そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

TPPという無関税システムの危険性

2016-03-20 | TPP
アジア太平洋資料センターの内田聖子氏の「TPP協定の内容と今後」という講演会に出席してきた。釧路の会場は300人の地元の人たちでいっぱいであった。畜産地を意識しての公演内容は、現場を知る数少ないジャーナリストとして知らせてくれることが少なからずあった。
彼女は日本が参入する前から会議の取材に行っている数少ないジャーナリストである。そこで今日に至るまでの、TPPの本質を見ている。会の集まり討議するのは政府の要人たちであるが、ロビーに集まるのは企業連合のメンバーばかりであった。何かあれば彼らの相談に来るというのである。ここに今に至るまでの、TPPの本質がある。
内田氏は>、「TPPはこれまで数多くあった条約や協定をはるかに凌ぐ、極めて程度の悪い協定だ。その中身もさることながら、交渉の範囲に広さとその交渉内容が秘密にされているということである。基本には競争社会・市場原理があらゆるものの尺度のなるという、大企業優先の新自由主義が根底にある。」
ことを強く懸念している。
そして、たとえば今回大筋合意の調印に、あっせん利得の疑惑の価値にある甘利明に代わってでかけた、安倍親衛隊の一人の高鳥修一内閣府副大臣であるが、自民党内でも反TPPの急先鋒であった。また彼女の選挙区からのとんずらした無責任な甘利の後任としてTPP担当大臣になった石原伸晃であるが、東京では珍しく反TPPであった。彼らは権力の座に就きたいばかりに、自らの主張を平気で引き下げるのである。
彼女は、TPPの会場で顔見知りの海外メディアから、石原伸晃は貿易や関税に関するプロか、外交経験はあるのかと聞かれるたびの、首をかしげる返答しかできないもどかしさを述べていた。海外では絶対にこんな素人を就かせることことなどないと断言していた。
TPPの脅威に一つに、企業が利益をそがれたことを理由にして、国家を売ったることができること(ISD条項)などを上げている。とりわけ、ISDに関してはいくつかの実例をNAFTAに加盟する、アメリカ、カナダ、メキシコで行われているが、調停は企業側に有利に裁定されることが決まっているというのである。
さらなる脅威に、不可逆性があり。一度決まったことは戻せないというのである。農産物など一定の関税を儲けていても、それらは期限付きであって、必ず関税は撤廃されることになる。
いずれにしても、関税撤廃が原則であり、国家や地域の実情など考慮することにない、国の形や文化や国家の主権まで脅かすことになる一部の企業のための協定であると、彼女は断じた。
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今では日本だけが前のめりのTPP、国連も反対声明

2016-03-08 | TPP
アメリカ大統領選挙候補選挙が山場を迎えている。民主党の候補二人と共和党の候補三人とも、TPP参加に反対である。選挙民を意識した発言などで多少の含む内容に差があるものの、賛成する者はいない。
当選後も同じ姿勢が貫けるかは疑問のところもあろうが、少なくともアメリカでも国民はTPP参加をすると言ったら票が集まらないのである。日本も同様である。多くの自民党支持者はお忘れであろうが、自民党は公約を破棄してTPP参加交渉している事実は拭えない。
菅官房長官はもう決まっていることと、素っ気ない返答をしている。”大筋”合意の内容も英文で数千ページになるらしいが、日本語には100ページ足らずでお茶を濁している。多岐にわたるため、専門の訳者が集まらないというような、許されないような説明をしている。
TPPについてはいかにも多様な分野に広がっていて、正体不明なことが多い。ここにきて国連の人権委員会が声明を出した。交渉内容の不透明性や、世論不参加によって偏った条約が制定される危険性があるというのである。
声明はTPPに限定しているものではなく、環大西洋貿易投資パートナーシップ(TIIP)、新サービス貿易協定(TiSA)など、そのほかに二国間交渉も、秘密貿易交渉の危険性を指摘しているのである。
交渉には労働組合、環境保護団体、消費者団体、健康に関する専門家たちも参加させるべきとも主張している。どうしてこんな単純なこともできないのだろうか。簡単である。これらの人にとってあまりにも不都合な内容が多すぎるからである。
声明は、全ての自由貿易協定の条約文の草案を各国の議会および市民社会に公表し、検討に十分な時間をとった上で、民主主義的に賛否をとるべきであると主張していますが、当然のことが守られていないのです。これらの貿易交渉は、いずれの場合も多数(国民)に向けては負の側面を見せないか秘密条項を設けるかしてひた隠し、少数(多国籍企業などの大企業)の利益誘導を重ねているといえるものである。
無関税貿易は必ず強者が利益を得ることになる。彼らが勝利する理由はたった一つ”金”である。無関税貿易は、大企業が利潤を生むためのシステムである。TPPは現在は贈収賄疑惑の中にある、甘利明がドンドン進めた日本だけが前のめりの極めて異常な協定といえる。
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甘利の”大筋合意”の何たる杜撰な置き土産

