小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『カインの子どもたち』浦賀和宏

2020年03月31日 | ミステリ感想
~あらすじ~
立石アキは死刑確定から40年以上拘置されている死刑囚の孫で、両親は冤罪を訴え熱心に運動しているが、アキは祖父との面会も拒むほど複雑な感情を抱いていた。
そんな彼女の元を、同じく冤罪を訴えていた別の死刑囚の孫でジャーナリストの泉堂莉菜が訪れる。


~感想~
今回も明言されていないが「Mの女」、「十五年目の復讐」に続くシリーズ第三弾。
しかも前二作は幻冬舎から刊行されていたが、今回は実業之日本社からの出版である。特に喧嘩別れとかしていなかったはずだが、シリーズ完結編だけ版元を変えるな。自由か。

もっとも作者の急逝により本当に完結編なのかは永遠にわからなくなってしまったが、三作で話はまとめられており破綻は無い。だが安藤直樹シリーズの登場人物が顔を出しているそうで(※全作読んでいるが昔過ぎて全く覚えていない)2つのシリーズが合流する構想もあったのかもしれず、つくづく惜しまれる。

本作の話に戻ると、前二作の裏側を語るもので、主役格の泉堂莉菜の人物が掘り下げられる。
当然ながら前二作のネタバレを多く含むため必ず出版順に読んでもらいたい。
ミステリ的な技巧もあるにはあるが、前二作ほど熱心ではなく、シリーズの背景を物語るのが主眼であり、そっち方面の期待はしないほうが吉。読後感は桑原銀次郎シリーズに近いだろう。
シリーズ前二作を読んだなら黙って読むべきで、版元も違えばシリーズ作品だとも書かれていないので、未読の方はくれぐれもご注意を。


20.3.31
評価:★★☆ 5
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12/18のNXT #540  絶対王者敗れる

2020年03月30日 | 今週のNXT
NXT王座戦
アダム・コール ◯-× フィン・ベイラー
(ローブロー→ラストショット)防衛成功

前半にコールはエプロンを走るフィンの足にスーパーキックを浴びせ、これが終盤に効いてくる。
足の痛みからクー・デ・グラのセットを遅らせて事前に潰し、発動されても自爆を誘いラストショットを喰らわせた。
だがフォールには至らず、全く対策を練っていなかったのかこの試合3発目のジョン・ウーを喰らい、クー・デ・グラを被弾。フィンは駄目押しの1916を狙ったが、そこへジョニー・ガルガノが2ヶ月ぶりに姿を現した。
フィンは思わず技を外してしまい、コールは急所パンチからラストショットを喰らわせ、勝利を拾った。

ガルガノは襲撃された報復にフィンをイスで何度も殴りつけた。


ダミアン・プリースト ◯-× キリアン・デイン
(ローリングカッター)

第1試合に続きヒール同士の一戦。デインはジャケットを投げつけ視界を奪ったり、レフェリーの制止を悪用して襲ったりとよりヒールに振る舞う。
さらにおしゃれな模様付きのテーピングをしてきたプリーストの脇腹を執拗に狙い、一方的に攻め続ける。
だがCMが明けると一転してプリーストが大攻勢に転じ、脇腹の痛みとデインの体重から未遂に終わる技も多かったが、最後はベイダーボムを剣山に切り返し、すかさず必殺技で仕留めた。


KUSHIDA ×-◯ キャメロン・グライムス
(ダブルフットスタンプ)

KUSHIDAはグライムスから奪った帽子をかぶり入場。やけに似合う。
前回の対戦で何をやっても肩が外れないと思ったのかKUSHIDAはえぐい腕攻めを展開し、グライムスに甲高い悲鳴を上げさせる。
グライムスは得意のバク転パワースラムから反撃に出ると、ホバーボードロックを正調、雪崩式、ロープバウンド式全てを回避して見せ、前回の決まり手となったビクトリーロールを雪崩式で喰らったもののカウント2.9で返す。そして再三回避されたフットスタンプで踏み潰し、帽子を取り返した。


サンタナ・ギャレット ×-◯ 紫雷イオ
(ムーンサルトプレス)

サンタナは熟練の動きで主導権を握るが、イオはロープに首を叩きつけるラフ殺法で反撃。高速のムーンサルトプレスで試合を制した。


ピート・ダン ◯-× トラビス・バンクス
(ビターエンド)

