスト10入り。「現代の十角館の殺人」とまで呼ばれた。犯人はモロバレだったが。
また中古市場で数万円で取引されている飛鳥部勝則「堕天使拷問刑」をブックオフでゲット。噂に違わぬ怪作で家宝にした。


2017年
国内では今村昌弘「屍人荘の殺人」の年として記憶されるだろう。ミステリとアレを悪魔合体させたイロモノというだけではない、大型新人の華々しいデビューだった。
そして海外では陳浩基「13・67」の年である。海外ミステリへアンテナを張っていない自分にも超絶傑作の声が届き、比較的苦手ではない中国語圏の作品なので読んでみたら噂と寸分たがわぬ空恐ろしいほどの歴史的傑作だった。
この年に読んだ旧作では山田風太郎「妖異金瓶梅」に尽きる。噂に聞いていた以上の驚愕の作品で、いろいろ語りたくなるが何を言ってもネタバレになる。よくぞこれをネタバレを踏まずに読めたものだ。
通勤圏内の気軽に寄れる位置に図書館の出張所が出来たため、梶龍雄「龍神池の小さな死体」、飛鳥部勝則「誰のための綾織」、門前典之「屍の命題」も読めた。どれも最高だった。
井上真偽は「探偵が早すぎる」をリリース。「その可能性はすでに考えた」のような瞬殺ぶりは本家には及ばなかったが、これはこれで良かった。ただ上下巻なのに下巻の帯で「大好評シリーズの続巻」とうたった講談社は叩かれて欲しいし、これが中学生の読書感想で人気というニュースには笑った。感想文の参考にしようと思ってうちに来た中学生はざまあみろ。
綾辻行人「十角館の殺人」から30年を記念し、講談社は「7人の名探偵」を企画。新本格オリジナル・セブンというパワーワードとその人選や、オリジナル・セブンの一部の空気読めなさはアレだった。
マイナスの方のトピックでは柾木政宗「NO推理、NO探偵?」が出色。内容の壮絶さもさることながら読んだ人の多くが名前を呼ぶ気すら無くし「、?」や「NN」と様々な隠語で呼び始めたのも笑った。
マイナスといえば(マイナスといえば?)宿野かほる「ルビンの壺が割れた」も忘れてはいけない。「すごい小説ができたからキャッチコピーを書いて欲しい」という企画で、無料だから読んだがマジでもう駄目すぎてすごかった。2作目以降は話題にもなっていない炎上商法で、これを名刺代わりの10選に入れている人がいて震えた。もっとこう…あるだろう!
また蘇部健一はルビンのナントカを早々に丸パクリ……インスピレーションを得た「小説X」を企画。タイトルを付けて採用されれば5万円という生々しさに笑った。
余談だが自分は早ミスをもともと評価しておらず、記録にも含めていなかったが、「13・67」をランキングから消し去ったことで完全に見放した。
コメント

2014~2015年のミステリ遍歴

2021年09月18日 | 雑文
2014年
ブログへのコメントでおすすめいただいた北山猛邦「『ギロチン城』殺人事件」が空前の面白さだった。今思い返してみてもあれはミステリ史に残っていい作品だったと思う。もっと知られてくれ。
倉阪鬼一郎が毎年秋に刊行していたバカミスはこの年の「波上館の犯罪」で頂点を極めた。すさまじく労力がかかってるけど数ページ読んだら気づく仕掛けで読者の度肝を抜いた。
麻耶雄嵩は「さよなら神様」で神様が一行目に犯人を公開するという神業を披露。やっぱり麻耶は頭おかしい。
「ゴールデンスランバー」は絶賛したものの、「陽気なギャングが地球を回す」が全く口に合わず数十ページで挫折した伊坂幸太郎に再挑戦。この後は読むたびに好きな作家になっていたが「陽気な~」にはまだ挑んでいない。
乱歩賞が久々に輩出した有望新人の下村敦史が「闇に香る嘘」でデビュー。これも語り手が全盲の中国残留孤児の老人という、題材が面倒すぎて誰も手出ししないものだが、今後も誰も書かない未知の鉱脈を延々と探し続ける稀有の作家となっていく。
メフィスト賞からは早坂吝が「◯◯◯◯◯◯◯◯殺人事件」で衝撃のデビュー。エロと本格ミステリを融合させた作品をこの後も出し続けるし、エロを離れても優れた、本格ミステリの新たな旗手になるとはこの時点ではまだ思わなかった。
さらに大型新人としては白井智之のデビューもこの年。グロとSFと本格ミステリの悪魔合体で、その卓抜した発想はSF界隈でも話題になっていく。自分は正直ここ十年の新人の中で最も評価している。
年末ランキングは米澤穂信がノンシリーズ短編集で制した。
個人的には全然話題にならなかった(と思うが)歌野晶午「ずっとあなたが好きでした」は新たな代表作になっていいと思う。
島田荘司御大は「幻肢」で初の映画化された。なぜ「幻肢」でと疑問しか湧かない出来事だった。
余談だが2ちゃんで昨日読んだ本の感想と十数年前の感想を一緒くたにされ「あいつの主張は一貫してない」と無茶な叩かれ方をしたのもこの年だった。あれは笑った。