2016-02-26 | TPP
TPP交渉を実質一人でこなしてきた甘利明であるが、自らの贈収賄疑惑すら浮上する中、あれほど過酷な交渉をこなしてきた人物が、国会出席拒否をしている。これが甘利の政治の美学なら、この男がかかわってきたTPPの実態はどうなっているのだろう。
そもそもこの”大筋”なる言葉がいい加減である。どの国も使っていない。合意内容は4千ページとも8千ページともいわれているが、日本では数百ページのいい加減なものしか公表されていない。日本では甘利が、合意だけを取り付けたのであって、内容などこれからの話となる。だから”大筋”なのである。
上の表の数字は、交渉中に農水省概算した主な作物の減少額と、大筋合意後の試算を比較したものである。多少の変化は仕方がないとしても、例えばコメは1兆100億円の減少を予測していたが、なんとゼロである。どんな対策になるのかは判然としませんが、自画自賛もいいところである。基本的な考えとして、価格が一割下がれば生産量は一割伸びるというものですが、膠着したドグマのような思考経路と言える。特に果実類ではほとんど影響がないとなっているが、かつてオレンジの自由化で極端に国内の柑橘類が減少した経験は生かされていない。
この計算は願望ともいえる、恣意的な見込み数字と言える。
しかも全品目で減産はゼロ、価格に何ら変動がないという前提である。これを空論と言わずしてなんと呼ぼうか。
甘利が最後っ屁と残していった、”大筋”合意のTPPである。TPPは国内対策で減産は起きない、国民には何ら迷惑がかかることはないと、農水省のTPP以降の試算ははじき出している。
誰が信じるか!
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農民が票田に値しなくなって、TPPで切り捨てられる

2016-01-18 | TPP
日本という国の不思議な現象の一つであるが、政治家の虚言にきわめて無神経であることである。自民党はTPPには参入しないと「公約」を掲げて多数の議席を得た。しかし、その一方では都会の候補者や企業側には明らかに異なる姿勢を示していた。二枚舌の自民党を見抜く力がなかったのか、きわめてお人好しな国民であるかのどちらかあるいは双方であろう。
かつて農民はこの国のほとんどを占めていた。高度成長時代にあっても、都会に住む人たちにも2代も遡れば、誰もが田舎に故郷を持っていたものである。ところがそれもなくなり、農業や田舎食料に疎くなり、農民自体が少なくなってしまった。
かつては数に物言わせた農民たちの基盤は、『票田』とまで呼ばれていたが、今はその面影もない。田舎に基盤を持つ国会議員の数も、小泉政権時代に極端に減った。
農業政策について語るものが少なくなったし、食料について考え訴える国会議員がいなくなってしまった。農民はそれでも、安倍晋三が掲げた虚偽の公約をよく知っている。私たち田舎の自民党議員はまるで、農民の見方であるかのようにふるまって、TPP不参入を声高に訴えていた。
上のグラフは、農業新聞が行った農民の安倍晋三政権の支持率の推移である。今や20%台まで落ち込んでいる。TPP政策が虚言であることを農民は体感している証拠である。憲法に抵触する法案を勝手な解釈で推し進める一方で、農民と地方それと食糧の自給すら放棄しているのである。攻める農業とか地方創生という言葉しかない政策は、それらを覆い隠すものでしかない。
現在多くの日本国民は、雇用されることで生計を立てている。良くも悪くも個人事業主の農民が実感する現実には、縁遠い存在である。インフレや円高や経済指標がこの国を救うと思い込んでいる。多く雇用される側の国民は、虚偽の政策すら気が付かない存在に堕しているのである。農民が気がついても僅か5%にも満たないようではないも変わらない。食料自給率を下げることが、国家の安全や存続にとってどれほど重要なものかは、安倍晋三は全く考えない。安倍晋三の虚偽の政策は、富裕層を満足させるためだけのものである。