バンクスは9割の技が打撃で、同じく打撃も得意なダンと容赦なくしばき合う。
投げ技も持っており、ビターエンドをDDTに切り返すと、完全にキークラッシャーなTBクラッシャーを喰らわせるがダンはギリギリで肩を上げた。
最後はスーパープレックスを裏返して落とす荒業で返したダンが、絶対必要ないバズソーキックを念押しに浴びせてからのビターエンドで勝利した。
その後二人は健闘を称えてグータッチを交わした。


NXT女子王座戦
シェイナ・ベイズラー ×-◯ リア・リプリー
(雪崩式リップタイド)王座奪取

体格で勝るリアのパワーに劣勢のシェイナを救うべくお供二人が参上。秒で排除されたがリアのトペ・コンヒーロをお供二人を犠牲に回避し、シェイナはリアの左腕を階段で踏み抜くことに成功する。
腕を攻められ続けたリアはミドルキックを受け止め、片腕で反撃に出てリップタイドを返すが、直前のドロップキックでレフェリーを巻き添えにしてしまいカウントが入らない。
シェイナは不在の隙にイス直下DDTからキリフダクラッチにつなげ長時間にわたり絞め上げるが、首が頑丈なリアは耐え抜き、失神寸前にレフェリーの襟首をつかんでカウントを止め、さらにレフェリーを支えに立ち上がると脱出に成功。
シェイナはトップロープに上げてとどめを刺そうとしたが、口撃している間に回復を許してしまい、頭突きから雪崩式のリップタイドにつなげられ、400日以上守っていたベルトをついに奪われた。
コメント

12/11のNXT #539  ベルトと嫁を獲る男

2020年03月27日 | 今週のNXT
NXTクルーザー級王座戦
リオ・ラッシュ ×-◯ エンジェル・ガルザ
(ウイング・クリッパーホールド)王座奪取

挑発に乗ったラッシュがアナウンス中に殴りかかり、以降も技の合間にただの殴り合いが繰り広げられる。
ヒールながらややガルザへの歓声が上回り、リング中央まで飛ぶスパニッシュフライや、掟破りのロープバウンドスタナーを出し、ラッシュはガルザの必殺技のウイング・クリッパー(ダブルアームボム)をやはり掟破りで返す。
さらにファイナルアワーを浴びせたがガルザは這いずって場外へ向かい、ラッシュがタイツをつかむも脱いで逃げられる。
ラッシュは十字を切って場外に倒れたガルザにファイナルアワーを敢行したが剣山で迎撃され、リングに上げられウイング・クリッパーを被弾。これもカウント2.9で返したものの、ウイング・クリッパーの態勢から絞め上げられると力尽きた。

念願のクルーザー級王座を獲得したガルザは恋人をリングに迎えてプロポーズし、嫁まで得た。


ラウル・メンドーサ ◯-× キャメロン・グライムス
(ウラカン・ラナ)

KUSHIDAとの対戦前に襲撃され出番を奪われたメンドーサは気合十分で技を次々と決める。
グライムスは回転パワースラムで反撃するが、そこへ前夜にやはりグライムスに襲撃されたKUSHIDAが登場。
手出しするまでもなく、動揺したグライムスはメンドーサに丸め込まれて敗北し、さらにKUSHIDAに帽子を盗まれてしまった。


トラビス・バンクス ◯-× ジャクソン・ライカー
(フライング・レッグラリアート)

NXT UK所属のバンクスが初参戦。ライカーに果敢に正面から打撃戦を挑む。
顔から出血してもひるまず動き続け、コーナーから反転しつつレッグラリアートを浴びせると、ライカーは体力に余裕がありながらも3カウント以内に返せず、投げ技ゼロの打撃オンリーでバンクスが番狂わせを演じた。


ミア・イム ×-◯ ダコタ・カイ
(スクールガール)

ミアはダコタの古傷の右膝を狙い続けるがダコタは全然痛がる素振りを見せない。なぜだ。
プロテクト・ヤ・ネックを浴びたダコタは場外へ逃げて回復すると、リングに戻りティーガン・ノックスから奪って持ち歩いている膝当てを持ち出すがレフェリーに止められる。だがその隙にターンバックルのカバーを手際よく外すと、ミアの喉を叩きつけすかさず丸め込んでしまった。

反則攻撃に敗れたミアは激怒し、ダコタを場外のテーブルへバックスープレックスで投棄し報復した。


ブリーザンゴ(タイラー・ブリーズ&ファンダンゴ) ◯-× シン・ブラザーズ(サミル・シン&スニル・シン)
(ダイビングレッグドロップ)

