詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

山本育夫『こきゅうのように』

2023-09-10 21:03:47 | 詩集

 

山本育夫『こきゅうのように』(思潮社、2023年08月20日発行)

 山本育夫『こきゅうのように』は『ことばの薄日』と同時に刊行された。以前「博物誌」に何篇かの詩の感想を書いた。しかし、『HANAJI』(2022年2月)以降は、感想を書いていない。「博物誌」で、たしか「私の好きな詩」というエッセイの特集をやったはずだが(私は山本かずこの詩集を取り上げ感想を書いたはずだが)、その特集号のときから、「博物誌」が私のところには届かなくなったからである。たくさんの有名詩人が寄稿しており、他の詩人に寄贈したら、部数がなくなったということかもしれない。山本が多忙になったのか、あるいは病気が重くなったのかもしれない。というわけで、ひさびさに山本の詩を読んだ。読んだといっても、すべてではない。量が多すぎて、なかなか読み進めることができない。
 「こきゅうのように」は「分かち書き」が効果的である。

こきゅう がひきだす ひゅうひゅう という おと が
天空を わたり あれこれ ひきつれて
ほうほう とみみやめやはなやくちに さわりながら
それぞれの 器官 に 記憶を うえつけ
そこここに ちいさな ものがたり が はじまる

 ひらがなと漢字の衝突もいいが、「分かち書き」のなかに、散文とは違うギクシャクとしたリズムがあり、そのギクシャクがことばの推進力になっている。

ああ そうだったのだ あのとき あそこの あの
蛇口を ひねったのには わけがあったのだ わけが

 「あの」というのは、話者と聞き手が共通の認識をもっているときにつかわれることばである。「あのレストランおいしかったね」「ああ、町外れのあのレストランだね、夕陽がきれいだったね」という具合。ここでは、山本は聞き手(他者)ではなく、自分と対話している。自分との対話なのに、ことばが「分かち書き」(とぎれとぎれ)になる。そして、それがつながったときに「ものがたり」になるのではなく、「分かち書き」になる瞬間、つまり、ことばがつまずき、つまずいたことを自覚して、そのうえで一歩進もうとするときに「ものがたり が はじまる」。
 とてもいい感じだ。
 「ものがたり」には「結末」がつきものである。しかし、「結末」というものは意味にすぎない。意味を重視するひともいるが、私は「結末(意味)」には関心がない。ことばが動く瞬間の、力学に関心がある。
 「あのとき」の「あの」が何を指すか、そういうことは、私には興味がない。「あの」ということばをつかって言おうとする意識の、あるいは感情の、なんというか、「あの」としかいいようのないものにすがるようにして動く、その「必然」にこころがふるえる。
 このことを、山本は、まあ「結論」として書いている。「必然」がそこに登場する。

ことばは あなたの くちをかりて
この世に 出現 したんだね
なにもかもが 必然の
こきゅうの よう に

 これはこれでいいのだが、私はこの4行がない方が、詩は強烈になると思う。最後の4行は読者が感じればいいことであって、作者(詩人)が言ってしまっては、「はい、これが結論(正解)です」と学校の試験で採点されているようで、ちょっとがっかりする。
 たぶん、私とは逆に、この4行、特にその「必然」ということばに感動するひとが多いと思うけれど、私は、あえて反対の意見を書いておく。

 

**********************************************************************

★「詩はどこにあるか」オンライン講座★

メール、skypeを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、ネット会議でお伝えします。

★メール講座★
随時受け付け。
週1篇、月4篇以内。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。

★ネット会議講座(skypeかgooglemeet使用)★
随時受け付け。ただし、予約制。
週1篇40行以内、月4篇以内。
1回30分、1000円。
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。

費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。
少なくとも月1篇は送信してください。


お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com


また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571

オンデマンドで以下の本を発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804


(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455

(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

 

 

問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com

 

 

 

 

 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(35)

2023-09-09 22:56:50 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「カイサリオン」。この詩のテーマは「事実とは何か」である。だからこそ、次の行が登場する。

きみの魅力は不確定性にある。

 「事実がわからない」。では、そのとき、ひとはどうするか。カヴァフィスは、どうしたのか。
 私の好きなことばで言えば「誤読する」。誤読には、誤読することでしかたどりつけない「真実」がある。「不確定性」は「誤読」を推奨する。
 その結果、どうなったか。
 詩を読んだ人だけがわかる。それでいい。詩を読まないひとに、結果を知らせる必要などない。

 

**********************************************************************

★「詩はどこにあるか」オンライン講座★

メール、skypeを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、ネット会議でお伝えします。

★メール講座★
随時受け付け。
週1篇、月4篇以内。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。

★ネット会議講座(skypeかgooglemeet使用)★
随時受け付け。ただし、予約制。
週1篇40行以内、月4篇以内。
1回30分、1000円。
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。