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TPP合意をひた隠す安倍政権

2015-12-12 | TPP
TPP(環太平洋連携協定)”大筋”合意という、あいまいな言葉がこの国に飛び交って、なんとなく日本が有利なように決着したような風潮をマスコミは流している。実際にはかなり詳細なところまで合意しているのである。
それを裏付けるのが、TPP担当大臣の甘利の発言である。TPP「合意」文書は、英文で2000ページを超えるものが存在する。ところが日本には、僅か97ページの概要が提出されているだけである。
実際、私の拙い英語力で英文の記事を読んでみても、”大筋”という言葉は見当たらない。TPPはすでに合意しているのである。その事実を覆い隠すために日本語に翻訳しないのであり、”大筋”という言葉を冠したのである。事実個別の製品に関しては小出しの情報がサミダレ的にリークされている。
以下は、かなり長いのであるが東京大学、鈴木宣弘教授の文章を読んでいただきたい。関係者や興味のある方は是非読んでいただきたいものである。(『マスコミに載らない海外記事』さんより引用)

隠され続けるTPP合意の真実と今後の対応策
           東京大学教授 鈴木宣弘

どこまで国民を欺くのか~TPP合意の政府説明の異常

 米国では、TPPの影響試算を出し、それに基づいて議会で議論する手続きと日程が明示されているのに、我が国では、TPP協定の日本語版も国民に示さず、影響試算もいつ出すか曖昧にされたまま、国会決議を守ったと強弁するための国内対策だけが先に示され、しかも、関連団体から要望を聞いたふりをしただけで、対策も半年以上前に決まっていた。政府が考えている以上のセーフティネット政策の必要性を要請項目に挙げた団体には、政権党の幹部が激怒し、役所を通じて、政府が考えている以上のことを要請するなと事前に要請事項の削除を迫るという、信じられない「暴挙」が行われた。
 6,000ページに及ぶ協定の日本語版がそのうち出されたとしても、その条文の背景説明を求めると、交渉過程は4年間秘密なので説明できないとの回答が返ってくるだろう。そして、どさくさに紛れて批准してしまうという、こんな異常な手続きが「民主主義国家」で進められている。

米国の「草刈り場」日本

 TPP(環太平洋連携協定)が合意に達したとされたアトランタ会合で、日本は、決着することを目的化し、合意のためには何でもする「草刈り場」と化して、他の国が「よくそこまで譲れるね」というほどに譲歩を一手に引き受けた。
他の国が医薬品の特許の保護期間などで最後までもめたら、どちらともとれる表現を提案し、火種を残したままでも、とにかく合意した形を作ろうとした(現に、豪州政府の「成果:バイオ医薬品」によると、『重要なことは、この規定は、豪州の現在のバイオ医薬品に関する5年間のデータ保護又は我々の健康に関する制度の他の部分は、一切変更しない、従って医薬品のコストは増大させない」と発表し、米国が反発している(JC総研木下寛之顧問による))。
 日本政府は、自動車での利益確保に、ハワイ会合を決裂させるほどにこだわった(ハワイ会合の「戦犯」は本当は日本だった)のに、アトランタでは、それさえ差し出した。TPP域内での部品調達率が55%以上でないとTPPの関税撤廃の対象とならないとする厳しい原産地規則を受け入れたが、TPP域外の中国やタイなどでの部品調達が多い日本車はこの条件のクリアが難しくなっている。また、米国の普通自動車の2.5%の関税は15年後から削減を開始して25年後に撤廃、さらには、メディアも意図的に報道しなかったが、大型車の25%の関税は29年間現状のままで、30年後に撤廃するという気の遠くなるような内容である。
「農林水産業への影響は軽微のウソ

