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ミステリ感想-『亜愛一郎の転倒』泡坂妻夫

2001年05月01日 | ミステリ感想
~収録作品~
藁の猫
砂蛾家の焼失
珠洲子の装い
意外な遺骸
ねじれた帽子
争う四巨頭
三郎町路上
病人に刃物


~感想~
『藁の猫』
(ネタバレ→)たまたま『QED東照宮の怨』を読んだ直後だったので……。

『砂蛾家の焼失』
なるほどなるほど。さりげなく張られていた伏線のラッシュに感服。

『珠洲子の装い』
メイントリックよりもむしろ、最後の一言に拍手。脇の固め方が本当にうまい。

『意外な遺骸』
これまた伏線がうまいうまい。展開・描写もいかにも『亜』もので、満足。

『ねじれた帽子』
内容云々よりも、主人公(?)の魅力に脱帽。なぜ使い捨ての登場人物にも、ここまで血を通わせられるのか。

『争う四巨頭』
ケーキ屋がいい。こういうどうでもいい横道が見事。

『三郎町路上』
これはトリックに脱帽。単純にしてインパクト抜群の真相。

『病人に刃物』
逆転の真相、そしてトリックではなく論理に張られた伏線が見事。かゆいところに手が届く。


~総括~
トリックとロジックの双方に張られた職人細工の伏線。あまりにも魅力的な人々がおりなす喜劇非奇劇。
奇手巧手妙手が冴えわたる珠玉の短編集。
……だが一つ欠点を挙げるなら、末尾に付された解説。
それがもしも田中芳樹のものだったら……『逃亡』を読了前に絶対に読まないことをオススメします。興ざめです。


01.5.1
評価:★★★★☆ 9
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