
10月11日、東大の安田講堂で、読売新聞とNHKの主催で科学フォーラム東京「21世紀の人類の課題と科学の可能性」が開かれて、ノーベル賞受賞科学者の李遠哲台湾中央研究院院長と利根川進MIT教授が基調講演を行い、その後、ノーベル賞学者のウォルター・コーンUCA名誉教授と小宮山宏東大学長が参加し、チャーミングな大島まり東大教授の司会でパネルディスカッションが持たれた。
非常に程度と格調の高い講演会で、正に、標題のこれからの人類の課題と科学の可能性について真剣に討論されていて、久しぶりに知的満足を味わって夕闇迫る銀杏並木を歩いて帰ってきた。
李博士は、中途半端にグローバル化したあまりにも巨大化した現在の経済社会において、緊急問題は、地球温暖化問題、エネルギーの需給ギャップの拡大、鳥インフルエンザ等の感染症の蔓延等々深刻な問題に直面していることで、人類はこれらを科学と技術の力で解決すべきであると問題提起し、必ず出来る筈だと言う。
しかし、持続可能な人類の将来の発展の為には、一国で対応できるような問題ではなく、全人類が英知を結集して一致協力して当たるべきで、科学者も科学調査や研究での国際協力だけではなく、これらのグローバルな問題を解決する為に国境を越えて一致団結して先頭に立って協力すべきである、と結んだ。
利根川教授は、もっと長期的なスパンで考えて見たいと言って、生命科学、脳科学の立場から、「Memory, Mental glue for your past, present & future」について、自身のMITでの研究を通じて語った。
原理主義の宗教グループや選ばれた一部の政治家などが戦争を起こして人を殺戮することをなんとも思っていない。このようなことは普通の状態では決して起こり得ない筈だが、ある条件下で起こる。
このような行動の意思決定は脳の中で行われているのだが、精神的な心の活動について最高の高等動物ホモサピエンスの脳の中でどんなことが起こっているのか、心の機能を自然科学を使って解明して見たいと言う。
人間の脳がどうなっているのか分からなければ人間自身が分からない。
しかし、現実に、人間の脳の機能については殆ど何も解明されていないし分かっていないのだと言う。
Memory 記憶は、過去、現在、未来を連結させる機能で、重要な精神現象だが、アルツハイマー病患者はこの記憶を欠落している。
ネズミの脳の海馬の特殊な細胞を取り去ると、記憶機能が完全に欠落してしまって、陸が分からず水中を彷徨い泳ぐのだが、その姿を画面に映しながら、Memoryについて説明した。
このようなmutant mouseを使って記憶はどのように脳に溜め込まれるのかを研究中のようだが、面白かったのは、映画「レインマン」のキム・リークの話。
本を1ページ分10秒で全部覚え込む能力があり、12000冊の本を読んで中身を全部記憶していた程記憶力が抜群であったが、覚えているだけで、その記憶・知識を総合したりルール化したり、兎に角、活用することは一切出来なかった。
9.11事件で強烈な経験をした人々は記憶が強烈過ぎて、一部のベトナム兵がそうであるように同じ様なエモーショナルで精神不安定になって困っている。
東大生を含めて、記憶力が良いことが果たして幸せかどうか分からない、と茶化すと場内から爆笑が起こった。
話は飛ぶが、どんなシチュエーションで言われたのか忘れたが、利根川教授は、人類の将来について言及して「人類は必ず滅びる、そうでなければダーウィンが正しくないことになる」と言っていたのが妙に記憶に残っている。
大学の使命について議論が移った時に、利根川教授は、
特にエリート大学は、リーダーを養成すべきであると強調した。
MITのプロのアドミッション・オフイサーが学生を選考する時に一番重視するのはこのリーダーとしての素質であると説明しながら、受験生を選考する時にボランティア活動等でどのようなメンタリティでリーダーシップを発揮したか等クライテリアに加えるべきだと言っていた。
余談だが、学業成績の良くなかったケネディ大統領がハーバード大学に入学できたのはリーダーシップの素養を認められたからだと言うのは有名な話である。
もう一点は、哲学を教えるべきだと言うこと。
専門教育だけではなく、ブロードな教養に力を入れるべきだと言う指摘で、このブログでも書いたが、要するに、日本のリーダーに欠落しているリベラル・アーツ方面の教養の涵養である。
この教育と大学の目的については他のノーベル賞学者や小宮山東大学長の傾聴すべき議論があったが今回は割愛する。
ところで、この複雑怪奇な人間の脳が、知識を知恵に転換して、果たして人類の未来に対して崇高な目的を感知して導いてゆく能力があるのかどうかは分からない、と利根川先生は言っていた。