費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。
少なくとも月1篇は送信してください。


お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com


また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571

オンデマンドで以下の本を発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804


(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455

(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

 

 

問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(34)

2023-09-06 11:41:33 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「アチュルの月に」は若くして死んだレウキオスの墓碑銘を読む詩。古い墓碑銘なので、ところどころの文字が欠けている。自然に欠けたのか、だれかが消したのか、それはわからない。その文字を拾いながら、読む。

ふたたび「涙」「その友たる(われらの)愁い」。

 (われら)はカヴァフィスが補ったことばである。ほんとうは違う文字だったかもしれないが、カヴァフィスは詩の登場人物に、そう読ませている。
 そのとき、カヴァフィスは「われら」になる。想像力に加担することは、その想像力の人物になるということだ。
 もし、「われら」が「誤読」だとしたら、それは「加担」を通り越して、想像力を「引き受ける」ことである。引き受けなければならないカヴァフィスの「真実」、「間違わなければたどりつけない真実」がある。


**********************************************************************

★「詩はどこにあるか」オンライン講座★

メール、skypeを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、ネット会議でお伝えします。

★メール講座★
随時受け付け。
週1篇、月4篇以内。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。

★ネット会議講座(skypeかgooglemeet使用)★
随時受け付け。ただし、予約制。
週1篇40行以内、月4篇以内。
1回30分、1000円。
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。

費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。
少なくとも月1篇は送信してください。


お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com


また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571

オンデマンドで以下の本を発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804


(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455

(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

 

 

問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(33)

2023-09-05 18:36:35 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「宵闇」は終わってしまった恋の詩。その最終行。

せめて思いを散じたかった。

 和泉式部の「君恋ふる心は千々にくだくれど一つも失せぬものにぞありける」を思い出した。しかい、意味(論理)は逆になるかもしれない。カヴァフィスは、恋しい気持ちが強すぎるので、いろいろなものの上に思い散らすことで、安らぎを得ようとしている。もちろん、散らしたところで、散らばって消えていくものではなく、やはり「ひとつ」として失せず、無数なのに「ひとつ」に感じてしまうのが恋だろう。
 だが、そういった論理(意味)ではなく、私は、「散ずる/散じる」ということば、その音に、私は引きつけられる。意味はわかるが、私はぜったいにつかわない。そして、私のつかわないことばの存在が、詩に不思議な距離感をもたらす。主観的な共鳴を拒んでいるようにも感じられる。
 和泉式部の歌を読むと「そうだなあ」と思う。カヴァフィスの詩(中井久夫の訳語)を読むと「そうなのか」と思う。そういう悲しみがあるのか、と客観的に感じる。客観的に「理解する」と言い直すこともできる。
 そして、ふと、カヴァフィスの「孤独」を思ったりするのだ。カヴァフィスに、こころを共振させたひとはいたのか、と。


**********************************************************************

★「詩はどこにあるか」オンライン講座★

メール、skypeを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、ネット会議でお伝えします。

★メール講座★
随時受け付け。
週1篇、月4篇以内。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。

★ネット会議講座(skypeかgooglemeet使用)★
随時受け付け。ただし、予約制。
週1篇40行以内、月4篇以内。
1回30分、1000円。
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。

費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。
少なくとも月1篇は送信してください。


お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com


また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571

オンデマンドで以下の本を発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804


(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455

(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

 

 

問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(32)

2023-09-04 22:57:47 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

  「彼等の神々の一柱」。「彼等」は「私たち」ではない。そこには明確な区別がある。そして、「神」とは、「私たち」がけっしてなれぬ存在である。二重に「私たち」ではない。だから「彼等の神」ということばを発するとき、そこには拒絶がある、と言えるかもしれない。あるいは、蔑視が。

人々は首を傾げた。ありゃどの神さまだ。

 「ありゃ」には、「違った存在」に対する蔑視が露骨にあらわれている。
 それなのに、その蔑視をそのまま受け入れているのは、カヴァフィスには「わしら」のことは「きみら」にはけっしてわからないという矜持があるからだろう。中井は、この矜持を「ありゃ」という口語、他者の発したことばのなかに籠めている。
 複雑に交錯した愉悦が駆け抜けていく詩である。


**********************************************************************

★「詩はどこにあるか」オンライン講座★

メール、skypeを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、ネット会議でお伝えします。

★メール講座★
随時受け付け。
週1篇、月4篇以内。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。

★ネット会議講座(skypeかgooglemeet使用)★
随時受け付け。ただし、予約制。
週1篇40行以内、月4篇以内。
1回30分、1000円。
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。

費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。
少なくとも月1篇は送信してください。


お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com


また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571

オンデマンドで以下の本を発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804


(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455

(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

 

 

