熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ケネス・ロゴフ:ドルの脆弱な覇権

2021年04月05日 | 政治・経済・社会
   プロジェクト・シンジケートに、KENNETH ROGOFFが、
   The Dollar’s Fragile Hegemony Mar 30, 2021を掲載した。
   ラインハートとの共著「国家は破綻する――金融危機の800年」の著者である。
   Gゼロ時代で、アメリカが覇権を失ったと言うことと関連して、ロゴフ教授は、ドルの覇権も人民元の猛追で危ないというのである。
   ロゴフ教授の論点は、以下の通りである。

   今日、米国の政策立案者や多くのエコノミストの間には、世界のドル債務に対する選好は事実上止まることがないという信仰に似た思い入れがある。しかし、中国の為替レート管理の近代化が進めば、ドルの地位を痛撃する可能性がある。と言う。
   強大な米ドルは、世界市場で卓越した地位を占め続けている。しかし、中国の為替制度の将来の変化が、国際通貨秩序の大きな転換を引き起こすことが考えられるので、グリーンバックの優位性はより脆弱となろう。
   多くの理由から、中国当局は、いつか人民元を通貨バスケットにペッギングするのをやめて、為替レートを、特にドルに対して、はるかに自由に変動することを可能にすべく、近代的なインフレターゲティング体制に移行するであろう。そうなれば、アジアの大部分が中国に従う可能性があるので、現在世界のGDPの約3分の2のアンカー通貨であるドルは、そのウエイトのほぼ半分を失う可能性がある。と言うのである。

   米国が、ドルの特別な地位にどれだけ依存しているか、あるいは当時のフランスのディスカールデスタン財務大臣が、巨額の公的および民間の借り入れ資金を調達するためのアメリカの「法外な特権」と呼んだものを考慮すると、そのようなシフトの影響は、非常に大きい。米国がCOVID-19の経済的荒廃と戦うために積極的に膨大な借金を積み重ねてきたことを考えると、債務の持続可能性が、大いに疑問となる。

   より柔軟な中国通貨への長年の議論は、中国の資本規制が何らかの隔壁を儲けたとしても、中国は、その経済を、米連邦準備制度理事会(FRB)に調子を合わせて踊るには大きすぎる。中国のGDP(購買力平価で測定)は2014年に米国を上回っており、そして、依然として米国やヨーロッパよりもはるかに急速に成長しており、為替レートの柔軟性を高めることが益々急務となってきているのである。

   最近の問題は、ドルが中心であるから、米国政府に世界的な取引情報へのアクセスが集中しており、これはヨーロッパでも大きな懸念事項となっている。原則として、ドル取引は世界のどこでもクリアできるが、米国の銀行やクリアリングハウスは、危機の時に、無制限に通貨を発行する能力を持つFRBによって暗黙のうちに(または明示的に)バックアップされているので、大きな当然の利点を持っている。これと対照的に、米国外のドル清算機関は、常に信頼の危機にさらされており、ユーロ圏でさえ苦労している。
  さらに、トランプ元米大統領の対中貿易への強硬政策は、犬猿の仲の民主党と共和党が合意する数少ない案件の一つであって容易に解消されるはずもなく、貿易の反グローバリゼーションの動きが、ドルを損なうことに疑問の余地はない。

   中国の政策立案者は、現在の人民元ペッグから脱却しようとする際に多くの障害に直面してはいるが、独特なスタイルで、ゆっくりと多方面で着実に基礎的な準備を進めている。中国は徐々に外国の機関投資家に人民元債の購入を許可しており、2016年に、IMFは、特別引出権(SDR)の価値を決定する主要通貨バスケットに人民元を追加した。

   また、中国人民銀行は、中央銀行がデジタル通貨を開発する上で、他の主要中央銀行よりもはるかに先行している。現在は純粋に国内使用向けだが、PBOCのデジタル通貨は、特に中国の通貨圏に入った国では、最終的には人民元の国際的な使用を促進する。これは、現在のシステムが米国に多くの情報を与えるのと同様に機能する、中国政府にデジタル人民元ユーザーの取引窓口を与えることになる。