 農林水産物で「重要品目は除外」と国会決議しながら、重要5品目に含まれる関税分類上の細目586品目のうち174品目の関税を撤廃し、残りは関税削減してしまい、自動車ではほとんど恩恵がないという合意内容で、日本の経済的利益を内閣府と同じGTAPモデルで暫定的に試算してみると、控えめに推定しても、農林水産物で1兆円、食品加工で1.5兆円の生産額の減少が生じる一方、自動車でも、むしろ生産額の減少が生じ、全体で日本のGDP(国内総生産)は、わずか0.07%しか増加しない可能性がある。

表1TPP「大筋合意」の日本経済への影響の暫定試算

        「大筋合意」 全面関税撤廃
GDP増加率     0.069% 0.184%
GDP増加額    0.5兆円 1.3兆円
農林水産生産増加額 ▲1.0兆円 ▲2.1兆円
食品加工生産増加額 ▲1.5兆円 ▲2.1兆円
自動車生産増加額 ▲0.4兆円 2.8兆円

資料:GTAPモデルによる東大鈴木研究室試算。

注 関税、輸入制度、原産地規則等の変更に伴う影響を試算したもの。内閣府が算入した「生産性向上効果」(価格下落と同率で生産性が向上)及び「資本蓄積効果」(GDP増加と同率で貯蓄が増加)は未考慮(GTAPモデルは国産品に対する輸入品の代替性を低く仮定しているため、関税撤廃の影響は過小評価傾向になることに留意「大筋合意」内容を暫定的に組み込んだ試算で確定値ではないことに留意。

政府は農林水産業への影響は軽微であるとし、国内対策を少し行えば、国会決議は守られたと言えると主張しているが、内閣府のモデルでも少なくとも1兆円の損失が見込まれるのを軽微とは言えない。そもそも、政府は、前回、関税撤廃された場合の生産減少額として、鶏肉990億円、鶏卵1,100億円、落花生100億円、合板・水産物で3,000億円と示し、これだけでも5000億円を超えていた。今回は、同じ品目が全面的関税撤廃という同じ条件なのに、「影響は軽微」という説明は、まったく説明がつかない。また現在の輸入先がTPP域外だから関係ないというのは間違いで、関税撤廃で有利になったTPP域内国からの輸入に置き換わる可能性(貿易転換)があることこそがFIA(自由貿易協定)なのである。
 すべては、「TPPはバラ色」との政府見解に合わせて「影響は軽微」だから、この程度の国内対策で十分に国会決議は守られた」というための無理やりの説明である。コメについては備蓄での調整のみ(しかも5→3年と短縮)、牛豚肉の差額補填の法制化と豚肉の政府拠出の牛肉並みへの増加、生クリームを補給金対象にする、などの対策は、牛豚肉の赤字の8割補填から9割に引き上げる点を除いて、TPP大筋合意のはるか半年以上前に決まっていた。TPPの農産物の日米合意と「再生産可能」と言い張るための国内対策はとっくの昔に準備されていて、あとは「猿芝居」だったのである。

