熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

日本のマスコミの国際的関心の欠如

2006年02月06日 | 政治・経済・社会
   今、デンマークに端を発し欧州のメディアに掲載されたイスラムの預言者ムハンマド(マホメット)に対する風刺画が世界中を騒がせている。
   この問題は、1988年に起こったサルマン・ラシュディのやはりマホメットを扱った小説「悪魔の詩」が引き起こしたものと類似しているが、この時は、時のイランの権力者ホメイニ師の死刑宣告が出るなど、イスラム世界の反発を買った。
   キリストをカリカチュアにする欧米文化では風刺で終わるのかもしれないが、敬虔な信者の多いイスラム教の世界では、別問題である。
   某ノーベル賞文学者が言ったが、「預言者やあるいは聖なるものとなされている何ものも侮辱する権利はない」と言うことである。

   ところで、この風刺画事件であるが、今世界の大問題にもなっているイランの原子力に関する査察拒否と核燃料技術の研究再開の動きなども含めてであるが、とにかく、日本の新聞もTVも世界の重要な国際ニュースに対してその扱いが、欧米のメディアと比べて低すぎる。
   海外メディアと言っても、TVはスカパーのCNNとBBC,それに、NHKのBSの世界のニュースから、そして、インターネット版の欧米の新聞からであるが、とにかく、欧米のメディアは、トップかそれでなくても重要ニュースとして大々的に報道し論評している。

   「私の経済効果」を売り物にしているのだから仕方がないとしても、わが日経は、国際面には載せているが、極めてささやかな扱い。
しかし、類似紙のファイナンシアル・タイムズの電子版は写真入のトップページ掲載であり、ウオール・ストリート・ジャーナルは、What's Newsに載せている。
   この重要な国際問題に対する日本のメディアの扱い方の低さについては、長い欧米での生活中にも経験して何時も残念に思っていたことであるが、このことは、日本及び日本人の国際理解と国際感覚の不足に直結している。
   ドラッカーが、日本の企業が一番グローバル化が遅れていると書いていたが、このことにも一脈あい通じている。

   日本のTVのニュースは、NHKも勿論だが、些細な事も含めて国内ニュースの比重が高すぎる。
   交通事故や盗難、火事情報が悪いわけではないが、世界には、地球の運命や人類の将来を左右しかねない国際問題や事件が充満しているのに、それらを殆ど無視して「何処何処の良い子達は、・・・」と言ったどうでも良いニュースを流し続けている。

   一般の全国ベースのTVや新聞、雑誌を、欧米のカウンターパートと比較の為に、夫々のインターネットから引き出せば分かるが、国際ニュースの扱い以外にも内容や程度の差が歴然としている。
   国際感覚については、アメリカは人種の坩堝であり、ヨーロッパは国境を接した多くの小国が人種、民族、言語、風俗習慣等入り組んで存在しているから、と言った要因があるかも知れないが、もっと重要なことは、自分達がグローバル化されたこの地球の上に同じ利害を共有しながら生きていると言う自覚の違いであろうと思う。
   
   日本人は最近海外旅行など結構海外に出かけているが、日本人が学会でも或いは多くの国際的な桧舞台で活躍できないのは、まず第一に英語力の不足であろう。
   昔から、読み書きそろばん、と言う。
   私は、今でもこの基本を叩き込む教育の基本は正しいと思っているが、それなら、避けて通れない英語力の涵養の為に、義務教育期間中と言うと短いかもしれないが、少なくとも大学卒業生には、総て英語を話せる実力を身につけさせることを教育の基本方針とすればどうであろうか。
   どうせ英語は手段と言う人がいるかも知れないが、手段なら手段で、それから自分の勉強なり仕事を発展させて行けば良いのである。
   
   それから、沈黙は金、などと言う教育をやめること。

   その前に、日本のジャーナリストや記者のレベルアップが緊急で、外国記者の後ばかりを追っかける取材を止めて自分の足で歩けるようになることである。
   ジャーナリストや記者は、最高の知識人であり極めてプレスティージの高いプロフェッショナルなのであるから、それだけの使命と十字架を背負っているのである。
   とにかく、日本のメディアの質を上げない限りグローバル社会に対応出来ないと思う。
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