   他のアジア諸国は中国に従うであろうか? 米国は、確かにドル経済圏の拡大維持にこれ勤めるであろうが、それは上り坂との戦いであって、米国が19世紀末に世界最大の貿易国として英国を凌駕したように、中国はずっと前に同じ方法でアメリカを上回っている。
   確かに、日本とインドは自分の道を行くかもしれない。しかし、中国が、人民元をより柔軟にすれば、少なくとも外貨準備において、ドルに匹敵する重みを通貨に与えるであろう。
   今日のアジアでのドルとの結びつきは、1960年代から1970年代初頭にかけてのヨーロッパ情勢と顕著な類似点がある。しかし、その時代は、高いインフレと戦後のブレトンウッズ体制の固定為替制度の崩壊で終わった。その後、ヨーロッパの大部分は、欧州内貿易が米国との貿易よりも重要であると認識し、その数十年後には、単一通貨ユーロに変身したドイツマルク圏の出現につながった。

   これは、中国人民元が一晩で世界通貨になるという意味ではない。ある支配的な通貨から別の通貨への移行には長い時間がかかる。例えば、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の20年間、新規参入者であるドルは、1800年代初頭のナポレオン戦争の後、1世紀以上にわたり支配的な世界通貨であった英国ポンドとほぼ同じ中央銀行の準備金としての地位を得たのである。
   では、ユーロ、人民元、ドルの3つの世界通貨の併存が何が悪いのか? 市場も政策立案者も、そのような移行に対して遠隔で準備しているようには見えないと言う点を除いては、何もない。米国政府の借入金利はほぼ確実に影響を受けるだろうが、本当に大きな影響は、企業の借り手、特に中小企業に響く。

   今日、米国の政策立案者や多くのエコノミストの間では、世界のドル債務に対する選好は崩れないという信仰がある。しかし、中国の為替レートの取り決めがより近代化されれば、ドルの地位に痛撃を与えることになる。
   と結論づけているのである。

   ドルが覇権を失えば、通貨発行益であるシニョリッジ(seigniorage, seignorage)を失うなど、アメリカが、ドルが基軸通貨であったことによって享受してきた多くの特権や利権を失うことになって、それが、中国に移るとなると、上下違ってくるので、大きな落差でドラスティックに勢力が逆転する。  
   私がここで注目したいのは、ロゴフが、2014年に、既に、購買力平価のGDPで中国がアメリカを凌駕しており、中国が経済的にトップに躍り出ていると指摘していることである。
   調べてみたら、得られたエヴィデンスは、次の世銀の2017年の統計で、下記のように記録されていて、中国のGDPがアメリカを超えている。
   Expenditure (billion US$) Based on PPPs  United States USA 19,519.4  China CHN 19,617.4
   最近、イギリスの民間の調査機関が、中国のGDPが2028年にはアメリカを上回って世界1位になると言う予測を発表した。
   大分前の話になるが、前世紀前半に頂点を極めた錆び付いたニューヨークの摩天楼と上海のモダンな金ぴかの超高層ビル群を同時に見て、既に勝負が付いていると感じたことを覚えている。
   後は、一人あたりのGDPの数字だが、元々、中国は、先進国と発展途上国の同居した二重国家であるから、上海や北京など先進ゾーンがアメリカを凌駕すれば、それで十二分であろう。
   現下においても、中国経済は、年率成長率がアメリカの二倍以上で成長を続けており、この傾向が止まりそうにないので、ロゴフが認めているように、名実ともに、アメリカの覇権のみならず、基軸通貨としてのドルの覇権も中国に奪われてしまう、すぐというわけではないが、徐々に、ドルの優位性が蚕食されてゆくと言うことであろう。
   情報化知識産業化社会であり、ICT,デジタル革命によるAIやビッグデータの時代であるから、戦争など出来ないであろうから使いようのない軍拡競争よりも、金融や財政など経済情報が集積する国家や社会に、パワーが集中するのは必然であって、今や、国威の発揚や推移が、下部構造で大きく動きそうだというのは、非常に興味深いことだと思っている。
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わが庭・・・椿:エレガンス・シャンパン咲く

2021年04月04日 | わが庭の歳時記
   エレガンス系3種類の椿のうち、最後のエレガンス・シャンパンが咲いた。
   獅子咲き、牡丹咲きの豪華な花で、ピンクのスプレンダーや赤色のシュプリームと違って、僅かに残る蘂の黄色以外は、やや、クリーム色を帯びてはいるが、真っ白である。
   花は、かなり大きな大輪で、華やかなところが良い。
   
