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ミステリ感想-『檜垣澤家の炎上』永嶋恵美

2025年01月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
横浜の華麗なる一族・檜垣澤家。当主の妾だった母を亡くし、高木かな子は家に引き取られる。
当主の妻の大奥様をはじめ女系に支配された一家は、卓越した手腕で明治・大正の荒波を乗り越え繁栄を謳歌するが…。

2024このミス3位、文春4位


~感想~
ミステリとして高評価を受け、桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」のような作品かと想像したが全くの別物。
女三代記が最終的に本格ミステリとして着地する「赤朽葉家の伝説」とは異なり、ミステリ要素もあるもののそれはメインではなく高木かな子の波乱の半生を描いた一代記もとい半生記で、ほぼ純文学だった。
幼少期から虎視眈々とお家の乗っ取りを企む少女と、一代の傑物の女当主の陰謀を描いた半生記としては十二分に面白いのだが、ちょっと女性作家特有のドロドロさが激しすぎるところにまず引いてしまう。
たとえばパーティーにいまいちな女歌手とすごい男歌手を招き、聴いた相手に「お前はこの女のように引き立て役に過ぎない」と知らしめようとするのとか、余りにも女作家の発想すぎる。女作家にしか書けないし女作家しかこんなこと考えない。
また戦争の陰が忍び寄る明治~大正を舞台にし、歴史上の人物も顔を出すのだが山田風太郎のようにそれをストーリーに組み込むことにはほとんど興味がなく、あくまで市井の一族の日々を描いていく。それはいいのだが生粋の純文学嫌いとしては、どうしてもこの結末は受け入れられない。
文庫書き下ろしで800ページ付き合わされた結果が、全く何も解決せずただの始まりではないかと思ってしまうのだ。続編を書くつもりがあるのかもしれないし、ランクインしたら読まざるを得ないが、やはり純文学とは肌が合わないとうんざりした次第である。


25.1.8
評価:★★☆ 5
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