205ライブ所属のシン・ブラザーズはボリウッド・ボーイズ時代にNXTに参戦し、クルーザー級クラシックやローデス杯にも出場していた。左肩にタトゥーがある方が弟のサミル。
エプロンへのパワーボムでサミルを、場外での必殺ツープラトンでスニルを料理したファンダンゴが、ダイビングレッグドロップでスニルにとどめを刺したが左肘を負傷。
復帰したばかりだったが再び長期欠場を強いられることとなった。
見直すと場外ツープラトンのエルボードロップで着地した際に負傷した様子。


カイデン・カーター ×-◯ ビアンカ・ブレア
(TOD)

ビアンカはゴングと同時に脱いだTシャツを投げつけて視界を奪い先制。自慢のパワーで圧倒する。
カイデンも高い身体能力を随所に見せて食い下がるが及ばず、必殺技で仕留められた。


NXT王座挑戦権争奪三つ巴戦
◯ フィン・ベイラー トマソ・チャンパ × キース・リー
(クー・デ・グラ)

チャンパが二人まとめてスパイクDDTで叩きつけ、フィンをシュバインに捕らえ倒れたリーの上に落とすと、リーは二人まとめてショルダースルーで投げ、チャンパとフィンはツープラトンの雪崩式ロシアンレッグスイープ(河津掛け)をリーへ返す。そしてフィンをシュバインに捕らえたチャンパをリーが肩車しエレクトリックチェアーで背後に落とすと、三つ巴戦ならではの技の応酬に客席は沸き返る。
最後はシュバインに耐えたリーがチャンパをライガーボムで叩きつけた瞬間、フィンがクー・デ・グラをリーに突き刺し、挑戦権を手に入れた。
コメント

12/4のNXT #538  頑丈なレスラーとレフェリー

2020年03月26日 | 今週のNXT
ピート・ダン ×-◯ キリアン・デイン
(背負って飛び降りる)

ダンは衣装も脱がずに殴りかかるとデインの左手を捕らえ指折りを仕掛けるが、クロスボディで押しつぶされると、以降は一方的に攻められる。
ジャーマンから反撃に出るが場外へのムーンサルトをかわされ、着地の衝撃で古傷の左膝を痛めると、逆にトペでなぎ倒され、再びデインの猛攻を浴びる。
ダンはスーパープレックス、ムーンサルトアタックを返すが場外で立て続けに技を喰らい、リングに戻されるとデインはベイダーボムを狙うが、ダンはそれを三角締めに切り返す。しかしデインは強引に持ち上げてパワーボムで落とす。
ダンはコーナーに上ったデインに飛びつきスリーパーホールドで固めるが、デインは背負ったままリングに飛び降りる自爆技で押しつぶし、激戦を制した。


・アンディスピューテッド・エラをキース・リーが挑発

前回の試合中に負傷したボビー・フィッシュを除くエラの3人が現れアピールしていると、キース・リーが絡み、一人で3人を蹴散らす。
さらに逃げ出したアダム・コールをトマソ・チャンパが殴り倒した。


ザイア・リー ×-◯ シェイナ・ベイズラー
(キリフダクラッチ)

MMA出身のシェイナがプロレス的に攻め、ザイアが打撃戦を挑む展開。
序盤に必殺の竜巻蹴りを受けてしまったシェイナは素早く場外に逃げて回復すると、反撃に転じる。
最後は雪崩式サンセットフリップで投棄されたがカウント2で返すと、2発目の竜巻蹴りを回避しすかさずキリフダクラッチに固めて勝利した。


フォーガットン・サンズ(ウェズリー・ブレイク&スティーブ・カトラー) ◯-× アドリアン・アラニス&レオン・ラフ
(メモリー・リメインズ)

未契約のアラニス組はもともとタッグチームの模様。必殺ツープラトンからブレイクがラフをフォールした。


リア・リプリー --- ダコタ・カイ
(不成立)

ダコタの対戦相手としてリアが現れるが、戦う気はなく代わりにミア・イムに襲わせる。
数分は普通に戦っていたがゴングは鳴らされず、場外乱闘しながらレフェリーとともにバックステージへ消えていった。

そして残されたリアをシェイナ・ベイズラー一味が襲撃し、子分がやられている隙にシェイナがキリフダクラッチに固め絞め落としてしまった。


マット・リドル ◯-× カシアス・オーノ
(ブロデリック)

