そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

トウモロコシが近代文明を破壊する

2018-08-20 | 環境保護と循環

子どもたちに夢を与えてくれた幼いころ読んだ、「トムソーヤの冒険」や「ハックルベリフィンの冒険」それに「大草原の小さな家」や「アンクルトムの小屋」などの風景は今のアメリカにはない。少し下がって、テレビドラマのローハイドやララミー牧場などを撮った風景などもすでにない。本ブログで今月10日に書いた、異常気象への警告の画像で、最も干ばつにあっていそうなところが、いわゆるプレリーと呼ばれるところで、ミシシッピー河の地下水脈(オガララ滞水層)から水を吸いあげて灌漑をやっている。今ではコーンベルト地帯ともいわれている。

この40年でアメリカ国内はもとより、海外にまで穀物メジャーは利潤を求めてコーンを売り出す。誰も知らぬ間に全てが遺伝子組み換え作物となっている。コーンを全粒で売るわけではない。不味くて食べられたものではない。コーンのほぼ半量が家畜向けである。残りは加工用である。加工用とは最近はエタノールとして燃料に用いられているが、1970年代から、コーンシロップ(高果糖シロップ:HFCS)として多くの食品に用いられている。2000年ごろから、炭酸飲料の添加が糖尿病や肥満の原因であると指摘され、ほとんど改善されることなく今日に至っている。この30年で砂糖の消費量が半減しているのは、コーンシロップがこれに替わったからである。生産料が安いわけではない。大量の補助金が貰えるから、農家(企業)が作付けしてるのである。お手元にあるスナック菓子など、大手が作って店頭販売されているもの裏面をご覧ください。ほとんどの物に入っている。
その他、コーンは糊や紙の保護やインクや有機の詰め物として利用されている。アメリカのスーパーマーケットで売られている商品の、ほぼ半数は何らかの形でコーンが入っている。日本の家畜の食べるコーンは無関税で輸入され、ほぼアメリカ産といって良い。日本の家畜の食べるエネルギーの、7割はコーン由来である。
コーンの炭水化物は、【C4】と呼ばれる生体内の代謝過程を経て作られ、C4植物と言われている。コーンの他はサトウキビがそうであるが、他の穀物は全てが、C3植物である。この炭水化物の合成形態は、取り込んだ動物でも観察できるそうである。肉や卵や牛乳はコーンを大量の食わされた家畜を通じて、人の中に取り込まれる。
生物学者の福岡伸一さんによると、アメリカ人の体の炭水化物の70%はⅭ4植物に由来しているそうである。すでに100%になっている人もいる。米を主食とする日本人は少なく、30%程度であるとのことである。しかしこれもやがて、アメリカに近づくことのなるであろう。
Ⅽ4植物に由来した生体の問題は明かではないが、異常が出てきた段階ではもう取り返しがつかない。伝統食にはそれなりの理由がある。コーンが近代社会の中に深く入り込み、作付けの環境破壊や食べ物としてのGM問題、何よりも家畜を通じての不適切な畜産物の消費者への供給、コーンシロップとしての健康上の問題を投げかけたまま、どの国もどの政府も歯止めを持たない状況と言えるのである。
コメント (5)
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