酪農経営の指標に用いられるものとして「乳飼比」という数字がある。酪農の牛乳収入(乳代)に占める、購入飼料の比率のことである。
酪農の収入とは、乳代が圧倒的であるがその他に、個体販売がある。肉に売る場合と、妊 娠した若牛を売る場合があるが、それらの収入の内「乳代」全額に対していくら購入飼料が占めているかとする数字である。酪農家にとって、乳飼比は経営の健全性を見るのに、格好の数字である。
北海道でも最も草の生産が盛んな根室地方は、飼料自給地帯と言われている。この地域のよほど健全な酪農家でも、乳飼比は25%程度である。自給飼料の多い酪農家でも、30%程度である。
大型酪農家になると、輸入穀物飼料への依存度が高くなる。それでも2年ほど前までは、乳飼比は35%程度であった。1200トンの牛乳を出荷している大型酪農家の乳代はおおむ ね、1億円ほどである。購入飼料が3500万円ほどであった。
ところがこの2年ほどで様相は一変した。大型酪農家の乳飼比は40%を平気で越すようになったのである。乳価が5%ほど下がり、穀物価格が15%以上値上がりしたのである。この間当然酪農家は、それぞれの努力はしているとが、乳飼比が平均で10%ほど上昇したのである。
乳代の半額を購入飼料が占める状況は異常である。大型酪農家は、極めて脆弱な経営体質である。
自給飼料への依存度が高まり、乳牛の病気が減ることは良いことではあるが、酪農家経営は急転回できない。施設投資も、負債も抱えている。一気に酪農家の手取りが半減する。
マヨネーズに端を発して、今年はいろんなものが値上がりしている。牛乳価格も、生産が伸び悩んでいることを理由に、乳業メーカーは牛乳の値上げを渋っていたが、ここにきてようやく値上げの方針を打ち出した。
とりあえずは、牛乳の市販価格が上がることを消費者は受け入れてもらいたい。大型店では、安売りの目玉に必か「玉子」が「牛乳」を並べる。それほど需要が高い商品である。
特に、根室地方の酪農家に転職はない。他の作物は作れないし、ほかに仕事がないからである。こうした試練を経ながらでも、本当の意味での草地酪農になって、乳飼比を下げて貰いたいものである。