熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

METライブビューイング・・・「ワルキューレ」

2021年04月16日 | クラシック音楽・オペラ
   今回の「ワルキューレ」は、2011年5月14日の舞台で、ロベール・ルパージュの演出で舞台は壮大な機械仕掛けで同じだが、前回2019年のMETライブビューイングの舞台と異なって、キャスティングが、ジークリンデのエヴァ=マリア・ヴェストブルックだけ同じで、代わっているので、大分雰囲気が違っている。
   2011年のMETライブビューイングで、六本木ヒルズの映画館へ行って観ているので、2回目である。

   今回の陣容は、
   指揮:ジェイムズ・レヴァイン
   演出:ロベール・ルパージュ
   出演:
     ジークフリート:ヨナス・カウフマン、ヴォータン:ブリン・ターフェル、ブリュンヒルデ:デボラ・ヴォイト、フリッカ:ステファニー・ブライズ、 ジークリンデ:エヴァ=マリア・ヴェストブルック

   カウフマンとヴェストブルックのコンビは秀逸で、その後、プッチーニの「西部の娘」で、ミニー:エヴァ=マリア・ヴェストブルック、ジョンソン:ヨナス・カウフマンで共演して素晴らしい舞台を見せている。
   カウフマンが美しい音楽だと感嘆していた第一幕だが、ジークリンデの歌う「冬の嵐は過ぎ去り」、ジークムントの「君こそは春」に続く第一幕の終わりの愛の二重唱の何と素晴らしいこと、そして、第二幕の別れを直前にした二人の二重唱の何と崇高なこと、この美しさ素晴らしさは感動的であった。

   ブリュンヒルデのデボラ・ヴォイトだが、後述するが、前には、ドミンゴのジークムントを相手にジークリンデを歌っていたのが、今回は、ブリュンヒルデで登場して、パンチの効いた凄いワルキューレを見せてくれており、2019年のMETライブビューイングでは、ナビゲーターを演じるという役者ぶり、
   このMETライブビューイングで、ワーグナーで一番好きな「トリスタンとイゾルデ」に登場して、イゾルデを歌ったときには、ビルギット・ニルソンの舞台を思い出して感激し、一気に引き込まれてファンになった。蛇足だが、以前には福与かであったのだが、随分、スマートになり魅力的になった。
   ヴォータンのターフェルは、ロイヤルオペラで、駆け出しの頃から観ているのでその凄さを知っているが、これまで、ジェイムス・モリスで観ることが多かったので、新鮮であり、重厚さが増して、流石にシェイクスピアの国の歌手で、表情豊かで実に芸達者になったターフェルを観て頼もしかった。終幕、ヴォータンが「さらば、勇敢で気高いわが子よ」と歌って、最愛の娘ブリュンヒルデとの別れを吐露し、「ヴォータンの告別」の音楽が感動を呼ぶ。長いモノローグも上手い。

   案内役が、ジークムントでファンを魅了し続けてきたプラシド・ドミンゴなので、解説は勿論、歌手たちとのインタビューも魅力的であるのがよい。

   今回も、METライブビューイングのHPの写真を借用する。
   口絵は、第3幕冒頭の「ワルキューレの騎行」の直後、ブリュンヒルデが、英雄ジークフリートを身ごもったジークリンデを逃すために、怒ったヴォータンから逃れての騎行シーン。以下は、ジークムント、ジークリンデ、ブリュンヒルデ、ヴォータン。
   
   
   

   私が初めて「ワルキューレ」の舞台を観たのは、1989年10月10日、ロンドンのロイヤル・オペラ劇場で、指揮はベルナルド・ハイティンク、ジークフリート:ルネ・コロ、ジークリンデ:ガブリエーレ・シュナウト、ヴォータン:ジェイムス・モリス、ブリュンヒルデ:グィネス・ジョーンズ、フリッカ:ヘルガ・デルネッシュと言う凄いキャスティングであった。
   その後、珍しい公演はロシア色の強いギルギエフの舞台で、2004年9月29日、ニューヨークのMETで、指揮:ワレリー・ギルギエフ、ジークフリート:プラシド・ドミンゴ、ジークリンデ:マーガレット・ジェーン・レイ 、ヴォータン:ウラジーミル・ヴァネーエフ、ブリュンヒルデ:Olga Sergeeva、フリッカ:イヴォンヌ・ネフ、
   ギルギエフが意識してロシア人歌手を起用したのであろうが、 Olga Sergeevaは、凄い歌手のようだが、英文の Wikipediaにも出てこない。

   その他、パンフレットが探せなくて記憶にあるのは、2000年3月にニューヨークに行って観たMET公演と、2006年6月の東京公演で、 
   METのアーカイブで調べて、そのまま転写すると、それぞれ、キャスティングは、次の通り。
   (2000年 New York)
   Conductor...............James Levine
   Brünnhilde..............Jane Eaglen
   Siegmund................Plácido Domingo
   Sieglinde...............Deborah Voigt
   Wotan...................James Morris
   Fricka..................Hanna Schwarz

   (2006年 Tokyo)
   Conductor...............Andrew Davis 
   Brünnhilde..............Deborah Polaski
   Siegmund................Plácido Domingo
   Sieglinde...............Deborah Voigt
   Wotan...................James Morris
   Fricka..................Yvonne Naef
   
   何故、キャストに拘って観た舞台を列挙したかというのは、「ワルキューレ」が上演されることが、比較的少ないうえに、キャストが、かなり、固定していることで、ワーグナー歌いと言うか、この大曲を歌いきる歌手が少なくて、大変だと言うことである。
   ロイヤルオペラで、ハイティンク指揮の「ニーベルングの指環」のうち、序夜 『ラインの黄金』(Das Rheingold)を除いて、第1日 『ワルキューレ』(Die Walküre)、第2日 『ジークフリート』(Siegfried)、第3日 『神々の黄昏』(Götterdämmerung)を観ているが、すべて、ジークムントとジークフリートはルネ・コロであり、ブリュンヒルデはグィネス・ジョーンズであった。
  
   以前に、ウィーン国立歌劇場の指揮者ベリスラフ・クロブチャールを、ウィーンの自宅に訪れた時、丁度、「ワルキューレ」のリハーサルを終えて帰ってきたところで、聞いたら、ブリュンヒルデはグィネス・ジョーンズであった。どうだったかと聞いたら、こんな大物歌手は、公演直前にしか来ないのだと言って笑っていた。ビルギット・ニルソンのブリュンヒルデの凄いCDを残しているが、カラヤンより沢山「ワルキューレ」を指揮しているのだと言ってDATAを見せてくれた。
   当時は、ヨーロッパでは、グィネス・ジョーンズのブリュンヒルデが定番であったのであろうか。彼女の「サロメ」を観たこともあるが、ダイナミックな凄い歌手であって、キリ・テ・カナワと共に好きな歌手であった。

   余談だが、昔、ユダヤ人指揮者は、ヒトラーが傾倒したワーグナーを嫌って演奏しなかったと聞いていたのだが、タブーが消えたのか、ロイヤルオペラで、音楽監督であったベルナルド・ハイティンクの「ニーベルングの指環」の他にも、「トリスタンとイゾルデ」「パルシファル」を観ており、楽しませて貰った。
コメント
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