安倍首相が、自分のお気に入りの学者や評論家たちを選んで「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」と称する”有識者会議”を作った。メンバーは見事に、極右翼から中道的な右翼まで立派に集めたものである。
この有識者会議の結論ははっきりしている。集団的自衛権の行使である。結論がはっきりと見えている有識者会の目的、あるいは目論みは二つのことが考えられる。
一つは、集団的自衛権は現憲法で可能だとする結論である。改憲しなくても、同盟国(性格にはアメリカであって従属国)として、戦争の参加できる範囲を広げることである。憲法が思うままに変えられなくても、アメリカに申し訳立つためのいわゆる解釈改憲で何とか取り繕うことである。これは、従来の政府見解をかなり踏み出したものになる。憲法の抑止をないものにしたものである。
もう一つは、やはり現憲法では集団的自衛権が行使できない。こんなことでいいのかと、居直ることである。
集団的自衛権の研究と銘打っているが、例として掲げる4つ場合はいずれも、戦闘を行なうものである。近代の戦争はほとんどが”自衛”のために起こされたものであることを考えると、戦争への火蓋と敵国にとらわれても仕方がないことである。戦闘の拡大になるが抑止にはならない。これが自衛といえるのだろうか。
アメリカに求められると銃器を持って戦う必要がある。それでいいのかと、半ば恫喝のような結果になるものと思われる。
有識者会議は、については一般的な内容や目的は解からないが、BSEを巡っては目を背けたくなるような存在であった。最初から用意されている結論に、半数の委員が辞職した経緯がある。専門家といわれるような人物を選んだ会議ですらこのような状態になった。
「有識者会議」とは自説を通すための単なる地ならしでしかない。こんなことがまかり通って、民主国家の基盤になっているようでは困ったものである。