NXT UKに移籍したオーノが久々に参戦。
秒殺された因縁のあるリドルをキャッチレスリングで捕らえる。首を捻り上げながらのカッターやブレーンバスターは危険すぎる。
オーノは蹴り技に苦しみながらも掟破りのブロデリックを狙うが、脱出したリドルが本家ブロデリックを返し逆転勝利した。


KUSHIDA ◯-× キャメロン・グライムス
(変型ビクトリーロール)

ウォルター戦で左手を負傷したKUSHIDAの復帰戦。
本来の対戦相手はラウル・メンドーサだったが、入場中にダブルフットスタンプで踏み潰したグライムスが強引に交代した。
だがKUSHIDAは全く動じずグライムスを圧倒。2回防がれながらも卍固め(アメリカではオクトパスホールドと呼ばれる)に捕らえ、さらに右腕を思い切り後ろに引きながら倒れ込む荒業を披露。肩外れるぞ。
グライムスはジャーマンから反撃するが、KUSHIDAは2発目をビクトリーロール(前方回転エビ固め)に切り返すと、両足を相手の足にクラッチさせるアレンジでがっちり固めフォールを奪った。


トマソ・チャンパ&キース・リー&ドミニク・ダイジャコビッチ ◯-× アンディスピューテッド・エラ(アダム・コール&ロデリック・ストロング&カイル・オライリー)
(スーパーノヴァ)

先発のダイジャコビッチが全然交代せず一人でエラの三人を蹴散らし、ストロングをチョークボムで投棄しながら背負ったオライリーにスタナーを喰らわせる妙技を披露。
コールがラストショットを浴びせるが攻勢は長く続かず、元気なチャンパとリーに次々と交代され圧倒される。
だがそこへフィン・ベイラーが現れ、ジョン・ウーでコールを吹き飛ばしレフェリーを巻き添えにする。しかしリーがフィンを排除し、さらにどさくさを狙ったコールをスーパーノヴァで叩きつけ、頑丈なレフェリーがちょうど蘇生して3カウントを叩いた。

試合後、ウィリアム・リーガルGMがフィン、チャンパ、リーの三つ巴戦によるNXT王座挑戦権争奪戦を命じた。
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ミステリ感想-『究極の純愛小説を、君に』浦賀和宏

2020年03月24日 | ミステリ感想
~あらすじ~
文芸部員の八木剛は密かに思いを寄せる草野美優とともに富士樹海で行われる合宿に参加。
ところが部員たちは次々と正体不明の殺人鬼に殺されていく。
一方、保険調査員の春菜琴美は、失踪した八木剛を追ううちにある事実にたどり着く。


~感想~
追悼、浦賀和宏。
浦賀は年齢が近く、19歳のデビュー当時から推していたため、俺達の同級生がバカやってら、くらいの親しい感覚を勝手に持っていた。それがこんなにも早く亡くなってしまうとは実に惜しまれる。

本作は現実をも巻き込んだメタフィクションが、作者が本当に亡くなってしまった結果、当初は予期していなかったはずの広がりを見せた、ある意味で未曾有の作品である。
作中に作者自身が登場し、しかも現実を少しなぞる。それ自体は珍しくないが、急逝したことにより作者の本名が作中の主人公と同じ八木剛だと公開されており、それを知っていると私小説の雰囲気が漂い始める。
そしてネタバレを避けるため多くは言えないが、終盤の展開から結末に掛けて、作者が亡くなったために、物語が現実と虚構の間で奇妙なリンクを見せてしまう。
大げさに言えば本作はまるで作者が死去したことで、初めて完成する、作者自らものした追悼小説のような側面を帯びているのだ。

浦賀がどこまで意図していたかはわからないが、作者が本当に亡くなったことで全く別の作品に見えてしまうという仕掛けは、過去に例のないものではなかろうか。
だからといってこのトリックがすごい!と言うには、マジで亡くなってたらそんなはしゃぎ方はできないわけで…。
この読後感、あんまりそういう感情を抱いたことはないけどこれは「切ない」って言葉が似合う。ワンダと巨像より最後の一撃が切ないよ。マジで死んじゃったら全然話が違っちゃうじゃないかよ。これじゃあ物語がトゥルーエンドになるじゃないか。

なにぶん9作続いた松浦純菜シリーズの結末のネタバレをかまし、ある意味で外伝でもある作品なので、人には勧めづらいが、シリーズ9作を完走したならばよほどのファンであるだろうから必ず読んで欲しい、浦賀和宏という稀有の作家を偲ぶ作品である。


