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ミステリ感想-『時鐘館の殺人』今邑彩

2003年04月12日 | ミステリ感想
~収録作品~
生ける屍の殺人
黒白の反転
隣の殺人
あの子はだあれ
恋人よ
時鐘館の殺人


~感想~
『生ける屍の殺人』
すばらしく魅力的な謎をそつなく、しかし小さくまとめたなぁと思った瞬間に足払い。
あれよあれよという間に手玉に取られ、二転三転して予想だにしない着地。これは傑作。

『黒白の反転』
題名そのままに反転する真相→決着→真相→決着。
黒と白の鮮やかな逆転。裏に秘められた思惑。これまた傑作

『隣の殺人』
鮮やか、とまではいかないが印象深い逆転。あとすこし煮詰められていれば化けただろうに。

『あの子はだあれ』
これもいい。特異な論理から導かれるあまりに皮肉な結末。

『恋人よ』
結末が予想の範疇を超えなかった。もっと極彩色のどぎつい真相を期待してしまったが。

『時鐘館の殺人』
なるほどなるほど。仕掛けそのものは些細だが、見せ方がとにかく巧み。


~総括~
長編では釈然としないキレの悪さを見せる氏が、短編となると実に切れる切れる。
氏の代表作というだけではなく、ミステリ史に輝く傑作ぞろい。


03.4.12
評価:★★★★ 8
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