「踏みとどまった感」を演出した「演技」

 牛肉関税の9%に象徴されるように、今回の主な合意内容は、すでに、昨年4月のオバマ大統領の訪日時に、一部メディアが「秘密合意」として報道し、一度は合意されたとみられる内容と、ほぼ同じだ。つまり、安倍総理とオバマ大統領は、昨年4月に、実は、寿司屋で「にぎっていた」のである。
 そのわずか2週間前に日豪の合意で、冷凍牛肉関税を38.5%→19.5%と下げて、国会決議違反との批判に対して、19.5%をTPPの日米交渉のレッドラインとして踏ん張るからと国民に言い訳しておきながら、舌の根も乾かぬうちに9%にしてしまっていたのであるから、恐れ入る。
 その後は、双方が熾烈な交渉を展開し、必死に頑張っている演技をして、いよいよ出すべきタイミングを計っていただけの「猿芝居」だったのだ。フロマンさんと甘利さんの徹夜でフラフラになった演技はすごい。「これだけ厳しい交渉を続けて、ここで踏みとどまったのだから許してくれ」と言い訳するための「猿芝居」を知らずに将来不安で悩み、廃業も増えた現場の農家の苦しみは、彼らにとってはどうでもいいこと。いかに米国や官邸の指令に従って、国民を騙し、事を成し遂げることで自身の地位を守るのがすべてなのである。
そもそも、3.11の大震災の2週間後に「これでTPPが水面下で進められる」と喜び、「原発の責任回避に「TPP」と言い、「TPPと似ている韓米FTAを国民に知らせるな」と箝口令をしいた人達の責任は重大だ、このような背信行為に良心の呵責を感じるどころか、首尾よく国民を欺いて事を成し得た達成感に浸っている。すべてがウソとゴマカシで塗り固められている。

「TPPがビジネス・チャンス」のウソ

 日本が、ここまでして合意を装いたかったのはなぜか。アベノミクスの成果が各地の一般国民の生活には実感されないのを覆い隠すため、TPP合意発表で明るい未来があるかのように見せかけようとした側面もある。しかし、ビジネス拡大のバラ色の世界が広がるかのように喧伝されているが、TPPがチャンスだというのはグローバル企業の経営陣にとっての話で、TPPで国民の仕事を増やし賃金を引き上げることは困難である。冷静に考えれば、ベトナムの賃金が日本の1/36という下での投資や人の移動の自由化は、日本人の雇用を減らし、賃金を引き下げる。端的に言うと、グローバル企業の利益拡大にはプラスで、中小企業、人々の雇用、健康、環境にはマイナスなのがTPPだ。

「健康と環境は訴えられない」のウソ

 特許の保護期間の長期化を米国製薬会社が執拗に求めて難航したことに、「人の命よりも巨大企業の経営陣の利益を増やすためのルールを押し付ける」TPPの本質が露呈している。グローバル企業による健康・環境被害を規制しようとしても損害賠償させられるというISDS条項で「濫訴防止」が担保されたというのも疑問だ。タバコ規制は対象外に(カーブアウト)できるが、その他は異議申し立てしても、国際法廷が棄却すればそれまでである。健康や環境よりも企業利益が優先されるのがTPPだ。

「消費者は利益」のウソ

 消費者の価格低下のメリットが強調されているが、輸入価格低下の多くが流通部門で吸収されて小売価格はあまり下がらない。さらには、日本の税収40兆円のうち1割程度を占める関税収入の大半を失うことは、その分だけ消費税を上げるなどして税負担を増やす必要があることになり、相殺されてしまうのである。
 さらには、米国などの牛肉・豚肉・乳製品には、日本では認可されていない成長ホルモンなどが使用されており、それが心配だと言っても、国内で生産農家がいなくなってしまったら、選ぶことさえできなくなる。

「食の安全基準は守られる」のウソ

 食品の安全性については、国際的な安全基準(SPS)の順守を規定しているだけだから、日本の安全基準が影響を受けないという政府見解も間違いである。米国は日本が科学的根拠に基づかない国際基準以上の厳しい措置を採用しているのを国際基準に合わさせると言っている。例えば、「遺伝子組み換え(GM)でない」という表示が消費者を「誤認」させるとして、「GMが安全でない」という科学的根拠が示せないならやめろと求められ、最終的には、ISDS条項で提訴され、損害賠償で撤廃に追い込まれることも想定しなくてはならない。
 それらを隠して、「TPPはバラ色」と見せかけ、自身の政治的地位を少しでも長く維持するために、国民を犠牲にしてでも米国政府(その背後のグローバル企業)の意向に沿おうとする行為は容認できない。