20.3.24
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『予言の島』澤村伊智

2020年03月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
パワハラを受け自殺未遂した地元の友人を励ますため、子供の頃に流行った霊能者が不吉な予言をした島を訪ねた一行。
6人の死が予言されたその島に集まった一癖も二癖もある旅行者と、閉鎖的な島民たち。
島の山にはヒキタの怨霊と呼ばれる祟りがあり……。

2019年このミス19位、本ミス8位


~感想~
今村昌弘の「魔眼の匣の殺人」と同じく予言を扱ったことでも話題を呼んだ一作。
作者は映画化もされた「ぼぎわんが、来る(※映画版タイトルは『来る』だった)」でデビューしたホラー畑の人物で、やはりそういった描写はなかなか巧みなもの。
期待通りに予言をなぞるように死人が続出し、しかし謎は比較的あっさり解かれ、淡々と結末を迎え、そこで目が点になった。
全く、全く気が付かなかった。まさかこんなことになるとは少しも気付かなかった。
しかもとある真相が明かされるとともに、ジャンルがミステリからホラーへすり替わった。こんな馴染み深いトリックにまだこういう使い方があったのか!
個人的には相沢沙呼「medium」に比肩するほどに評価したい、ホラーの技法を本格ミステリに融合させた、見たことあるのに見たことない驚きの傑作である。


↓以下完全ネタバレ注意↓


とにかく仕込みが上手かった。パワハラで自殺未遂した精神的に不安定な人物なら、母に向けて話している時の敬語が紛れても不自然さがない。敬語を使う一人は早々に片付け、もう一人は昏睡させて排除し、同キャラ母子を出して煙幕を張った。
仕込みを終えたら以降は淡々と進行し、最後の最後に起こるはずのない状況下での殺人で驚かせ、電光石火の種明かし。同時にこれまで見えていた光景の全てにプラスアルファされる、おぞましい真相。
地味めの本格ミステリを読んでいたはずが、純然たるホラーへすり替えておきながら、使ったトリックはたったの一つだけで、しかももはや誰も顧みないようなシンプルかつ古臭い物なのだからたまらない。これはミステリ作家ではなく、ホラー作家だからこそ逆に思いついた手法なのではないか。
また言われてみれば、というか描写がずっと不自然だったのだが、初めて読む作家ということもあり、元々こういう筆なのかと途中からは全く気にならなくなっており、余計にトリックに気づきにくかった。
この手のトリックを種明かしまで少しも察知できなかったのは久々である。気持ち良く騙してもらった。いやはや素晴らしい傑作だった。



20.3.17
評価:★★★★★ 10
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ミステリ感想-『むかしむかしあるところに、死体がありました。』青柳碧人

2020年03月18日 | ミステリ感想
~収録作品とあらすじ~
鬼を退治し姫の許婚となった一寸法師に殺人容疑が持ち上がる。だが犯行時刻、彼は鬼の腹の中にいたはずで…一寸法師の不在証明
殺された花咲かじいさんが遺したダイイングメッセージ。喋れないポチはじいさんの無念を晴らすために…花咲か死者伝言
庄屋を殺したばかりの男のもとへ、助けた鶴が恩返しに現れる。二人は言う。絶対にのぞかないでください…つるの倒叙がえし
助けた亀に連れられて訪れた龍宮城で密室殺人が起こる…密室龍宮城
かつて桃太郎に襲われ絶滅の危機に瀕した鬼ヶ島で、次々と鬼が殺される。桃太郎が再び現れたのか?…絶海の鬼ヶ島

2019年本ミス9位、文春7位


~感想~
誰もが知る昔話を題材に、特殊設定ミステリを仕立て上げた意欲作。
ただ換骨奪胎したわけではなく、題材を上手くアレンジし、元ネタならではの展開や、後日談としても読める構成が光る。

冒頭の「一寸法師の不在証明」からして「鬼の腹の中にいた」にいたという奇抜すぎるアリバイとギミックを活かしたトリックが愉快。
続く「花咲か死者伝言」は花さかじいさんのストーリーに準じながらも後日談、そして復讐譚としても読める逸品。
「つるの倒叙がえし」が本書の白眉で、鶴だけではなく男の方も「のぞかないでください」と念を押し、そこから思いも寄らない方向へ物語は転がり続ける。
「密室龍宮城」はちょっと読者には解きようが無いのは難点ながら、豊富な伏線から導き出される真相は秀逸。
ラストの「絶海の鬼ヶ島」は連作短編集としてまとめるわけではないが、ここまでに登場したギミックが再び活かされるサスペンス。露骨なヒントのせいで正直トリックも真相もわかりやすいが、最も良く練られている。

今後もぜひ他の昔話をミステリに魔改造して行って欲しいと思う良作揃いだった。


20.3.14
評価:★★★☆ 7
コメント

今週のキン肉マン #311 聖なる完璧の山への案内人!!

