自民党にとって最も望ましい裏金問題の人身御供、いわば生贄に好都合な塩谷立という人物を指名したのが、森喜朗である。安倍派5人衆を守るために、議員経歴はそれなりにあるにもかかわらず(当選10回)小物議員として、また安倍晋三亡き後の座長にいたということもあって、格好の位置にいたと首チョンパされた。
裏金について全く知ることのなかった本人の必死の抵抗にも拘らず、たまたま引き受けた安倍派座長が災いしたのである。党が下した離党勧告を塩谷はギリギリまで抵抗した。
塩谷立が今月10日に会見を開き、次の衆院選に立候補しない意向を明らかにし、そのまま政界を引退すると無念の発表をした。当初は無所属で立候補すると意気込んでいたが、夏に自民党県連会長が小渕優子 選挙対策委員長などの了承を得たとして、塩谷が立候補する場合でも自民は候補者を擁立すると伝えていたのである。塩谷は「犬死した思い」と、恨みつらみが止まらず悔しさを隠せない。
「我々の処分は何だったのか?処分をやったら終わり。決着する時であるはず。最後に岸田総理が辞めるというのは、これは何なんだという思いがある」
さらに塩谷は続けて、「非常に悔しいし、大変憤りを感じている。真実を語っても残念ながら通らない、なかなか伝わらない。離党したことも大変不本意なことである。最初からこの問題は党全体の問題、政治全体の問題で、それを派閥だけに押し付けようとした考え方が大間違い」と、今更と思える正論を吐いている。
その悔しさを、次回総選挙で無所属で立候補をすることに全力を注ぐつもりであたが、党本部から公認候補を立てると、ダメ出しをされついに不出馬を決めたのである。真新しい看板「Re:START」を自事務所に掲げ、支持者回りをしていた塩谷にとって相当無念の党からの仕打ちに思ったに違いない。
自民党は、こうした裁断を繰り返し、建前だけ整えて裏金問題の決着をしたというのである。