   
   
   
   
   
   
   実生苗が、実を付けて花を咲かせたのだけれど、タグを付けなかったので、何の椿の子供なのか分からないのだが、親木はピンクか赤い系統の椿の筈が、白い花かほんのりとピンクがかった花を咲かせる株が多いので、雑種だとは言え、一寸不思議な感じがしている。
   自然界では、花の7割は、白い花か黄色い花だと言われているのだが、実生苗であるから、先祖返りであろうか。
   花形も、変っていて、自然の摂理とは言え、非常に興味深い。
   
   
   
   
   モミジの芽吹きがフレッシュで爽やかである。
   大きなモミジにまじって、最近庭植えした琴の糸や鴫立沢や獅子頭も、存在感を示し始めた。
   秋まで、葉が持つと良いのだが、京都や奈良のように高温多湿ではなくて、特に適度な湿度に欠けるので、関東では綺麗な紅葉は難しい。
   
   
   
   
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鎌倉:青蓮院鎖大師の桃花

2021年04月03日 | 鎌倉・湘南日記
   弘法さんのお寺であるから鎌倉では歴史の古いお寺である鎖大師には、めぼしい桜の木は植わっていないのだが、街道沿いに桃の木が並木状に植えられていて、今、咲き乱れていて綺麗である。
   初春真っ先に咲くのは梅で、少し遅れて桜、そして、八重桜が咲き始める頃に、桃が満開となって、桃の節句には、桃がまだ咲かないのが寂しい。
   桃の花は、どちらかというと、梅や桜よりは、少し、花弁が華やかなような気がしている。
   
   
   
   
   
   
   

   このお寺の境内に、枝垂れ桜の木が二本植わっていて、今、満開の筈だが、花が小さくてひ弱く、存在感に欠けるのが惜しい。
   近所のソメイヨシノは、殆ど散ってしまった。
   
   
   
   
   
   
   
   境内には、かなり丁寧に花木などが植えられていて、訪問客を楽しませてくれている。
   
   
   
   
   
   
   

   境内の外の街路の八重桜が、満開で、桃と妍を競っていた。
   
   
   
   
   
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BBC:経済危機下のレバノン市民の苦境

2021年04月02日 | 政治・経済・社会
   BBCが、電子版で、”「息子を育てられなくなるのが怖い」 経済危機下のレバノン市民”を報じた。

   「レバノンが過去数十年で最悪の経済危機に陥っている。今や人口の半数以上が貧困状態にある。物価が5倍に膨れ上がった一方で、市民の所得は以前と変わらない。アンジェラさんは大勢の市民と同様に、なんとか生活を維持している。息子のミルクを買うために薬局を数十カ所も探し回ることも多いという。」と言うのである。

   この記事を見て、ダロン アセモグル と ジェイムズ A ロビンソン の「自由の命運」を読んでいて、文明国でありながら、レバノンが、いまだに、実質的に、国家なき社会で、有効に統治する国家体制を持たない国であることを知ったので、これでは、救いようのない事態に陥るのではないかと危惧したのである。

   首都ベイルートは、中東における交通の要所に位置し、商業と金融、観光の中心地として著しく発展し、中東のパリと呼ばれるほど華やかで美しい街として発展したはずが、1975年にレバノンで勃発した凄惨な内戦によって見る影もなくなり凋落の一途を辿ったところまでは知っていたが、国家なき社会であると言う信じられないような極端な話は念頭になかった。
   レバノンは、国家の疲弊に加えて、パレスティナ難民のみならず、近年隣国シリアから多くの難民を受け入れており、さらに、先刻壊滅的な爆発事故に見舞われて、それに、コロナとの対決であるから、塗炭の苦境に遭遇しているのであろうことは間違いない。

