
信越本線の名を高からしめてきた横川~軽井沢の碓氷峠越え区間は、長野新幹線の開通によって廃線となって久しくなりましたが、遊休化した鉄道用地や軌道を流用して碓氷峠鉄道文化むらが開設され、その目玉としてEF63の保存体験運転や「峠の湯」までのトロッコ列車の運行が行われているのは周知の通りです。そんな碓氷峠トロッコは、急勾配に対応した特殊装備で固めた特注DL(DB201) が2両の特製客車を牽引していましたが、去る黄金週間に致命的な故障が発生したため長らく運行を休止しており、鉄道文化むら公式HPでは「部品を金型から再生産しなければならず、年内の運行再開は難しい」とアナウンスせざるを得ない状況に……。
しかしその後、66.6‰勾配に突入しない「ぶんかむら」~「まるやま」(重要文化財に指定されている丸山変電所跡)間であれば、別途牽引車を調達して再開可能であるという判断に至り、去る8月1日から目出度く営業運転が行われています。ではどのような車両が牽引車として抜擢されたのかと申しますと……公式HPでは「リースの気動車」とありますが、訪れてびっくり、何と保線用車両製造の老舗・松山重車両工業製の軌道モーターカーではありませんか!!

私が昨日そんな珍景に遭遇したのはかな~り偶然のこと (^^;;)。もともと昨日は平日休みを使って、小学3年生となってますます「鉄い」少年になっているのに親が鉄分ゼロなため欲求不満な甥っ子を新幹線に乗せてやると約束しており (叔父さんはツラいですが、まぁ冥利には尽きます。笑)、当初は東海道新幹線に乗って浜松・豊橋近辺でJRC&ローカル私鉄めぐりでも……と思っていたのですが、直前に襲った駿河湾沖地震のため上越新幹線に進路を変更~。そこで「んじゃ~新幹線は200系に乗るとして (^o^)、さらにそこから先どこに行こうか」と思案してピーンと来たのが碓氷峠鉄道文化むら。
ここは個人的に約2年半前、いつもお世話になっております「ぱれっと」様からお誘い頂いてEF55の最終運転に乗ったついでに訪れ、思いもかけず極めて充実した保存車両陣に驚喜しつつも、冬期のドピーカン天気につき展示車両を様々な角度から撮れない・トロッコが運休している・EF63も動いていない等々の遺憾を感じつつ、また改めてトロッコが走っている曇り日に再訪したいものだと思ったところです。そこで公式HPをチェックしたところ、件のトロッコ運休→一部営業再開の告示を眼にするに至り、「うををっ、何と長期運休していたのか……しかし自分が行こうと思ったタイミングで再開するのは超ラッキー☆ しかも『リースの気動車』ってどんなシロモノなのやら……DE10?」という妄想が頭の中をグルグルと (笑)。
しかしまさか……夜間に人知れずレールや砂利を運ぶ保線編成の先頭に立って黙々と働く軌道モーターカーがこのような晴れ舞台 (?) に立っているとは!! 余りの珍景に思わず眼が点になった私、そのあとは乗って撮ってフィーバーしまくったことは言うまでもありません (^^;)。森林鉄道などのトロッコ列車ならばさておき、小型モーターカーが多数の観光客を運ぶという事例は、例えば他に南阿蘇鉄道や門司港トロッコなどがあると記憶しておりますが、どちらも牽引機は専用として新造されたものですので、最初から保線用車両として製造されたモーターカーが旅客用として現在抜擢されている事例は寡聞にして聞かず……。というわけで、一見するとこの上なく地味でプチな光景が恐ろしく濃いぃものであることを思うにつけ、余りにも偶然過ぎる展開に喜びを禁じ得ないのでありました……♪