問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

木谷明「パスポートセンターで」ほか

2023-09-03 22:52:09 | 現代詩講座

木谷明「パスポートセンターで」ほか(朝日カルチャーセンター、2023年08月21日)

 受講生の作品。

パスポートセンターで  木谷明

台風の前日に
すでに旅先のような顔をしている人達が
なにをそんなに話し込まれて立ちんぼで待たされて
ひときわ一人だけ
友人なのかと見つめてしまう親しげに話す№8の窓口の
女性の菱形の髪型にみとれていた
そこに呼ばれてしまった

美しいその人は
書類をてきぱきこなす
全部事項の謄本をわたしは閉じたまま渡す
写真を出して免許証を返されてその手と口で

いまわたし何を返しましたっけ
同じ作業の繰り返しで
分からなく
なって

何でも聞いてください

にっこりしていうと

国内連絡先は娘さんなんですね

遠方の住所に目を落とし

出来上がりは十六日ですお使いの予定はないとのことですから

お忘れにならないでくださいね

不規則の一瞬は除籍こうしてパスポートを失効して出遭う
降りかかっていた雨は止んでいるのか酷くなっているのか
風は吹いているのか止まっているのか
長い時間のあとに

 「不規則の一瞬は除籍」から始まる最終連に関心が集まった。「これまでの詩の流れと違って、状況が変化する。その変化が詩的表現としていい」「最後の4行が、詩的時間の経過と、作者の気持ちの処理としておもしろい」「最後の4行で詩がしまっている」。
 「除籍」というようなことばは日常会話ではあまりつかわないと思う。そういう大きなことば(強いことば)が、読者の意識を揺さぶる、刺戟する。このとき、私たちはたぶん、詩を読むと同時に、詩から読まれている。私たちが「除籍」ということばをつかうのはどういうときだろう。
 また「すでに旅先のような顔をしている人達が、という行が印象的」「最近の詩は、意味がわかりやすくなった」「いままでの詩とは違った印象、ことばが多い」「書いている対象は違うが、書き方は違っていない」という感想もあった。
 木谷は「ことばを削いでいる」と、書法について語った。
 私には「ひときわ一人だけ」ということばが強く響いてきた。複数の人がいるなかで「一人」に引きつけられて行く。そして「一対一」になる。その「一対一」のあと、何かが変わってしまう。異界へ踏み出していくという感じがおもしろい。「パスポート」は異界へのパスポートかもしれない。

ハクション  池田清子

ハックショーン!
一瞬が飛んだ
一瞬で

日常の一切は
どこまで飛んだ?
健康神話は
どこにとんだ?
早し良し、遅し悪し
誰が決めた

しばらくは
遊んでおいで
帰りたくなるまで

 「おもしろい」という声が自然に漏れてきた。「日常の一切/どこまで飛んだ?、がおもしろい」「一瞬が飛んだ/一瞬で、がいい」「最終連は、ハクションを自分の一部のようなものとしてとらえていて、とてもおもしろい」。
 この詩が「おもしろい」理由のひとつは、リズムがいいからだと思う。「ハクション」というタイトルが一行目で「ハックショーン!」という音に変わる。この瞬間に、すでにリズムが加速している。加速したまま突っ走り、最後でふっと緩む。この感じが、なんともいえず楽しい。くしゃみは病気のはじまりのようにとらえられることがあるが、この詩にはそういう感じはない。明るさに満ちているのもリズムの効果だと思う。

いのち  杉惠美子

何もかも この身から
遠のいて
それでも心の奥に
ほんのりと灯る一点がある

静かに待っている人がいる
と感じる不思議なつながり

人の営みの淋しさ

言葉なく拡がる
季節がすすむ空気感と
次へすすむ私の足音

縁ある者との約束と
自分自身の今ある真実

記憶のむこうで
また会おう
会って話をしよう

 「静かな感じ、落ち着いている」「お盆の詩かな」「一連目が印象的。心の奥にともる一点」「と、ということばがつづく。とによって、違う二つのものが結びつけられ、世界が展開していく対句的手法が特徴的」「最終連は平凡かもしれない」「最終連の、記憶の向こうでという行はおもしろい」。
 私は、一連目の「遠のいて/それでも心の奥に/ほんのりと灯る一点がある」が最終連で「記憶のむこうで」ということばに変わりながら呼応している点がいいなあ、と思った。特に「それでも」という副詞がとても深い。静かに「人の営みの淋しさ」につながっている。「それでも」は、たぶん、ほかの行にも隠れている。静かに待っている人がいると「それでも」感じる不思議なつながり、「それでも」また会おう、「それでも「会って話をしよう」という具合に。
 「それでも」ということばと一緒に動いている「思い」がある。それは「淋しさ」なのかもしれないが。「それでも」がつなぎあわせる一連の「思い」のことを思うのである。