   先日来、民主主義と専制主義との鬩ぎ合いにつて議論してきたが、その埒外にある実質的に国家なき社会が文明国家として存在していることが不思議である。

   さて、そのレバノンだが、まず、冒頭で、1943年に独立して以来、一度も国勢調査を実施していないと言う。
   1932年に一度国勢調査を実施して、その時の人口構成で、キリスト教徒が51%で、その他のシーア派、スンニ派、ドゥルーズ派よりやや多く、この数字で、1943年に国民協約が締結されて、多数の集団間で権力が配分された。大統領は常にマロン派キリスト教徒、首相はスンニ派イスラム教徒、国会議長はシーア派イスラム教徒、副議長と副首相はギリシャ正教キリスト教徒、陸軍参謀総長はドゥルーズ派イスラム教徒と決まっていて、議会の議席配分は、キリスト教徒六に対してイスラム教徒五で固定(後に五対五に改変)されて、この協約は、信じられないほど弱い国家を作った。レバノンの権力は国家ではなく、個々の共同体に所属する、これこそ、不在のリヴァイアサンであり、国家なき社会である。と言うのである。
   医療や電力などの公共サービスを提供するのも国家ではなく個々の共同体であり、国家は暴力を抑制しないし、警察を制御することもしない。シーア派のヒズボラは私兵を持ち、ベッカー渓谷のその他の多くの武装勢力も同様である。各共同体は、自前のテレビ局やサッカーチームを持っている。
   このような極端なまでの権力分有の所為で、共同体は互いの行動を逐一監視することが出来るので、他の集団が求めるどんなことに対してでも拒否権を行使して、政府内に酷い膠着状態が生じている。政府は意思決定を下せないので、公共サービスにとっては大問題で、ゴミは市街に山積みで、国会は10年近く予算を議決しておらず、内閣が自ら予算を決めて執行しており、何もしないことが政府の常態である。と言う。

   さて、レバノンは、国家なき社会ではなく、600万の人口を抱える近代国家であり、国連に議席を持ち、各国に大使を派遣している。著者は、レバノン国家が弱いのは、適切な制度設計を知らなかった訳でもなく、そうしなかったからでもなく、国民は議会を信用せず、議会に権限を与えることを望まず、社会運動も好まず、誰が信用できるか分からないので、共同体が、危険な坂道を恐れるがために、国家がわざと弱くなるように作られている。と言うのである。
   国勢調査がないので、誰も宗教毎の共同体の本当の人口を知らないし知りたいとも思っていない。国家が、他の共同体に占有され、掌握される恐れがある以上、社会は、政府や議会が弱体であり国家が判読不能なままでいることを望み、恐れを排除するために、リヴァイアサンを眠ったままにしておく。国家なき社会に共通しているように、あらゆる手段を用いて支配階級の出現を防ぐ。と言うことに徹して、国家を維持しようと言うことである。

   レバノンは、隣国のシリアと同じで、レバシリと称されて、商売に巧妙なユダヤやインパキでさえ舌を巻く世界で最強の商人だと言われており、悪く言うと、非常に巧みな、狡猾な、えげつない商売をする国民だとされていているように、本来は、非常に賢くて有能な民族であるはずである。
   しかし、シリアは、アサドというどうしようもない独裁者が君臨し、逆に、レバノンは無政府状態という、途轍もない悪辣極まりない統治制度で、国民は塗炭の苦しみに喘いでいる。
   このシリアとレバノンの現下の惨状を見ると、何が人間の価値を決めるのか、
   人類の愚かさ儚さを感じて、ハラリが、ホモ・ゼウスになったと言うホモ・サピエンスの未来に、暗雲を感じざるを得ない。
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わが庭・・・椿:エリナ カスケード咲く

2021年04月01日 | わが庭の歳時記
   エレーナ・カスケードが綺麗に咲き始めた。
   カスケード、すなわち、連なった小さな滝のように放物線を描いて垂れ下がったしなやかな枝に、びっしりと、1㎝よりやや大きめの釣り鐘状の白地にぼかし模様のピンクが浮いた可愛い花を、流れるように咲かせる。
   真ん中の黄色い蘂を見て、椿だと分かるのだが、中国の野生椿を改良したのだという。
   咲いているときは綺麗なのだが、花の命は短くて、すぐに落花するのが難である。
   昔、さくらと言う小さな花の椿を植えたことがあるが、これが一番よく似ている。
   
   
   
   
   
   

   隣接する小川との斜面に植えた垂れ八重桜が咲き始めた。
   我が家の菊垂れ桜は、数輪開き始めたが、まだ、蕾は固い。
   こんな山際の小さな小川に、何故か、毎年鴨がやってくる。
   普段は水量が少なくて、大雨になると一気に急流となるので、小魚や沢ガニも居ないはずで、精々、水草程度だと思うのだが、
   
   
   
   
   
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