熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

PS:ケネス・ロゴフ「第2次トランプブームは破綻するのか?Will the Second Trump Boom Go Bust?」

2025年01月16日 | 政治・経済・社会時事評論
   ドナルド・トランプ次期米大統領はジョー・バイデン氏から強力な経済を引き継ぐが、第1期よりも厳しい世界経済に直面している。新政権は経験の浅いメンバーが多く就任する可能性が高いため、初期の景気もすぐにトランプ政権初の非パンデミック不況に取って代わられる可能性がある。と言う。

   国内政策にかかわらず、彼は1期目よりも厳しい経済情勢に直面している。
   まず、世界は8年前よりも不安定な場所になっている。
   トランプは第1期に、比較的控えめな関税を課したが、それでも米国の消費者に数十億ドルもの高価格負担を強いるには十分だった。しかし、今回は中国製品に最大60%というはるかに過激な関税を課すことを提案している。これらが最終的に20%に引き下げられたとしても、インフレを加速させ、長年アジアのサプライチェーンへのアクセスから多大な恩恵を受けてきた低所得層および中所得層の米国人に打撃を与えることになるだろう。
   さらに、米国の公的債務はトランプの最初の任期開始以来大幅に増加している。実質金利の急上昇、特に長期債務の急上昇は、債務水準の上昇がただ飯になるという超党派の幻想を打ち砕いた。米議会予算局は、金利上昇により今後数十年間で米国の財政赤字が2~3%増加すると予測しているが、これはおそらく楽観的な想定に基づいている。トランプが自ら「史上最高」と称する経済でも、経済成長が政府債務の増加に追いつくかどうかは確実ではない。
   トランプは、NATO加盟国を脅して同盟の費用のより大きな分担をさせることで、予算の圧力を緩和できる可能性がある。しかし、NATOから脱退する可能性は低い。

   米国経済は、海外からの強い逆風にも直面しており、景気後退を引き起こすとは予想されていないものの、将来の成長を圧迫する可能性がある。
   中国の不動産バブル崩壊後、中国経済は世界の名目GDP成長の約3分の1を牽引することはなくなるだろう。
   一方、欧州最大の経済大国ドイツは、ウクライナ戦争で成長モデルの3本柱であるロシアの安価な天然ガス、中国への輸出、米国の安全保障保証が損なわれ、苦境に立たされている。ドイツは2023年に景気後退に陥り、今年も再び景気後退に陥る可能性があるが、これは2000年代初頭に実施した市場志向の労働改革が徐々に後退していることが一因である。

   では、第2の「トランプブーム」は起こるのだろうか? 可能性はあるが、今回はそれほど簡単には起こらないだろう。
   バイデンから引き継いだ力強い経済、そしておそらく短期的な景気刺激策が、トランプ政権1年目に急成長を牽引したとしても、その勢いは長続きしないかもしれない。世界経済が停滞し、地政学的緊張が高まるにつれ、課題が必ず出てくる。予想通り、新政権に経験の浅いメンバーが多く含まれるので、こうした初期の経済的ハードルを乗り越えるのに苦労するかもしれない。そうなれば、どんなブームもすぐにトランプ政権初の非パンデミック不況に取って代わられる可能性がある。If, as expected, the new administration includes many inexperienced members, it may struggle to overcome these early economic hurdles. Should that happen, any boom could quickly give way to the first non-pandemic recession of the Trump era. と結論付けている。

   「新政権に経験の浅いメンバーが多く含まれる」と言う人材不足の指摘だが、トランプもマスクも、世界に冠たるビジネス・スクール:ウォートン・スクールの出身であり、同窓生には、金融界を筆頭に各界の重要ポストで、百戦錬磨の有能な逸材が綺羅星のごとく活躍している。
   なぜ、ウォートン人材を登用しないのか、不思議である。ケネディなど、ハーバード・マフィアを存分に活用していた。

   意識になかったので、興味深いのは、民主党の左傾化への批判。
   ホワイトハウスと上院を失った民主党は、何年も回復できないかもしれない痛烈な選挙の挫折を味わい、トランプの政策に対抗する能力が制限されている。民主党は中道に転向するのが賢明だろう。
   アメリカの大学と主流メディアも、トランプ復活の責任を負っている。民主党に建設的な批判をしなかったことで、彼らは民主党の左派に党の将来を決めさせてしまった。保守的な考えが学術的な議論からますます排除され、「キャンセル カルチャー」が何年も放置されている中で、党が有権者とのつながりを失っているのも不思議ではない。大学のキャンパスや主流の報道機関でよりバランスのとれた議論が行われれば、両党の政治家の間で経済政策に対する情報に基づいた中道的なアプローチが促進される可能性がある。と言う。
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