ヨーロッパは、EU共同体として多くの確認事業あるいは法整備の平準化などを行なってる。その中で、イギリスを中心に発生したBSE(牛海綿状脳症:狂牛病)から多くの教訓を学んでいる。
この事件は食品の安全意識を、一般消費者に与えたものはかなり大きかった。生産性を、多少犠牲にしてでも、質の良いものを求めるようになった。ところが畜産物の、質の評価は極めて複雑である。
わが国でもオーガニックをうたい文句にした、肉や牛乳や卵が市場の隅に顔を出すようになった。しかしながら、オーガニック(有機)栽培した飼料を、大量に家畜に与えて高生産を家畜に強いるような実体を見ていると、これをオーガニックと呼ぶのは飼料だけであって、そこから生産された畜産物まで呼ぶにのには疑問を感じる。
その逆もある。無添加で、見事な豚肉やソーセージを生産をうたい文句にしていた、脱サラの若者が経営する小さ な工場があった。そこに搬入される豚が、抗生物質漬けで飼育されていたことが解かって、急速に販売が鈍り青年は町に戻った。
ヨーロッパでは、畜産物を生産する家畜が健康で、命ある生命体として扱われなければならないとする、方向で検討されている。これは家畜福祉(動物福祉)と呼ばれているものであるが、大まかに次の四点を挙げている。
1、餌が十分あってひもじい思いなどさせないこと。2、熱くも寒くもなく快適な畜舎にしてやること。3、病気や怪我などさせず健康に気に配慮すること。4、適切な扱いをして良い関係を保つこと。
家畜が健康になるためには、現在のように家畜が大量の無関税の穀物を大量に与えて、安価な畜産物を生産するシステムでは、到底なしえないことである。上記の四点を守って家畜の、健康や 快適な環境を作るようでは、コストがかかりすぎるからである。
畜産物は安い方が、よく売れるのである。安い方が、国際競争力があると評価されるのである。安い方が、畜産農家が生き残れるのである。競争力とは、家畜の健康と苦痛を犠牲に成り立っているのである。