あの世があるのかどうか、人間の命とは何なのか、
科学が少しづつ宗教や哲学の領域に踏み込み始めたと言うことであろうか。
非常に程度と格調の高い講演会で、正に、標題のこれからの人類の課題と科学の可能性について真剣に討論されていて、久しぶりに知的満足を味わって夕闇迫る銀杏並木を歩いて帰ってきた。
李博士は、中途半端にグローバル化したあまりにも巨大化した現在の経済社会において、緊急問題は、地球温暖化問題、エネルギーの需給ギャップの拡大、鳥インフルエンザ等の感染症の蔓延等々深刻な問題に直面していることで、人類はこれらを科学と技術の力で解決すべきであると問題提起し、必ず出来る筈だと言う。
しかし、持続可能な人類の将来の発展の為には、一国で対応できるような問題ではなく、全人類が英知を結集して一致協力して当たるべきで、科学者も科学調査や研究での国際協力だけではなく、これらのグローバルな問題を解決する為に国境を越えて一致団結して先頭に立って協力すべきである、と結んだ。
利根川教授は、もっと長期的なスパンで考えて見たいと言って、生命科学、脳科学の立場から、「Memory, Mental glue for your past, present & future」について、自身のMITでの研究を通じて語った。
原理主義の宗教グループや選ばれた一部の政治家などが戦争を起こして人を殺戮することをなんとも思っていない。このようなことは普通の状態では決して起こり得ない筈だが、ある条件下で起こる。
このような行動の意思決定は脳の中で行われているのだが、精神的な心の活動について最高の高等動物ホモサピエンスの脳の中でどんなことが起こっているのか、心の機能を自然科学を使って解明して見たいと言う。
人間の脳がどうなっているのか分からなければ人間自身が分からない。
しかし、現実に、人間の脳の機能については殆ど何も解明されていないし分かっていないのだと言う。
Memory 記憶は、過去、現在、未来を連結させる機能で、重要な精神現象だが、アルツハイマー病患者はこの記憶を欠落している。
ネズミの脳の海馬の特殊な細胞を取り去ると、記憶機能が完全に欠落してしまって、陸が分からず水中を彷徨い泳ぐのだが、その姿を画面に映しながら、Memoryについて説明した。
このようなmutant mouseを使って記憶はどのように脳に溜め込まれるのかを研究中のようだが、面白かったのは、映画「レインマン」のキム・リークの話。
本を1ページ分10秒で全部覚え込む能力があり、12000冊の本を読んで中身を全部記憶していた程記憶力が抜群であったが、覚えているだけで、その記憶・知識を総合したりルール化したり、兎に角、活用することは一切出来なかった。
9.11事件で強烈な経験をした人々は記憶が強烈過ぎて、一部のベトナム兵がそうであるように同じ様なエモーショナルで精神不安定になって困っている。
東大生を含めて、記憶力が良いことが果たして幸せかどうか分からない、と茶化すと場内から爆笑が起こった。
話は飛ぶが、どんなシチュエーションで言われたのか忘れたが、利根川教授は、人類の将来について言及して「人類は必ず滅びる、そうでなければダーウィンが正しくないことになる」と言っていたのが妙に記憶に残っている。
大学の使命について議論が移った時に、利根川教授は、
特にエリート大学は、リーダーを養成すべきであると強調した。
MITのプロのアドミッション・オフイサーが学生を選考する時に一番重視するのはこのリーダーとしての素質であると説明しながら、受験生を選考する時にボランティア活動等でどのようなメンタリティでリーダーシップを発揮したか等クライテリアに加えるべきだと言っていた。
余談だが、学業成績の良くなかったケネディ大統領がハーバード大学に入学できたのはリーダーシップの素養を認められたからだと言うのは有名な話である。
もう一点は、哲学を教えるべきだと言うこと。
専門教育だけではなく、ブロードな教養に力を入れるべきだと言う指摘で、このブログでも書いたが、要するに、日本のリーダーに欠落しているリベラル・アーツ方面の教養の涵養である。
この教育と大学の目的については他のノーベル賞学者や小宮山東大学長の傾聴すべき議論があったが今回は割愛する。
ところで、この複雑怪奇な人間の脳が、知識を知恵に転換して、果たして人類の未来に対して崇高な目的を感知して導いてゆく能力があるのかどうかは分からない、と利根川先生は言っていた。
あの世があるのかどうか、人間の命とは何なのか、
科学が少しづつ宗教や哲学の領域に踏み込み始めたと言うことであろうか。