熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

イギリスの好況は本物か?

2007年11月12日 | 政治・経済・社会
   昨日曜日、報道2001で、出井伸之氏が出演して金融資本主義が話題になり、竹村健一氏が、金融によってイギリスが繁栄している話を始めたら、出井氏は「そうだが問題がある」と言うニュアンスの発言をしていた。
   話題になった出井氏の新書「日本進化論」の中で、出井氏は、「英国病」を脱したイギリスに学ぶ、と言って、国を挙げての外資を受け入れて競争政策を取ったおかげで再び成長軌道に乗ることが出来たと書いて、英国の金融産業の好調が英国の再生に大きく貢献していることを認めている。
   この考え方は、野口悠紀雄教授の資本開国論に近いが、出井氏が、ソニーの全世界の財務管理をロンドンに集中したと言うくらいなのに、この英国の金融市場の好況に疑問を持ち始めていたのには、私自身、思い当たるふしがあったので注目した。
   
   この2年イギリスに行っていないので、最近の英国事情に疎いのだが、ポンドが異常に強い為にイギリスの物価が非常に高く、当時もそうだが、私自身は、メンバーなので、ロイヤル・オートモビル・クラブに宿泊したが、一寸したホテルでも一泊すると10万円近いほど高く、物価はインフレ状態で、イギリスそのものが豊かな状態にあるとは思えなかった。
   ロンドンの中心で何日か過ごした印象だけだが、街全体が、私がいた1988年から1993年頃よりも、商店などの質が落ちて寂れた様な感じがして仕方がなかった。
   外資の積極的な導入策で国内景気を浮揚させたサッチャー政策の為に、シティの看板であった大銀行を筆頭に目ぼしい産業の英国企業は殆ど外資の軍門に下り、英国経済のウインブルドン現象が極に達してしまっている。
   シティを核とした金融関連産業のみの好況で英国経済が支えられていて、表現が悪いが、一将功なり万骨枯ると言うのが、現実の英国経済ではないかと思ったのである。

   今日、日経のセミナーで、寺島実郎氏が、「グローバル競争社会における経営戦略」で、私自身の疑問に答えてくれるような話をした。
   「ものづくり」とPLMのセミナーなので、寺島氏の本題は別の所にあったのだが、21世紀に入って世界同時好況だが、GDP成長率の4倍以上で増加する異常なマネーゲームに触れて、ロンドンのシティを語った。
   今、シティの話題は、ロシアマネーの異常な流入で活況を呈していると言うのである。

   オイル高騰で余剰資金が溢れているロシアや中東のマネー、日本の低金利と円キャリ、それに、サブプライム恐慌を避けるために欧米日の中央銀行が放出した厖大な資金等々で益々流動性が高まり、行き場を失った巨大な資金がマネーゲームに狂奔する、この余波がロンドンのシティを直撃していると言うことであろうか。
   寺島氏は、「経済の実力以上にマネーが流入すればどうなるか」と言いながら、英国経済のウインブルドン現象を語った。
   異常なポンド高、インフレなどは、過剰なマネーの流入とシティの好況の直接的結果であろう。
   基幹産業である電力会社10社の内、1社だけが英国企業で、自動車など1社も英国企業は残っておらず、金融・不動産の成長率は7%だが、製造業は-0.4%で、英国の製造業は惨憺たる状態であると言う。

   シンガポールや香港、ルクセンブルグと言った小国なら金融立国と言っても成り立つが、ワンセット全産業が揃って世界の中心をなしていた大英帝国が、金融のみで巨大な経済社会や国民生活を支えられる筈がないし、この状態が進み過ぎるとバランスを崩して失速してしまう。
   IT革命によって、一番恩恵を受けてブームになったのは金融だと言われているが、果たして、ものづくりを軽視して、金融や知識情報主体のサービス産業に経済政策の比重を移すことが、国民にとって良いことなのかどうか、イギリスのことを思うと考えざるを得なくなる。
   もっとも、私自身、英国経済の現状について十分な情報なしに勘だけで話しているので、資料をチェックして、イギリスの好況が本物なのか、そして、イギリス経済社会にとって好ましい状態なのかどうか勉強してみたいと思っている。
   
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