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ミステリ感想-『女王暗殺』浦賀和宏

2010年02月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
謎の数字を遺して母が死んだ。孤独に生きる俺に残されたのは欠陥品の心臓だけ。だが、突然現れた記憶喪失の女によって世界が変わる。
俺をつけ狙う怪しい奴らの正体は、母を殺した犯人なのか。心臓を奪われ殺された死体は、なにを語るのか。父と母の正体は。


~感想~
ミステリでもなんでもない方向にすっ飛んでいった前作『萩原重化学工業連続殺人事件』と比してだいぶミステリの範疇に戻ってきたが、ミステリと呼ぶよりは浦賀作品というジャンルに類したほうが収まりは良い。
このシリーズを『SAW』シリーズにたとえた千街氏の解説が秀逸で、まさにSAWさながらに初見お断りの、それどころか前作『萩原~』を読んでいること前提の問答無用・説明不足に突っ走る物語がいっそいさぎよい。終盤にかけてシリーズの、特に前作とのリンクが次々と現れ、SAW新作のように入り組んだ人間関係とストーリー展開を追うこと自体が大変。6年ぶりのシリーズ再開でこんなに複雑にされても……。誰か人物相関図を作ってくれ。
とはいえ本書で仕組まれた謎は本書の中だけで解け、それなりにミステリらしい、それ以上に浦賀作品らしい決着を見せるので、すくなくともファンは満足できるはず。主人公(?)も名前だけ登場するよ!
それにしても、ここまで物語が錯綜してきているのだから、流れを振り返り、新規読者を獲得するためにもいいかげん講談社はせめて傑作『時の鳥籠』以降のシリーズだけでも文庫化するべきだと思うのだが。綾辻の館シリーズは2回も改版してるくせに。


10.2.7
評価:★★☆ 5
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