米国の要求に応え続ける「底なし沼」

 農産物関税のみならず、政権公約や国会決議で、TPP交渉において守るべき国益とされた食の安全、医療、自動車などの非関税措置についても、軽自動車の税金15倍、自由診療の拡大、薬価の公定制の見直し、かんぽ生命のがん保険非参入、全国2万戸の郵便局窓口でA社の保険販売、BSE(牛海綿状脳症)、ポストハーベスト農薬(防かび剤)など食品の安全基準の緩和、ISDSへの賛成など、日本のTPP参加を認めてもらうための米国に対する「入場料」交渉や参加後の日米平行協議の場で「自主的に」対応し、米国の要求が満たされ、国民に守ると約束した国益の決議は早くから全面的に破綻していた。
 しかも、『TPPとも米国とも関係なく自主的にやったこと」とうそぶきながら、結局、TPP合意の付属文書に、例えば、「両国政府は、①日本郵政の販売網へのアクセス、②かんぽ生命に対する規制上の監督及び取扱い、③かんぽ生命の透明性等に関してとる措置等につき認識の一致をみた。」などの形で前言がうそだったこと、国会決議違反を犯したことを平然と認めているのが、なんとも厚顔無恥である。国民を馬鹿にしているとしか言いようがない。
 さらには、米国投資家の追加要求に日本の規制改革会議を通じて対処することも約束されており、TPPの条文でなく、際限なく続く日米2国間協議で、日米巨大企業の経営陣の利益のために国民生活が犠牲になる「アリ地獄」にはまった。

説明責任を果たさずしての批准はあり得ない
 米国では批准が容易でない状況にある。米国議会がTPA(オバマ大統領への交渉権限付与)の承認にあたり、TPPで米国が獲得すべき条件が明記されたが、通商政策を統括する上院財政委員会のハッチ委員長(共和党)がTPP合意は「残念ながら嘆かわしいほど不十分だ」と表明し、このままでは議会承認が難しいことを示唆し、再交渉も匂わせている。
ハッチ氏は巨大製薬会社などから巨額の献金を受け、特に、間、ISDSからタバコ規制が除外できることなどを問題視している。次期米国大統領の最有力候補のヒラリー・クリントンさんはじめ、労働者、市民、環境を守る立場から与党民主党はそもそも反対である。「巨大企業の経営陣の利益VS市民生活」の構造だが、双方から不満が出ている。米国議会批准のために水面下で日本がさらに譲歩することが懸念される(もうしている模様)。
 農業について、政府は「規模拡大してコストダウンで輸出産業に」との空論をメディアも総動員して展開しているが、その意味は「既存の農林漁家はつぶれても、全国のごく一部の優良農地だけでいいから、大手企業が自由に参入して儲けられる農業をやればよい」ということだ。しかし、それでは、国民の食料は守れない。食料を守ることは国民一人ひとりの命と環境と国境を守る国家安全保障の要である。米国では農家の「収入―コスト」に最低限必要な水準を設定し、それを下回ったときには政府による補填が発動される。農林漁家が所得の最低限の目安が持てるような予見可能なシステムを導入し、農家の投資と増産を促し輸出を振興している。我が国も、農家保護という認識でなく、安全保障費用として国民が応分の負担をする食料戦略を確立すべきである。
 TPPに反対してきた人や組織の中にも、目先の自身の保身や組織防衛に傾き、条件闘争に陥る人もいるだろう。しかし、それでは国民は守れないし、現場で頑張っている地域の人々や農家に示しがつかない。結局、組織も見放される。現場の人々ともに、強い覚悟を持ち、食と農と暮らしの未来を切り開いていくために主張し続ける人たちが必要である。
食料のみならず、守るべき国益を規定した政権公約と国会決議と整合するとの根拠を国民に示せない限り、批准手続きを進めることは許されない。
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そりゃ軟弱だろ

2007-05-10 | TPP

今放映されている、NHK朝の連続ドラマ「どんと晴れ」を見て、30年ほど前になるだろうか「細うで繁盛記」を思い出した。いずれもが、旅館の女将として主人公の女性が、難関を越えて建て直すドラマである。