2015年
伝説的な噂だけ聞いていた依井貴裕「夜想曲」をゲット。噂に違わぬ良作だった。
旧作では高野和明「ジェノサイド」を読んだ。作者が日本人でなければとっくにハリウッド映画化されていただろう歴史的傑作である。
赤川次郎も初体験。デビュー作「幽霊列車」は奇想揃いの珠玉短編集だった。
メフィスト賞でデビューした井上真偽が「その可能性はすでに考えた」で飛躍を遂げた。ノベルス版で30ページ程度の問題編から無理くりひねり出されたバカトリックを、全ての可能性を検討済みの名探偵がタイトル通りに瞬殺するという驚異の作品で、続編はより出来が良かった。
深水黎一郎は「ミステリー・アリーナ」で多重推理ジャンルの限界に挑戦。最高の褒め言葉のつもりなのだが、まさに全力の悪ふざけだった。
北山猛邦は「オルゴーリェンヌ」であるジャンルの最高到達点を叩き出した。そのジャンルがなんなのか口にするだけで即ネタバレとなるため今後も語られることはないだろうが、間違いなく一つの頂点である。
コメント

2011~2013年のミステリ遍歴

2021年09月17日 | 雑文
2011年
先日「3.11の時なにを読んでいたか」という話題になって見返したら水田美意子「殺人ピエロの孤島同窓会」を首をひねりながら読み返していたのを思い出した。作者は12歳というただそれだけでデビューした代物で、何を言っても大人げなくなるから言及しづらいが、うん、まあ、12歳であんな量の文章を書けたのはすごいと思う。
その2週後には日本一のダメミスと自信を持って推薦できる森山赳志「黙過の代償」も読んだ。これはもう本当にすごいので逆に読んで欲しい。
乱歩賞でデビューした遠藤武文「プリズン・トリック」もダメミス界を賑わせた。その後なんと市議会議員になってしまったのも面白すぎた。
1998年のデビュー作「名探偵に薔薇を」をネタ被りと理不尽に批判され、以来マンガ原作等で活動していた城平京が「虚構推理」で13年ぶりにカムバック。4年後にマンガ化、9年後にアニメ化とやや遅咲きの花を咲かせた。
麻耶雄嵩は「メルカトルかく語りき」で本格ミステリの極北に挑んだ。
面白く読んでいた海堂尊「チーム・バチスタの栄光シリーズ」はこの年に読んだ「イノセント・ゲリラの祝祭」で見限った。
オールタイム・ベスト10に入る宮部みゆき「模倣犯」をこの年に読んだ。あの解決編は歴代1位くらい好き。
本格ミステリ界のトピックとして、米澤穂信「折れた竜骨」が「特殊設定ミステリ」と呼ばれ、この手の作品の総称として定着していくこととなった。


2012年
綾辻行人の待望の館シリーズ第9弾「奇面館の殺人」がリリース。法月綸太郎も久々の長編「キングを探せ」を出した。
個人的に猛プッシュしている似鳥鶏は「楓ヶ丘動物園シリーズ」を開始。色々と映像化しづらい「市立シリーズ」とは異なり、容易にアニメ化もできるし門戸の広い気軽に楽しめる作品なのでいつかブレイクしてくれ。
個人的には思い出したくもない事情により一時的に小説家全般に嫌気が差して10冊程度しか読めなかった年だった。


2013年
島田荘司御大が「アルカトラズ幻想」で豪腕の健在ぶりを示し、信者としてもうれしくなりミステリ愛を取り戻した。
御大は7年ぶりの御手洗潔シリーズ「星籠の海」も出したが…映画化もされたけど…もっと面白いシリーズはいくらでもあったわけで…一般層の目に触れる島田作品は微妙なものばかりで悲しい。
受賞者の打率が極めて低い日本ミステリー文学大賞新人賞を獲得した葉真中顕が「ロスト・ケア」でデビューし、以降も様々なジャンルで活躍する。
浦賀和宏は「彼女の血が溶けてゆく」で桑原銀次郎シリーズを開始。SFやぶっ飛んだ設定を好む作者だが、地に足のついた堅実な、しかし途方もない超展開を見せる良作揃いで、もう少し話題になってもよかった。
メフィスト賞からは周木律が「眼球堂の殺人」でデビュー。本格ミステリの良いところと駄目なところを凝縮したような、何かと粗い作品ばかりだが、あの頃の館ミステリをまた見せてくれたことには感謝している。
さらに横溝正史ミステリ大賞からは河合莞爾も「デッドマン」でデビュー。隠す気がさらさら無い島田荘司愛にあふれた作品で、正統後継者の貫禄を以後の作品でも見せつける。
寡作で知られる倉知淳はまさかの2ヶ月連続で新作を出したが、以降毎年のように新作を出し続け、単に刊行してくれる出版社が見つからなかっただけなのでは?と思わせたし、何かをこじらせたようで質がガクンと落ちたのはファンとして残念な限りである。
年末のランキングでは、後にまさかのキムタク主演でドラマ化された長岡弘樹「教場」がこのミス2位、文春1位と上位を賑わせた。
連城三紀彦が逝去した。著作は後年は恋愛物ばかりだったが、恋愛小説でありながらミステリでもあり続け、三津田信三に「あれほどのミステリ作品を書いた作家が、そう安々と己がミステリスピリットを捨てるわけがない。いや、仮に本人が捨てようと思っても、それは自然と滲み出してくるのではないか――。実際、その期待は裏切られませんでした」と言わしめた。
コメント