イラク国民の、実に8分の1に当たる270万人が避難民になっているとのことである。治安が悪どころではなく、最悪の状況を何よりも物語っている。アメリカが増派を決めたのにではなく、増派をするからなおさら治安が 悪化する。そのことをブッシュは理解できないのであろう。
理解できるくらいなら、適当な理由を付けて侵攻することなどなかっただろう。避難民の多くは、シリアとヨルダンに行っているようである。とりわけシリアの首都ダマスカスでは、イラク人が集団を作ったりして受け入れた方も大変なようである。
アメリカは、バクダッドに進行したらシーア派に大歓迎されると真剣に思っていたのである。現在も、フセイン元大統領を支持する強力な基盤があり、中東各地で街頭デモすら行なわれているのである。フセインはシーア派やイランなどと敵対していたことを過剰に評価したのである。
さらに、アラブの英雄サラディンを生んだクルド人の存在は計算外であったであろう。彼らは既に実質、クルド国家を形成しつつある。クルド人の動きは、イランやトルコとの関係で、極めて不穏なものがある。
アメリカの制作した憲法の中に、キルクーク条項(第140条)を盛り込ませることに成功した。シーア派とスンニー派が混在する地域と異なる形で、クルド人はイラクの時限爆弾になろうとしている。
イラク戦争の本質は、9.11がどうして起きたのか、アメリカはなぜ攻撃されるような目にあわなければならなかったかを理解できなかったことにある。力の論理と、経済論理で世 界を席巻できると、過信したアメリカの状況分析が偏向している限り、第2、第3のイラク戦争は起きる可能性がある。