「細うで繁盛記」ではそれまでは、お嬢さん女優として目鼻立ちがはっきりした富Photo_117士真奈美が、ぶ厚いメガネを付けて着膨れ衣装の静岡弁丸出しで、主人公の新玉三千代を徹底的にいびるのである。

多くの視聴者が、富士真奈美に嫌悪感を抱き、新玉三千代を哀れむ同情心を抱いたものである。富士真奈美が失敗するのを、ブラウン管の前で今か今かと待ちながら見ていたものである。

ところが、この朝ドラに限らず最近のドラマの中に、徹底的に主人公をいびり倒す悪人キャラクターが登場しない。いびることがあっても、多少の理由を視聴者に示しながら「悪人」の理由付けを必ずどこかで行なっている。

要するに、いびり役のタレントが別のドラマに出演する機会を失わないようにして いるのである。タレント個人のために徹底した悪人を、ストーリーの中に盛り込まないのである。

限られた数のタレントの中でお互いが傷つかないように、それぞれのキャラクターをいたわりあいながらドラマを構成しているのである。

バラエティー番組に出演しても、自分を出して喋る機会を失わないための、知恵のようの思える。

この構図はどこか大相撲に酷似する。お互いが、限られた数の中で傷つけあうことがないように、阿吽の呼吸の中で取り組むのである。

今年度、映画「バベル」でアカデミー賞助演女優賞にノミネイトされた、菊池凛子は「与えられた役で女優としての自分を評価されたいと」発言していた。自分に対する、プライベートを含んだ評価に対する、彼女なりの回答である。

役者根性と呼ぶには少々古臭い表現であるかもしれないが、日本の文化そのものが馴れ合いと「なぁ、なぁ」社会のぬるま湯に立ちすくむのでいる。

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そりゃ豊作ビンボウだろう

2006-12-08 | TPP

かなり以前のことになるが、野菜つくりをやっている知人がいた。その年はかつてないほどの天候で、野菜は豊作であった。おかげで価格が暴落して大根が一本5円ほどにしかならない。大赤字である。せめて出荷費用を節約する意味で、畑にすき込む農家が沢山いた。

知人は、頭にきて4トン車に積めるだけの大根を積み込んで、大消費地である大阪の団地にいった。そこで、ただで配ったのである。集まってきた奥様方に、農家の現状を訴えたのである。

ところが、殆どの大根を処理した頃、夕方になって得体の知れない連中が数人現れて、ボコボコにされたのである。

大多数の農産物価格は、その時々の市場が決めている。多くの商品が、生産者が価格を決めて出荷されているのとは基本的に異なる。最近でこそ、農協などの介入や、生産者が付加価値をつけることで、生産者が価格を決めることもなくはないが、稀なことであるには変わりない。

農産物は、大いに天候に左右される。農民は、効率よく沢山の農産物を生産して、食料を国民に供給しようとするのである。穫れすぎたために、価格が暴落するのはまさしく市場経済そのものである。これでは、農民は不作あるいは少量の収穫でも、価格が高いほうが得なことになる。消費者にはありがたくないことである。

農産物=食料は人間が生命を維持するためになくてはならないものである。食料の質、量、価格を市場経済だけで決めてはならない。そこには、農民の汗もなければ食料の質=中身もない。食料を市場経済に委ねることは、人道的な意味からもやってはならないことである。

食料はなくてはならないものである。工業製品のように倍も売れることもなければ、半分にすることもできない。食料を自給することなく、余剰食料を廃棄するこの国の人たちは、10億の人が餓えている現実を実感していない。

おりしも、今年は夏の天候がよく、野菜が豊作であった。キャベツを畑でトラクターで圧し潰す様には胸が締め付けられる。どこかおかしい風景である。

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そりゃとりあえずだろ

2006-12-05 | TPP

小児科のお医者さんが、注射をする時に「痛くないからねぇー」と言うのは嘘である。Photo_54 痛いから断られると困るから、とりあえず嘘を言って目的を達成するのである。獣医は小児科に似ていると言われるが、獣医師はそんなことはしない。家畜がことが解らないからだけではない。嘘が通じないからである。

