丁度一年前、バレンタインに合わせてカカオ豆のこととチョコレートについて書いた。それから事態は一層深刻になっている。世界のチョコレートは、この時期半分が売れることのようである。
チョコレートの原料になるカカオ豆は、カメルーン、ガーナ、コートジボワール、ナイジェリアで世界生産量の70%にも達する。とりわけコートジボワールは43%生産している。日本はほとんどのカカオ豆をコートジボワールから輸入している。残りの僅かを、ガーナから輸入している。
カカオ豆の輸出を仕切っているのが、バリーカルボー、カーギル、ADMの穀物メジャーである。わが国も例外ではない。コートジボワールのGDPの10%を占めるカカオ豆であるが、人権団体などが問題にしているのが、人身売買が疑われる13万人と言われる子どもの労働者である。農園で働く64%が、14歳以下子どもである。
カカオ豆は輸出されて、それぞれの国で加工される。生産国の子供たちは、朝晩過酷な労働を強いられながらも、チョコレートを見たことがない。生産国の手取りは販売価格の、僅か0.5%である。大資本が投入された巨大な農園で、効率よく生産されたカカオ豆はわらに安価な労働に支えられて、生産されている。
昨年11月26日にコートジボワールで大統領選挙がおこなわた。敗北したローラン・ハグボ前大統領は政権を譲らない。勝利したアルサン・カタラ大統領は、前職の基盤になっているコーヒーとカカオ豆の輸出を禁止する手段に出た。日本では巷間コーヒー価格が上昇するともっぱらの噂であるが、こうした裏までの報道はされない。
農産物を自由貿易の論理で括ると、大資本が必ず勝利するその陰には必ず収奪される弱者の労働者が見えてくる。TPPに参入すると言うことはこうした不条理を容認することでもある。チョコレート生産はその典型である。チョコレートをいただきながら、苦みを味わうのも良かろう。
そもそもバレンタインデーなど、日本とは関係のない習慣。それなのに、すっかり菓子メーカーに踊らされて、無邪気にチョコレートを買いあさっている女性たちの姿をみると、恥ずかしいというか情けなく思います。
チョコレート産業の裏にある事実を見据えたなら、とてもチョコレートを買おうという気にはなりません。
子供の労働搾取はカカオ豆だけではありません。井戸掘りや金鉱山、農園など、至るところで行われています。その片棒を担ぐのが我々、日本人でもあるのです。