2020年03月16日 | 今週のキン肉マン
・「生きたまま?」ブロッケンは何を危惧してるのwwwww
・あんなサタン様解体ショー見せられたら無理もない
・テリーマンを試合放棄後に褒めた時のような笑顔を見せるジャスティスマン
・これだよこの慈悲やテキサスブロンコに俺は負けを認めたんだよと言わんばかりの笑顔
・「わっ!すごい!」懐かしすぎる
・でもワープゾーンを出したのもジャスティスマンだと気付くべきだぞスグル
・特にお前はなんか言えよミート! 超人界の頭脳さんよぉぉ!?
・マリキータマンしぶてええええwwwww
・我々はこの程度で死ぬものだとあのテントウムシを甘く見ていた
・ヒュンケル以来の暴挙だろこれ
・ジャスティスマンの2戦目があるのではと危ぶんでいた人類に突きつけられたマリキータマン4戦目という恐怖
・アリステラも死んでるものだと思って語り掛けてたはずという指摘に笑った
・確かにそう見える
・ということはサタン様1人も殺せてない
・サタン様実体化してもしなくてもストーリーに全く影響を与えなかった
・悪魔将軍と同じポーズで山を眺めるジャスティスマン
・波止場にちょうどいい高さの岩があったら仕方ないよね
・体力の限界でへばるスグルと、マッスルスパーク喰らったのにもうわりと元気なパイレートマン
・おいキン肉泳法を知ってるはずの兄よツッコめ
・海浅っ!!
・完全無欠の繋ぎ回だった。これで3週休みとはご無体な
・コロナの影響があるのか、これから後の展開を考えるためか…
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ゲーム感想-『ネバーエンディング・ナイトメア』

2020年03月15日 | ゲーム
~あらすじ~
悪夢に悩まされる主人公トーマスは繰り返される悪夢からの脱出を図る。


~感想~
ゲーム的な部分がほとんど全部駄目で、そもそもゲームとして楽しめない。
無数の部屋を総当たりで行き来させられるが、背景がたまに動くくらいの違いしか無く、脱出ゲームのように何かアイテムを入手し、それを使って新たな道を切り開く場面もたったの2つしか無いため、すぐに作業になる。
当たったら即死のクリーチャーが各地をうろつくが、ひねった攻略法もほとんど無く、こちらもただの作業。
そのうえ意味なく入れる部屋がやたらめったらあり、ゲーム時間の水増しに貢献しているのだからたまらない。墓場の鬼ごっこは半分でいい。階段の長さも半分でいい。あの誰でもない肖像画はなんだ。スタッフじゃないだろうな。
そしてやっとこたどり着いたエンディングはマルチ方式でそれぞれ矛盾し、いちおうまとめた解釈はできるが、珍しくもなんとも無い代物で、苦労に見合ったものではない。
総じて期待すればするほど悪い意味で裏切られるだろうがっかりゲームである。


評価:☆ 1
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ゲーム感想-『LIMBO』

2020年03月14日 | ゲーム
~あらすじ~
少年は妹を探しLIMBOに足を踏み入れた。


~感想~
PSストアに出入りするゲーム好きなら見覚えのあるだろう画像だが、そこからはちょっと想像できないほどに良くできたパズルアクションだった。
主人公はダッシュ・ジャンプ・押す・引くしかできず、高所から落ちれば即死する等身大の無力さ。いちおう少年キャラなのに蜘蛛に喰われノコギリで両断されと、和ゲーではありえないグロさで容赦なく殺される。
その約束された死を、周囲のギミックを駆使し、しかもギリギリのタイミングを要求されがちなアクションで乗り越えていく場面が延々と続く。
その難易度は、何回か試して駄目だったので他の手段を考えたが全くわからず、降参して調べたら「駄目そうだけど上手いことやれば実はできる」が大半なくらい高く、コアなゲーマーでも自力で全て解くのは骨が折れるだろう。
ロープライスだしどうせ画像の蜘蛛に延々と追い回されるだけだろ? と高をくくっていたら蜘蛛なんて前半の中ボスくらいに過ぎなかったという、なかなかのボリュームで、お値段以上は確実に楽しめるだろう。多少のグロ耐性があるアクション好きにはぜひやってもらいたい良作である。


評価:★★★★ 8
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