「陶工」。壺や鍋をつくっている陶工。土が残った。だから、
女を造った。乳房を硬く大きくした。
ギリシャ語では、どう書いてあるのだろうか。たぶん、句点「。」ではなく読点「、」でつながる一行、いや、読点さえもないかもしれない。それ以上に気になるのが「硬く」ということばである。
粘土でつくるおんな。乳房がやわらかいわけがない。どうしたって硬い。
そこで、思うのだ。たとえばミロのビーナスの乳房。あれは硬いか、やわらかいか。大理石だから、触れば硬い。しかし、見かけはどうか。どれくらいのやわらかさか。
ここには、男(陶工)の夢が託されている。それは詩を最後まで読むとわかるのだが、「硬さ」というひとことで、詩の展開を「予言」させているところがとてもおもしろい。そのポイントを緊張感のあることば、文体で中井は訳出している。