小心者の日本の政治家にはこの手の手法を用いる輩が少なくない。その典型が、「国家・国旗に関する法律」である。この法律は、平成11年8月に制定されたが、これは国家や国旗を国民に強要するものではないと、何度も小泉首相が説明をしていた。

ところが、東京都などでは卒業式などで、教師に強要してそれを守らない場合は処分している。とりあえず法律だけ通しておいて、やがて忘れ易いこの国の国民がほかのものに興味が移った時期に、法律の本質を露わにするのである。

教育に「愛国心」を盛り込みたい、お坊ちゃま首相は愛国心を評価しないととりあえず言ってはいるが、そんなもの信用できるわけない。やがて、国民が他の物に目が移る頃には、愛国心を教育の現場では評価することになる。A君は20点だが、B君は100点と評価されて、入試科目になるかも知れない。

North_korea_has_finally_moved_ahead_with_1 北朝鮮も、とりあえず核実験をしてみた。多分これから先は、この国が核を保有するには相当困難なことが起きると思うが、わが国の政治家と違って彼らには目的がある。とりあえずではあるが政治的には成功はしている。

やがて教員は試験を何年かごとに受けることになり。体制にそぐわない教師は排除されることになるようになる。とりあえずの法案が今審議されてはいる。

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カズとヒデ

2006-08-17 | TPP

01_2 サッカーの三浦カズヨシと中田ヒデトシは極めて対照的である。誰が見てもすでに、往年の動きがなく3流選手以下になっている、カズはボロボロになりながらも、F2で球を蹴っている。決して活躍しているなどといおうなお世辞は通用しない。海外にもあちこちっても、すぐにお払い箱になる。 彼がいくつのチームを亘ったか、わからないほどである。それでも彼は、希望するところがあれば行くという。今はモデルや奥さんの収入の方が上回っているようである。これもプロの一つのあり方かもしれないが、惨めと思うのは失礼なことか。

翻って、ヒデは余りのもあっけない引退である。見事としか言いようがない。藤原正彦氏がPhoto_14言う「武士道」精神が、垣間見える。そういえば、昔は大相撲でも、大関から陥落はすなわち引退であったが、今は元大関が何人いるか判らない。栃錦の引退もヒデと重なる。よく言えば信念を貫いているのかもしれないが、自らの可能性を閉ざしているように思えてならない。昨日の、オシムジャパンを見ていると、ヒデはどうしてもこの中には居場所を見つけられないであろう。そう考えると、彼は敏感に時代を察知したのかもしれない。自らの描くものが得られなければ身を引く潔さに、カズの泥臭さが引き立つようではある。

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そりゃ、歴史の違いだろ

2006-06-25 | TPP

ワールドカップでは見事な敗戦である。民族性の違い、歴史の差が見事なまでに見ることができたと思う。こんなもんである。薄型テレビやDVDレコーダーの販売を煽っていた連中やマスコミは思惑外れであったであろう。本当にサッカーが好きならば、これからが本番である。ベスト16の、後がない国の威信をかけた戦いこそがサッカーの醍醐味なのである。ここで覚めるのは、それこそ家電業界とマスコミに踊らされているだけである。

食生活でも似たようなことが言える。この数十年の子供たちの体型は、日本の本来のものではない。黒澤作品に出てくるような、痩身の皮下脂肪のない精悍な体つきの日本人は、なかなか見ることができない。ぶよぶよになったのは、肉や卵などの畜産製品と、流通される甘い口当たりがいいお菓子類が増えて、野菜やお米の摂取量が減ったからに他ならない。これは、アメリカ穀物協会の戦略に他ならない。実に日本は誠実に、アメリカの穀物を大量の輸入して、数千年に及ぶ食を転換したのである。今回の牛肉輸入にしてもなんとアメリカに誠実なことか。拙書「そりゃないよ獣医さん」新風舎刊参照http://www.creatorsworld.net/okai/

体力とは物を持ち上げたりする力や見た目に大きくなったり太ることではない。体力とはそうしたことに加えて、抗病力や持続力であり物事を総合的に判断する力のことである。それがかけているのでないかと思った、ワールドカップである。

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羅臼港

春誓い羅臼港