陶製の耳   青柳俊哉

陶製の耳の中の海へ 
貝を深く敷きつめる つたい降りていく
潮水のなりやまない振幅 
月がみちていく

螺旋の殻に光をいれて
あゆみだす裸身の蝸牛 たわわな
石榴の実が一斉にほころんで 
紅の種子から樹液があふれる

満ち潮に運ばれる船の
底のあかるみ 鰯と戯れるひとの
背が無限にほそ長く
月へ透けていく

 「陶製の耳から拡がるイメージ、そのイメージが統一されていて、すーっと入ってくる」「陶製の耳には冷たいイメージがあるが、動きがある。最終行の、月へ透けていく、が好き」。一方、「三連目のイメージがわからなかった」の声も。
 「陶製の耳」をめぐっては、「硬いイメージがある」という感想の一方、「人の手を通してつくられた耳、人の手の柔らかさを感じる」という対照的な意見があった。感想が違うということは、とても大切なことだと思う。違う感想があるからこそ、おもしろい。
 「聴覚の振幅があり、おもしろい」という声も。
 青柳は、貝殻(いのちを守るもの)、貝殻の浜辺から、この詩を発想したと語った。命の余韻を伝え続ける運動を書いた、と。
 私は、二連目が非常におもしろいと思った。耳の螺旋階段を蝸牛が下っていく。そのとき銀色の軌跡が残る。それが肉体の内部へ「光をいれる」という鮮やかなイメージになる。耳は聴覚だが、この光の存在によって視覚も動く。イメージが輻輳する。その瞬間がおもしろい。


**********************************************************************

★「詩はどこにあるか」オンライン講座★

メール、skypeを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、ネット会議でお伝えします。

★メール講座★
随時受け付け。
週1篇、月4篇以内。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。

★ネット会議講座(skypeかgooglemeet使用)★
随時受け付け。ただし、予約制。
週1篇40行以内、月4篇以内。
1回30分、1000円。
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。

費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。
少なくとも月1篇は送信してください。


お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com


また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571

オンデマンドで以下の本を発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804


(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455

(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

 

 

問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com

 

 

 

 

 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(31)

2023-09-03 09:31:09 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「詩人アンモネス、六一〇年没、享年二九歳に」。詩人ラファエルに、詩人アンモネスの墓碑銘を依頼する。依頼するのは親しかった仲間だ。

わしらの生活を行間に籠めてくれ。

 「わしら」とは「私とアンモネス」のことではない。「わしらとアンモネス」のことだ。このとき、アンモネスは「飾り」で、「わしら」そのものが主役なのだ。あるいは「生活」そのものが主役なのだ。
 個人(故人)ではなく、その「生活」。
 「街路にて」に「その子」が登場したが、「詩人アンモネス」は「その子」と呼ばれるひとりなのだ。ある人間を「その子」と呼ぶとき、「その」によって共有されるものがある。「その生活」がある。「わしらの生活」とは「その生活」なのだ。
 

**********************************************************************

★「詩はどこにあるか」オンライン講座★

メール、skypeを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、ネット会議でお伝えします。

★メール講座★
随時受け付け。
週1篇、月4篇以内。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。

★ネット会議講座(skypeかgooglemeet使用)★
随時受け付け。ただし、予約制。
週1篇40行以内、月4篇以内。
1回30分、1000円。
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。

費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。
少なくとも月1篇は送信してください。


お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com


また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571

オンデマンドで以下の本を発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804


(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455

(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

 

 

問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(30) 

2023-09-02 21:00:38 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「イグナチオスの墓」。墓碑銘。そのなかに、

わが二八年、まさに消去さるべし。

 いつも、こころが震える。
 この詩は、「過去は消し去り、以後は聖職者として生きた」とつづくのだが、私はまったく違う意味で受けとめ、こころが震えるのだ。
 私は何年生きることになるのか。知らない。しかし「わが〇〇年、まさに消去さるべし。」というのは、私の理想の死だ。
 だれかが消し去ってくれるわけではない。自分自身で自分を消し去らなければならない。すべてを、ただ消し去りたい。
 墓碑銘はもちろん、墓もいらない。何もない、「完璧な無」を知りたいという欲望があって、なかなか死ねないという矛盾を私は生きている。
 

**********************************************************************

★「詩はどこにあるか」オンライン講座★

メール、skypeを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、ネット会議でお伝えします。

★メール講座★
随時受け付け。
週1篇、月4篇以内。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。

★ネット会議講座(skypeかgooglemeet使用)★
随時受け付け。ただし、予約制。
週1篇40行以内、月4篇以内。
1回30分、1000円。
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。

費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。
少なくとも月1篇は送信してください。


お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com


また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571

オンデマンドで以下の本を発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804


(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455

(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

 

 

問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする