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白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

新約 とある魔術の禁書目録 2 (第二巻) 感想

2011-08-15 16:59:27 | 超電磁砲/禁書目録
とりあえず二巻が出たので読んでみた。
ネタバレ自体は目的ではないけれど、やむなく触れることもあると思うので、そのあたりは了解されたし。

とはいえ、その前にちょっと『禁書目録』原作について触れておく。

『禁書目録』は、ずっと原作を読まずにアニメのほうを見ていたわけだけど、二期の展開があまりにも原作を読んでないとわからないことばかりだったので、仕方が無いので読みだして、一応「無印」は全部読んだ。で、いつの間にか「新約」が出たので、そちらも勢いで読むようになった。

で、今回がその第二巻。

「無印」のクライマックスであるロシアで行われた第三次世界大戦の後日談として、その出来事の全貌について、作中内の登場人物たちである上条、一通さん、浜面にひと通り説明がなされたのが今回の基本的な流れ。

といっても「無印」の読者は既に知っていることばかりで、その要約が改めて作中登場人物に示されることで、上条、一通、浜面が共通認識を持った上で共同戦線?を貼っていくためのレベル合わせが行われたという感じかな。

一応最後の方でのアレイスターとバードウェイのやり取りを見れば、一応「無印」については、アレイスターが、上条、一通、浜面の、いわばパぺットマスターとしてあったわけだけど、状況がアレイスターの手に余るようになったことを明確にすることで、文字通り、上条らが自主判断でことに当たるしかなくなった、という初期設定に変えられた。

もう一つ、これは「無印」の時にも匂わされていたことだけど、

上条の右手=幻想殺しとは何なのか?

というのが「新約」の大きなテーマとされた。
いわば、幻想殺しの謎、が一種の聖杯探求に当てられる。

合わせて、上条が記憶喪失であることを踏まえると、

上条当麻とは何者か?

というアイデンティティ探求の物語としても設定された。

このあたりは、上条の記憶喪失に気付いている美琴がこの先の上条のパートナーの位置を果敢に占めようとしている動きからも見て取れる。

これは「無印」を読んで思ったことだけど、この物語はとにかく無駄にキャラクターが多い。しかも、それらキャラクターズがいずれもエピソード単位で出てくるために相互の繋がりが見えにくい。そのくせ、読まされる側は、一つのエピソードに貼り付けられたキャラクターを、そのエピソード単位で付き合わされる。

なので、無印を読んだ後の感想は、とてもイライラする物語だということだった。
単純に展開が鈍い。そのくせ、物語自体は大して進展しない。

特に、無印最後のロシア編については、まぁ、新約以後の展開を踏まえてのことだと思うけれど、上条、一通、浜面、の動きがほぼ三ルート別々に展開する。で、通常、これらは最後に一つの道に集約するのが、物語的カタルシスを得るためのお約束だ、と思って読み進めても、結局、大きな一本にはならずに、よくわからないうちに、上条がフィアンマを倒して終わってしまった。

その落ち穂拾いをしたのが今回の新約第二巻という感じ。

で、一応、新ラスボス的に登場した、というか、次回以降登場を予告されたのが「グレムリン」ということだけど。

うーん。

正直、懸念しているのは、『灼眼のシャナ』原作のような残念な展開にならないかということ。

シャナの方は中盤以降、何だかよくわからない二つの陣営どおしの戦いになってしまって、もう何だか収拾がつかない感じで、だらだらと進んでいる(というか、あまりのダラダラ感についていけず、もう読むのをやめた)。

そういう感じに、この「新約」もならないか、ということ。

一応、幻想殺しが何か?上条当麻とは何者か?という大きな解明課題を今回出すことで、表向きの主人公は上条が務めることは予告されたわけだけど、とはいえ、一通さんや浜面がいて、彼らもそれぞれパーティを従えている。加えて、イギリスには天草式を合わせて上条支援組が多数残っている。

要するに、いっときあった「上条勢力」というのが実際に形成され、それがグレムリンと向き合うことになる。で、それら対決を、表でかき回す、半ば語り部の役割をバードウェイが行う。そういう構図が待っている。

で、その構図が、無駄に戦い描写のインフレにならないかが心配なところ。

あとは、もはや禁書目録さんあたりはほんと出てこなくてもいいんじゃないかな、とかね。

まぁ、だからこそ、いろいろな判断をもって、「新約」という新シリーズとしてリセットしたのだろうけど。

ただ、なんだろうなぁ。昔のジャンプ的な、最終的には皆仲間!、みたいなノリだけで、この先、物語的に破綻させずにいけるのかどうか。

あとは、一応表向きの語り部をバードウェイが引き受けることで後景に退くことになるアレイスターが、しばらくの潜伏期間を経て、いわば無印のフィアンマみたいな、とんでも野望の成就を目指す大バクチに打って出てきてくれるかどうか、というところかな。

エピソードを繋いでいくうちに話の規模のインフレが起こってしまった無印と違って、新約は、そのあたりを出発点にし、一度地ならしをしてからスタートしているように見えるのだが、果たしてうまく回るのかどうか。

そういう意味でも、禁書目録さんに代わって上条のパートナーに名乗りを上げた?美琴が、いい意味でどれだけ饒舌に上条の真意を吐露させるような対話を上条に向かって投げかけることができるかどうかが、物語展開上の鍵にように思える。

ただ美琴だと、微妙に一通さんのパーティともキャラが複製経由で被るというか。
逆に、一通さんの方のやり取りが単調になるのかもしれない。

とにかく、ヒーロー役三人のキャラを満遍なく動かそうとすると、無印最後のロシア編のように間延びした展開になるのは必至なので、そこをどう押さえて、一通さんや浜面をどれだけバイプレーヤーにできるかが鍵なんだろうな。

気分的には、ワールドカップ編に突入した『キャプ翼』みたいな感じがするというか。
上条=翼、一方通行=日向、浜面=松山、・・・、という感じ。
サッカーだと布陣がちゃんとあって、しかもスタメンは11名と決まっているから、どれだけキャラのインフレが起こっても、ちゃんと間引きが出来るわけだけど。
同じことがこの「新約」でできるかどうかが鍵、かな。

要するに、テンポ良く物語を進めることができるかどうか。

そういう意味では、作者の鎌池和馬がきちんとストーリーテラーになれるかどうか、が大きな鍵だし、
編集者がラノベを単なるキャラクター小説に留まらせないように仕切ることができるかどうか、というのが見どころのように感じる。

ともあれ、この第二巻で初期設定は新たになされたわけで。

次回のハワイの騒動で、どれだけスピーディな物語展開と連携されたキャラの動きが実現されるかに期待したいと思う。

とりあえず、後、2巻ぐらいは付き合ってみるつもり。

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